日本における歴史的呼称
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 03:39 UTC 版)
「マスケット銃」の記事における「日本における歴史的呼称」の解説
詳細は「火縄銃」、「ゲベール銃」、「ミニエー銃」、および「村田銃」を参照 日本の歴史上は1542年の鉄砲伝来以降、戦国時代の日本国内で独自に発展した滑腔銃身、マッチロック方式の種子島銃が徳川幕府時代もほぼそのままの形態で使われ続けており、国友を初めとする鉄砲鍛冶の技術水準自体は非常に高かったものの、(特に大量生産の為の)技術や戦術革新の面ではフリントロック式や雷管式で銃剣を使用できる西洋のマスケット銃(前装銃)とは300年以上の隔絶が存在しており、後装銃の時代に入り1880年(明治13年)に村田経芳が村田銃を開発するまでその格差が埋まる事は無かった。日本では西洋のマスケット銃の多くが1853年の黒船来航以降の幕末期に導入されたが、この時西洋では1851年に画期的なライフル弾頭であるミニエー弾(英語版)を用いるミニエー銃が開発され、それ以前の丸玉(英語版)を用いるマスケット銃が(ライフルド・マスケットを含め)一斉に陳腐化させられてしまった経緯があり、幕末期の日本には西洋で最新であったミニエー銃から旧式化して在庫がだぶついていた滑腔銃身・フリントロック式のマスケット銃まで雑多な前装銃が欧米人の武器商人により一斉に流入させられた為、この時に徳川幕府や倒幕諸藩側の資料上、次のような歴史的呼称が生まれた。 火縄を用いる(種子島銃も含む)全ての前装銃=火縄銃 火打石または銃用雷管を用いる滑腔銃身のマスケット銃=ゲベール銃 (ゲベール銃にライフリングを後施工したものも含む)ライフルド・マスケット=ミニエー銃 蝶番式小銃(後装式)に改造された前装銃=横方開閉のスナイドル銃、タバティエール銃などは莨嚢式(ろくのうしき)、前方開閉のアルビニー銃(英語版)やM1865、M1866、M1873などのトラップドア・スプリングフィールド銃などは活罨式(かつあんしき)として区別される場合もあるが、上記3種のような明確な区分名にまで発展した代名詞はなく、基本的にこれ以降は村田銃など各銃の開発者名等にちなんだ正式名称や略称で呼ばれる。 しかし、西洋におけるマスケット銃は17世紀にフリントロック式が確立して以来、銃身への施条、握把(グリップ)(英語版)への銃床、銃口への銃剣の追加といった要素はあったものの、銃自体の基本構造は撃鉄が銃の側面に露出した有鶏頭(オープンハンマー)・サイドハンマー方式、撃鉄が松葉ばねや逆鈎(英語版)など引金を除く機関部品のほとんどが銃側面の鉄板に取り付けられており、松葉ばね交換などの補修時には側面板を取り外すことで容易に整備が行えるサイドロック方式といったものが、ミニエー銃まではほとんど不変のままであった為、日本における火縄銃やゲベール銃に相当する旧式銃であっても新しい方式、特に最初からミニエー銃や後装式ライフルとして製造された新型銃の不足を補う為に、撃発機構を雷管式に改造したり(スプリングフィールドM1840など殆どのスプリングフィールド造兵廠製フリントロック式マスケット銃)、銃腔にライフリングを削りなおしたり(スプリングフィールドM1835など)、あるいは銃身自体をより小口径や大口径のものに交換する(ロシア帝国に輸出されたスプリングフィールドM1816や、スイスのM1842歩兵マスケット銃(英語版)など)といった更新改造(英語版)で制式小銃(英語版)としての延命措置を施された例が数多く存在した為、上記の日本の歴史上の分類を下敷きにして西洋のマスケット銃を紋切り型に分類していくことは必ずしも適切とは言えない。 更にはこれらのマスケット銃は、オランダで製造されたシャルルヴィル・マスケットのように、雷管式やライフル銃身化といった幾多の近代化改装を施された果てに、最終的に銃尾開閉装置をも取り付けられて植民地駐留軍などで運用が継続された例や、日本でも明治後期に有坂銃が登場した後、村田単発銃が散弾銃に改装されて民間に払い下げられ始めたころに村田銃のライセンス生産のひとつとして火縄銃に村田銃のボルトを取り付ける手法が存在したことや、アルビニー銃の開閉機構を取り付けて後装化が成されたものなどが存在していた為、上述のように「ライフルに比べ、射程や命中精度に劣るマスケットは表舞台から消えた」という表現すら必ずしも正確とは言い切れない面もある。 ミニエー銃の分類についても、1851年のミニエー銃登場以前より存在した丸玉を用いるヤーゲル銃(英語版)やベイカー銃、丸玉以外の特殊弾頭を用いたブランズウィック銃やステム・ライフル、日本ではゲベール銃に分類される滑腔銃身のマスケット銃(スプリングフィールドM1842など)や、ミニエー銃登場以前のライフルド・マスケット(M1841イェーガー・ライフル(英語版)など)装備の銃兵に、特に銃身再加工を施さないままひとまずミニエー弾やプリチェット弾を配布して運用を継続させた例などを考慮した場合、日本側の歴史的呼称に基づく区分は必ずしも適切とは言えなくなる事に留意されたい。 なお、日本語では極めて頻繁に『マスカット銃』と表記されるが正確ではない。さらに、ブドウ品種のマスカットと大砲用のぶどう弾の連想からか、ブドウの様な丸い弾を撃つのでマスカット銃、と誤解した小説なども見受けられる。
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