歌風、作品論とは? わかりやすく解説

歌風、作品論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 02:13 UTC 版)

田江岑子」の記事における「歌風、作品論」の解説

第一歌集美しと思う花いくつ覚えしか』の刊行著者50歳の時。近藤芳美は「彼女の作品を私以外のもっと広い歌壇評価委ねてみたいひそかな気持があった」「縹緲とし、一種妖艶な世界を影のようにさまようかに見えながら、うたい告げているものは、それとはちがったものなのであろう」「縹緲としてとらえどこらがない。何をして生きている人なのか、どのような境涯の人なのか」と評したまた、川村平は「著者現実一部切り取って、歌を作るのではない。自然諷詠日常生活感慨を歌に託す姿勢は、嫌悪している。これら伝統的作歌方法とは、最初から最も遠い地点に佇ち、歌を創作することによって、歌の中に己の分身創造しよう試みた」と評し、その歌は一見難解であっても難解な歌ではないと論じた。さらに川村は、第一歌集によって歌われている愛の対象はいったい誰であるのかという問題に関して、その対象は父とも誰とも特定できないとして、「重要なのは、歌そのもの差し出した一点にある。短歌作品に己の恋情剥製化すること、田江岑子希有な情熱異性よりは詩性に注がれた」と論じた。 なお、第一および第二歌集真赤夕陽を砕く』は限定出版であり、和紙袋綴じの背絹張り造本。特に第二歌集毛筆自筆木版二色刷り装幀である。 第三歌集『鑿を研ぐ泉』は1978年1月短歌新聞社より刊行川村平は「定型調べなめらかな品格そなえた歌である」と評し女流短歌集団の中の幻想象徴派属すると位置付けている。 第四歌集『われやみちのく』は雁書館より刊行巻末には増谷龍三による「田江岑子作品論 自然の吟遊詩人」が収められている。川村は「第3歌集までと異なり3年半という短い制作期間作物だけに、田江短歌作者としての特徴凝縮され濃厚な血液一気噴き出したような衝撃がある。昭和561981年頃のもっとも脂の乗り切った時期見てよい」と評した第五歌集紫陽花杏子あやめの雨の日日』の巻末にも同じく増谷龍三による「田江岑子作品論 と死と愛」が収められている。 第十歌集北上山地 夢見さす詩歌』は砂子書房による刊行田江生家に近い北上山地田江にとって原風景であり、北上山地の自然や人々をおもにとりあげている。その作品は「人生経験鋭敏な感性裏打ちされ生死ありようを問うた作品群味わい深い」と評され、さらに、 亡きひとの魂よみがえり池にあそぶを鳴かせてわたし呼べる 『北上山地 夢見さす詩歌』 といった作者の死生観を反映させた作品や、震災詠なども印象深いとされた。後書きでは「今更ながら、詩歌しかないものに改め付け加え言葉浮かんで参りません」と述べるなど、短歌を「私の全霊」と主張する田江人柄示されている。 また、歌人のさいかち真は、田江には「夢見がち浪漫的」な資質があるとして、 呼ぶに似る方ふり向く岩間よりしたたる水の独り言なる 『北上山地 夢見さす詩歌何とした大夕焼けか落ち水のほそき嗚咽とどかぬ彼方 同 といった作品挙げて、これらは作者郷土愛から生まれた作品であり、この歌集には自然物向き合う際の感受性が「年齢感じさせない至純調べ」として定着していると評した。さらに、 氷河期北上山地さかのぼる翼ならずや彼の山吹北上山地 夢見さす詩歌水色の母の空見ついてくる枯れ葉の音にふり返るたび 同 といった作品踏まえて一瞬を「永遠と等しいもの」として感受する心、自然を歌うことが自ずと挽歌に歌うことに通じる心を目ざす作者姿勢指摘している。 1992年には評伝観る小田観蛍』を出版田江の師の一人小田観螢であるが本書は単に作品のみだけで小田評したわけではなく小田実際足跡丹念に訪ねることで師を探ろうとしている。 1996年出版した宮沢賢治の歌』近代文芸社刊は宮沢賢治についての歌論集である。宮沢賢治の詩や童話評価定まっているが、短歌ではまだその評価定まってはいない。宮沢賢治同郷田江宮沢賢治短歌について論じている。 上述のように、田江歌人としてはかなり多数書籍出版している人物であり、岡井隆はこのことに触れ評価のかなり分かれる人物であると述べている。

※この「歌風、作品論」の解説は、「田江岑子」の解説の一部です。
「歌風、作品論」を含む「田江岑子」の記事については、「田江岑子」の概要を参照ください。

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