経済成長の類型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 00:25 UTC 版)
経済成長は、多様な制約により抑制される可能性がある。このうち、先進国経済で主要な2要件は、 労働生産性の上昇 需要の創造 である。この2条件のうち、どちらが成長要因(裏返せば、制約要因)となっているかによって、近代的経済成長の様式は、以下の3類型にまとめられる。 比例的成長経済 生産性主導経済 需要飽和経済 比例的成長経済近代的部門と伝統的部門の2部門からなる経済において、近代的部門(資本主義部門)が技術進歩・生産性の上昇もなく、すべての投入と産出が比例的に増大する。成長に必要な労働力は、伝統的部門から無制限に供給される。アーサー・ルイス(Arthur Lewis) は、この状態を「無制限労働供給経済」と呼んだ。二重経済モデル(dual economy model)ともいう。 太平洋戦争前の日本は、基本的には比例的成長経済にあったと考えられている。無制限労働供給が終了するとき、それをルイスの転換点という。日本でいつ無制限労働供給が終了したかについては、1930年代説と1950年代説とがある。2007年現在は、中国がルイスの転換点を越えたかどうかが議論されている。 生産性主導経済生産性が高い速度で上昇し、それにともない一人当たりの賃金(所得)も上昇するが、国民の消費意欲は旺盛で、次々と新しい需要が生まれ、経済は急成長する。日本の高度経済成長がそれに当たる。高度成長は、1973年の第1次石油ショックによって減速するが、1980年代末まで輸出超過にも助けられて、実質4パーセント以上の高い成長を示した。この成長率は、当時の先進国の中ではトップクラスであった。しかし、この成長は、1992年のバブル崩壊とともに終了したと考えられている。 需要飽和経済1992年以降の日本経済の長期停滞の原因については、多くの意見・分析がある。景気循環的な分析が多いが、吉川洋・塩沢由典などは、日本が需要飽和経済に突入したことが問題だとしている。
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