将棋用語に由来する慣用表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 03:17 UTC 版)
ウィキクォートに将棋に関する引用句集があります。 囲碁用語と共通のものについては、囲碁が由来であるのか将棋が由来であるのかはっきりしない。辞書によっては囲碁が由来であるとされているので注意。 先手(せんて)・後手(ごて) ※囲碁用語と共通 将棋用語としての先手・後手 対局開始から先に指す方が先手。後に指す方が後手である(囲碁では「先番」「後番」もしくは「黒番」「白番」と呼ぶ)。また、対局途中においても、相手が対応せざるを得ない手(王手など)を仕掛けた側を先手、それに対応する側を後手ということがある(囲碁用語としての「先手」「後手」はこちらの意味)。 慣用表現としての先手・後手 「先手を取る」「後手に回る」など、さまざまな表現で用いられる。「先手を取る」は相手よりも素早く対応して先制することを言い、「後手に回る」はそれとは逆に相手と比べて出遅れて受け身に回ることを言う。 手抜き(てぬき) ※囲碁用語と共通 将棋用語としての手抜き 相手の手に応対せずに別の手を指すことを言う。必ずしも悪い意味ではなく、あえて相手の手に付き合わないのが最善手であることはよくあることである。 慣用表現としての手抜き 必要な作業を怠ることを言う。やるべきことをしっかりやらなかったというネガティブな意味合いであり、「手抜き工事」などと批判的に使われる。 待った(まった) ※囲碁用語と共通 将棋用語としての待った 自分が指した手に対して相手が予想外の手で応じてきた場合に、この2つの手を取り消して局面を戻し、もう一度自分の手からやり直すこと。公式な対局ではルール上認められないが、練習対局などの非公式な場面では相手の合意があれば認められることもある。待ったが認められない真剣勝負のことを「待ったなし」と言う。 慣用表現としての待った 相手の予想外の行動に対して、中止や取り消し、あるいは猶予を求めること(なお、将棋用語としての待ったは、相手の手だけでなく自分の手も取り消して自分の手番からやり直すことであるため、若干意味が異なる)。「待ったをかける」などの言い回しで使われる。やり直しの利かない場面であることを「待ったなし」と言う。 結局(けっきょく) ※囲碁用語と共通 将棋用語としての結局 将棋の[要出典]一局が指し終わって勝負の決着がつくことを言った。現在では、この意味では「終局」と言うのが普通であり、「結局」が将棋用語として使われることは少ない。 慣用表現としての結局 紆余曲折があったものの最終的にはどうなったかという結末のことを言う。 飛車角落ち(ひしゃかくおち) 将棋用語としての飛車角落ち 「二枚落ち」の別名。棋力に差がある場合のハンデとして、一方の対局者が飛車と角を取り除いて対局する。 慣用表現としての飛車角落ち チームスポーツで主力選手2人が欠けるなど、中心となる戦力を欠いた状態で勝負すること。 高飛車(たかびしゃ) 将棋用語としての高飛車 序盤の段階で飛車を自陣よりも前方の四段目や五段目に進出させて、中央部で活躍させる戦法、あるいはその飛車のこと。たとえば、横歩取り8五飛戦法が出現して間もないころは「横歩取り高飛車戦法」との別名で呼ばれることもあった。近年「浮き飛車」と呼ばれることが多くなっており、高飛車という用語の使用頻度は減っている。 慣用表現としての高飛車 人が高圧的な様子(将棋の高飛車戦法において、強力な飛車が味方の駒を下にして自由に暴れまわる様子に擬えたものと思われる)。「高飛車な態度」のように使われる。1990年代には、これを略した「タカビー」という若者言葉も生まれた。 成金(なりきん) 将棋用語としての成金 もともと金将よりも価値の低かった駒(歩兵・香車・桂馬・銀将)が敵陣に到達したことで金将と同様の動きの成駒(歩兵であれば「と金」)になったもの。 慣用表現としての成金 もともと貧しかったのに急に金持ちになった者を指す。多くの場合相手をねたんだりさげすんだりする目的で用いられる。類義語として、もともと身分の低かった者が高い地位に登りつめるという意味の成り上がりがある。 手駒(てごま) 将棋用語としての手駒 持ち駒のこと。相手から取って自分のものとし、任意の場所に打てる状態にしている駒。 慣用表現としての手駒 自分の支配下にあって自由に利用できる人材などのリソースのことを指す。単に「駒」とも言う。「手駒にする」「駒が足りない」のような使い方をする。 捨て駒(すてごま) 将棋用語としての捨て駒 相手の駒を移動させる狙いなどの大局的な見地から、意図的に自分の駒を相手に取らせること。また、その取らせる駒のこと。 慣用表現としての捨て駒 人の団体において、その団体の何らかの目的を達成するために、意図的に一部のメンバーを犠牲にすること。また、その犠牲になるメンバー。囲碁の捨て石と同義語。 王手(おうて) 将棋用語としての王手 相手が応じなければ次の一手で相手の玉将を取れる状態であること、あるいはその状態にする指し手を言う。王手をかけられた側は、(投了する場合を除いて)その王手を解消するような手を指さなければならない。相手に王手をかけられた際に、その王手を解消しつつ相手に王手をかけ返すことを「逆王手」と言う。 慣用表現としての王手 あと一歩で求めていた結果が得られる状態であること、あるいはその状態にする行為を言う。たとえば、スポーツの大会であと1勝で優勝が決まるという場面では「優勝に王手」と表現される。また、相手に王手をかけられた際に、こちらも同様に王手をかけること(たとえば、先に4勝したほうが優勝という1対1のスポーツの勝負で、2勝3敗と後がない状態からこちらが1勝して3勝3敗に追いついた場合)を「逆王手」ということもある(ただし、相手にかけられた王手を解消したわけではないため、将棋における「逆王手」とは多少意味が異なる)。 詰み(つみ) 将棋用語としての詰み どのような手を指しても次に玉将を取られてしまう状態。この状態になったら投了しなければならない。 慣用表現としての詰み どのような行動を取っても不利益な結果を避けられない状態。まだ正式には確定していないものの事実上敗北が決まってしまった場面や進退窮まった場面などで、状況を悲観して「詰みだ」「詰んだ」「詰んでいる」などと使う。 将棋倒し(しょうぎだおし) 将棋用語としての将棋倒し 将棋駒を利用した古典的遊びのひとつで、駒を立てて並べてから端の駒を倒すことで、連鎖的にすべての駒を倒すというもの。 慣用表現としての将棋倒し 将棋駒に限らず、複数の何かが連鎖的に倒れることを言う(類義語としてドミノ倒し)。特に、人混みの中で何らかのきっかけによって人々が連鎖的に倒れる事故は、典型的な将棋倒しである。しかし、2001年に発生した明石花火大会歩道橋事故の際には、将棋のイメージ悪化を危惧した日本将棋連盟の依頼により、報道関係各社はこの言葉の使用を自主規制した。
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