現存する「E電」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 13:12 UTC 版)
こうして死語となってしまった「E電」は、旅客案内でもほぼ用いられなくなり、ほとんどの駅の案内表示からも姿を消した。しかし、JR東日本の社内用語としては現存しており、JR東日本管内の中央線を例に取ると、東京 - 高尾間を「快速線」「急行線」「E電線」と、高尾以西を「列車線」「中央本線」と呼び分けられている。 JRの公式時刻表である『JR時刻表』(交通新聞社発行)の「普通運賃の計算」ページにも「東京の電車特定区間(E電)」の表記が現存する。また現在でもJRのポスターやプレスリリースなどで「E電」の表記が使用されることがあり、一例として2010年代後半においても、2016年4月6日にJR東日本が発表した駅ナンバリング導入についてのプレスリリース中に「※電車特定区間(E電区間)の各駅に導入します。」という文言があった。このため「E電」という用語が現存していたことがインターネット上で話題となった。 このプレスリリースが話題となったことを受けて行われた取材に対し、JR東日本広報は同年「以前公募で決めた愛称で、今も使っています」「ご承知の通り、当社発足の際、公募により愛称として決定させて頂きました。その後、特にあえて使わなくするということもなく、場合に応じて使っております」「『まだ今も(E電という呼称を)使うんだ』という感覚では捉えていないです」と回答しており、JR東日本としては「E電」という用語は「死語ではない」とする認識を示している。 なお『JR時刻表』内でも、東京近郊路線の時刻表に添えられていた「東京地区(E電・標準時分)」の「E電」表記は1997年に抹消され、それ以降は「東京地区(標準時分)」となっている。続いて1998年には、欄外の「乗り換え(掲載ページ)」に記載された「E電各線」も「東京近郊各線」に変更されている。 社内からの評価としては、JR東日本発足当時の副社長で「E電」選考にも関わった山之内秀一郎は「結果は大失敗だった」とし、「日本語を乱すものとして強い批判を浴びたこともあるが、世の中の方々が全く使ってくださらなかった。結果としては『JR』が定着してしまった」「お客様にとっては国電と中電の区別などどうでもよい。ほとんど全部の列車が電車になってしまった現在ではもう『電車』の文字は不要なのだった」と著書の中で述べている。 山之内が言うように、国鉄時代は近距離電車である「国電」と中距離電車(中電)を区別しており(当時は「汽車」と呼ばれる、電気機関車牽引の普通客車列車もまだ残っていた)、JR発足後に「国電」を「E電」に改称したものの、1980年代後半には都心へも郊外へも電車(通勤形電車)で行くようになり、一般乗客にとっては「国電/E電」と「中電」の区別はもはや意味がなくなっていた。そのため「E電」の語も定着せず、単に「JR」ないしは「JR線」と呼ばれることになった。「E電」が死語となった現在では、元の「国電」に対応する一般的な呼称はなくなっているが、そのことによる利用上・案内上の問題は特に生じていない。 そうした事情もあり、中距離電車が走る山梨県内では例外的に「E電」が定着し、東京方面から乗り入れる中央線快速を(中央本線の中距離電車と区別して)「E電」と呼ぶことがある。山梨県庁や大月市立大月短期大学の公式ウェブサイトにも「E電」の表記が現存する。また山梨県内の中央本線の路線図(駅ホームの柱に掛けられている縦長のもの)に「E電」の表記がみられるが、神奈川県境に近い上野原駅などでは近年「E電」表記がない路線図に取り替えられた。 常磐快速線の駅ホーム路線図にあった駅・所要時間案内でも、山梨県内の中央本線と同様に、快速電車について「E電快速」と表記されていたが、中距離普通列車との停車駅統一に伴い、停車駅統一の2004年3月頃から呼称統一の10月頃までに、路線図が取り替えられ「E電」表記はなくなった。 かつては蒲田駅東口の案内表示に「E電・東京急行のりば」の表記が残っており、貴重な現存例として知られていたが、2007年から2008年にかけての駅リニューアルと駅ビル工事に伴い撤去された。しかもこの案内表示には「JR線きっぷうりば」の表記もあり、「E電」と「JR線」表記が混在していた。また「E電」と併記されていた「東京急行」の社名も、2019年の東急の会社再編により消滅している。 現在は、東京駅総武線地下ホーム階段上部の壁面に、その壁の前に吊り下がる案内標の後ろで見えにくい形ではあるが現存しており、「E電」と英語表記「INTRA-CITY&SUBURBAN TRAINS」が併記されている。 なお、E電(国電)の範囲とはやや異なるが、運転指令業務分野において、線区の区分として山手線・京浜東北線・根岸線・埼京線などを管轄する「E電方面指令」という言葉が残っている。
※この「現存する「E電」」の解説は、「E電」の解説の一部です。
「現存する「E電」」を含む「E電」の記事については、「E電」の概要を参照ください。
- 現存する「E電」のページへのリンク