歴史的注釈書
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『源氏物語』については、平安末期以降、数多くの注釈書が作られた。『源氏物語』の注釈書の中でも、特に明治時代以前までのものを古注釈と呼ぶ。一般には、『源氏釈』から『河海抄』までのものを「古注」、『花鳥余情』から『湖月抄』までのものを「旧注」、それ以後江戸時代末までのものを「新注」と呼び分けている。『源氏釈』や『奥入』といった初期の注釈書は、もともとは独立した注釈書ではなく、写本の本文の末尾に書きつけられていた注釈があとになって独立した1冊の書物としてまとめられたものである。『源氏大鏡』や『源氏小鏡』といった中世に数多く作られた梗概書もそれぞれ注釈を含んでいる。 詳細は「源氏物語の古注釈書の一覧」を参照 『源氏釈(げんじしゃく)』(平安時代末期、全1巻、藤原伊行) - もっとも古い源氏物語の注釈書。もともとは藤原伊行が写本に書きつけたもの。 『奥入(おくいり)』(1233年ごろ、全1巻、藤原定家) - もともとは藤原定家が自ら作成した証本の本文の末尾に書きつけたもの。池田亀鑑は写本にこの「奥入」があるかどうかを写本が青表紙本であるかどうかを判断する条件に挙げている。大島本や明融臨模本に書かれている「第一次奥入」と定家自筆本(大橋本)に書かれている「第二次奥入」とがある。 『水原抄(すいげんしょう)』(13世紀中ごろ、源親行) - 河内方による最初の注釈書。現在は大部分散逸したが一部残存。 『紫明抄(しめいしょう)』(13世紀後半、全10巻、素寂) 『異本紫明抄(いほんしめいしょう)』(著者未詳) - 諸注を集成したもの。『河海抄』の説をまったく引用していないため、それ以前の成立であると思われる。 『幻中類林(げんちゅうるいりん)』(光源氏物語本事、華洛非人桑門了悟) 『弘安源氏論議(こうあんげんじろんぎ)』(1280年(弘安3年)、源具顕) - 最古の討論形態の注釈書。飛鳥井雅有等8名が参加。 『雪月抄(せつげつしょう)』 『原中最秘抄(げんちゅうさいひしょう)』(1364年、源親行) - 最古の秘伝書形態の注釈書。『水原抄』中のもっとも秘たる部分を抄録して諸家の説を加えたとされる。 『河海抄(かかいしょう)』(1360年代、全20巻、四辻善成) - 『源氏物語』の著作の由来、物語の時代の準拠、物語の名称、作者の伝や旧跡、物語と歌道の関係などについて幅広く述べている。全体を通して、これ以前の考証に詳しく触れるとともに「今案」として自説も多く述べている。 『仙源抄(せんげんしょう)』(1381年、長慶天皇) - 最古の辞書形態の注釈書。源氏物語の語句約1,000をいろは順に並べた辞書。 『珊瑚秘抄(さんごひしょう)』(1397年、四辻善成) - 源氏物語の注釈書『河海抄』の秘説書。『河海抄』で注を省略した秘説を三十三条集めたもの。 『源氏物語千鳥抄(げんじものがたりちどりしょう)』(南北朝時代、平井相助) 『山頂湖面抄(さんちょうこめんしょう)』(1449年、祐倫) 『源氏物語年立(げんじものがたりとしだて)』(1453年、一条兼良) - 源氏物語の作品世界内における出来事を時間的に順を追って記したもの、つまり年立であるが、独立した年立としては最初のもの。 『花鳥余情(かちょうよせい、かちょうよじょう)』(1472年、全30巻、一条兼良) - 冒頭部分の自序において「『河海抄』の足りない部分、誤っている部分を正しくするため著した」とを述べている。注釈の特徴としては、単に語句のみを採り上げるのではなく長く文を引用して説明していることと、著者自身が左大臣関白を勤めていたため有職故実に関して詳しく正確であることが挙げられる。 『源語秘訣(げんごひけつ)』(1477年、一条兼良) - 『花鳥余情』の秘伝書。 『種玉編次抄(しゅぎょくへんじしょう)』(1499年、宗祇) 『弄花抄(ろうかしょう)』(1504年、三条西実隆) 『細流抄(さいりゅうしょう)』(1510年、三条西実隆) 『明星抄(みょうじょうしょう)』(1530年、三条西実枝) 『万水一露(ばんすいいちろ)』(1545年、能登永閑) 『紹巴抄(しょうはしょう)』(1565年、20巻20冊、里村紹巴) 『山下水(やましたみず)』(1570年、三条西実枝) 『孟津抄(もうしんしょう)』(1575年、九条稙通) 『花屋抄(はなやしょう)』(1594年、花屋玉栄) 『岷江入楚(みんごうにっそ)』(1598年、中院通勝) 『首書源氏物語(しゅしょげんじものがたり)』(1673年、一竿斎) 『湖月抄(こげつしょう)』(1673年、全60巻、北村季吟) 『源氏外伝』(1673年ころ、熊沢蕃山) 『源注拾遺(げんちゅうしゅうい)』(1698年、契沖) 『紫家七論(しかしちろん)』(1703年、安藤為章) 『一簣抄』(いっきしょう)(1716年、近衛基煕) 『源氏物語新釈(げんじものがたりしんしゃく)』(1758年、賀茂真淵) 『源氏物語年紀考(げんじものがたりねんきこう)』(1763年、本居宣長)いわゆる新年立。 『紫文要領(しぶんようりょう)』(1763年、上下2巻、本居宣長) 『源語梯(げんごてい)』(1784年、五井純禎(蘭洲)) - 辞書形態の注釈書。 『源氏物語玉の小櫛(げんじものがたりたまのおぐし)』(1796年、全9巻、本居宣長) - 「もののあはれ」を提唱。 『すみれ草(すみれくさ)』(1812年、全3巻、北村久備) - 系図2巻と年立1巻からなる。 『源氏物語評釈(げんじものがたりひょうしゃく)』(1861年、萩原広道) - 古注釈の最後に位置づけられる。
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