日本における母乳栄養
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 11:17 UTC 版)
伝統的に日本では家庭で出産し、乳房をマッサージしながら母乳を直接授乳した。断乳は遅めで、稀な例では思春期の初めごろまで母乳を与えることがあった。第二次世界大戦後、(近代西洋医療の)医療機関の普及にともない、病院(産院)での出産が増え、そこでは新生児は新生児室に入れられ粉ミルクを与えられた。アメリカでの粉ミルクのブームもあり、1950年頃からは母乳栄養が衰退し、人工栄養が増加した。WHOと厚生省はこれを憂慮し、厚生省は1974年に母乳栄養推進運動を開始、母乳栄養の利点を広めた。その後、劇的に母乳栄養が復活し社会に定着した。 ユニセフと世界保健機関は「母乳育児がうまくいくための10のステップ」を策定し 、長期に渡って母乳育児に積極的に取り組み認定審査に通過した施設を「赤ちゃんにやさしい病院 (Baby Friendly Hospital, BFH)」として認定している。日本国内における認定審査業務を委託された日本母乳の会のウェブサイトからは、赤ちゃんにやさしい病院として認定されている国内66施設(2019年8月現在)の所在地を確認することができる。日本は赤ちゃんにやさしい病院が作られた最初の先進国である。 厚生労働省による「授乳・離乳の支援ガイド」が2019年3月に改訂され、母乳育児の利点として 1. 乳児に最適な成分組成で少ない代謝負担、2. 感染症の発症及び重症度の低下、3. 小児期の肥満やのちの2型糖尿病の発症リスクの低下、の3点が報告されていることが明記された。一方で、「完全母乳栄養児と混合栄養児との間に肥満発症に差があるとするエビデンスはなく、育児用ミルクを少しでも与えると肥満になるといった表現で誤解を与えないように配慮」すべきことも注記され、事実に基づかない不合理な恐怖心を煽ることを戒める内容であった。これを受けての朝日新聞社の報道は、「粉ミルクを併用する混合栄養でも肥満リスクが上がらないことが明記されることになった」という、事実とはまるで異なるものであった。
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