法解釈を巡る論争・RMTの是非について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 13:49 UTC 版)
「リアルマネートレーディング」の記事における「法解釈を巡る論争・RMTの是非について」の解説
公法上の違法性について 日本においては世論的にマイナスのイメージが強いが、RMTそのものを取り締まる法律は存在しない。過去の摘発事例は不正な手段でゲームの通貨やアイテムなどを得たケースに限られている。しかしゲームの規約上は禁止されている事が圧倒的に多く、適切な行為とは認められていない状況にある。 他方、オンラインゲームが盛んな大韓民国では個人のRMTは明確に「合法」との指針を示しており、活発に取引が行われている。企業が組織的にRMTを行う事は違法だが、個人間RMTの仲介はいわゆるグレーゾーンで、これによって利益を得る業者も存在する。2009年にはRMT市場規模が1兆ウォンを突破、大手仲介業者の年間手数料収入は2020年現在300億ウォンを上回る。RMTに否定的な空気が強い日本や欧州の一部地域等と違い、社会的にも受け入れられた状況と言っていい。 アメリカ合衆国ではゲーム内の仮想通貨もユーザーの資産と認め、取引に対する課税が検討されている。[要出典] RMTを完全に禁止している国は2021年時点でほとんど無いが、オランダは例外的に極めて厳しい規制を敷いており、RMTどころかゲーム上でのトレードすら違法となるケースが多い。これはオランダのギャンブル規制法が「無料の(お金ではなく時間を投じる)ギャンブル」も含むなど適用範囲が非常に広い事が理由。例えば、モンスターを倒して手に入れたレアアイテムがRMT市場で金銭的価値を認められていれば、そのアイテムは「ギャンブルの利益」と看做される。このためアイテムトレードに限らずほとんどのトレードが違法となっている。オランダから海外のゲームを遊ぶ場合も同様。 私法上の権利の性質について ユーザーのデータに対する権利を物権(所有権)とする主張と、債権(利用権)とする主張がある。運営会社との契約は、前者の場合売買契約となり、後者の場合役務提供契約となる。いずれの場合も広義の資産にあたり、ユーザーは何らかの権利を有する。社団法人日本オンラインゲーム協会が定めたオンラインゲームに纏わるガイドラインでは「データ自体の所有権につきましてはお客様にはございません。」としており、経済産業省は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則[6]」において「法律用語としての「所有権」とは、物に対する権利であり、有体物(動産、不動産)についてのみ認められる権利である(民法第206条、同法第85条)。したがって、オンラインゲームにおけるアイテムはゲーム上の情報にすぎず、有体物ではないため、アイテムについてユーザーの所有権が認められることはない。 」としている。これらは後者の主張に沿ったものとなる。物権の譲渡、債権の譲渡ともに一般原則としては自由である(債権の譲渡については債務者への通知が必要)が、債権については特約により譲渡を禁止することができる。日本国内においてオンラインゲームの運営会社は、ほとんどの場合規約によりこれを禁止しているため、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、消費者契約法等に照らし、この特約(及びそれに基づくアカウント停止等の措置)が有効であるか否かが主要な論点となる。 RMTが適法とする側の主張 「RMTの行為そのものを取締る法律そのものが存在しない」ために適法である。 データの所有権(アクセス権)はユーザー側の資産であり、資産の売買は適法である。 RMTが違法とする側の主張 信用毀損罪・業務妨害罪に抵触する。RMT業者からゲーム内通貨等を購入することで、ゲーム運営企業の課金アイテム購入が不要となり、ゲーム運営企業のビジネスモデルを破壊する。 著作権侵害に抵触する。ゲームデータはゲーム運営企業の著作物であり、RMTは他者の著作物を利用して利益をかすめ取りゲーム運営企業に損害を与える行為に該当するため。 ネットゲームにおけるデータの所有権は運営会社のものであり、アクセス権も本人に限定して提供されているものであり譲渡を含め売買は禁止行為に該当する。 RMTの是非を巡る論争では仮想通貨やゲーム内アイテムを含めた「ユーザーの権利」がどこまで保証されるかという点が争点になりやすい。前述されている権利関係はもちろんではあるが、ゲーム内アイテムや仮想通貨をユーザーの資産(権利)として認めた場合、ゲーム運営会社の判断でユーザーの資産取引に制限を加えてしまうと私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の不当な取引制限に該当する恐れが発生する。逆にユーザーには一切の権利を認めないとした場合、消費者契約法に基づく消費者の利益を一方的に害する条項に該当する恐れが発生し、どこまで認められてどこから認められないのかは現在の国内法の観点からは非常に難しい問題となる。現実問題として、アカウントを登録する際の利用規約によってRMTを禁止していることを告知し、規約違反者に対して個別で対応を行うといった範囲の対応に留まっているのが実情である。
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