太陽変動と気候変動に対する理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 18:44 UTC 版)
「太陽変動」の記事における「太陽変動と気候変動に対する理論」の解説
太陽の出力変化によって説明される気候変動と地球温暖化への寄与については、以前から示唆されている。最も受け入れられている気候に対する太陽変動の影響とは、直接の太陽放射強制力が挙げられる。直接の太陽放射よりも強いと主張される仮説を唱える人々と (地球温暖化に関して?) 太陽活動の増加が第一の原因であるとする人々から気温と太陽との明瞭な相関について、説明を試みるさまざまな仮説が提出されている20世紀中、この手の自然現象に関する仮説が次々に現れては消えたことがひとつの要因となって、気象学者のコミュニティでは、これら仮説に対して懐疑的態度を表明している。 カットレンブルク=リンダウにあるマックス・プランク太陽システム研究所のサミ・ソランキはこのように語った: 太陽は過去60年間以上、最も強い活動時期にあり、現在進行中の地球温暖化に影響を及ぼしていると思われる... (現在) 太陽のより強い放射と、高いレベル で推移するいわゆる”温室ガス"濃度は共に地球の気温の変化に影響を寄与している、しかしこの影響が (過去の様々な変動によるもの) より大きいものだった のかを明言することはできない。 このような発言の一方でソランキは、科学的通念に従い、1980年頃以来の地球大気温度の著しい急上昇は人間の活動に起因することに、同意している。 太陽活動の果たしている役割の大きさがどれだけかとは、今まさに調査すべき課題で、それ以来、私たちがもつ太陽磁場の変動についての最新の知見によって、1980年から始まった明らかな地球の平均気温上昇の徴候は、全て二酸化炭素によって引き起こされた効果に帰されるべきであると結論しました。 ハーバード大学のウィリー・スーンとサリー・バリウナは、過去の太陽黒点数変化に着目して、気温変化の代理変数とした。彼らは、太陽黒点が少ない時期には、地球は寒冷期 (マウンダー極小期、小氷期を参照) を迎え、太陽黒点が多い時期には地球は温暖化している、と報告書に記した。 これらの理論には通常3つのタイプのどれかが当てはまる: 太陽の放射照度の変化は、気候に直接的影響を与えるとするもの。これは、太陽放射照度の変動の振幅も観測された関係もいくつかの増幅プロセスを欠いて小さいため、一般的に可能性は低いと考えられている。 紫外線の量の変動に効果があると着目するもの。紫外線量の変化は、太陽変動を総合した変動よりも大きい。 宇宙線における変化によって齎された効果 (宇宙線量は、太陽風の変動、太陽活動の変動が影響する) 例えば、雲量 (アルベド) の変化 相関関係はしばしば発見されるにもかかわらず、相関関係の背後にあるメカニズムは多くの場合推測するほかない。多くの推測に対する評価は時が経つにつれて、悪評に塗れることとなった。論文 "Solar activity and terrestrial climate: an analysis of some purported correlations" (太陽活動と地球の気候: 相関関係に関する幾つかの主張についての析) (J. Atmos. and Solar-Terr. Phy., 2003年刊 pp.801-812) において、ピーター・ラウトは最も良く知られており著名なスヴェンスマルクとラッセンの示した問題 (後述) を取り上げた。ダモンとラウトのEos (地球観測システム) 報告は「これらのグラフで表示された一見強い相関関係は物理データの恣意的な扱いによる。それにも関わらず、グラフはまだ文献などで広く参照され、ミスリードされた特性については、未だ一般に認知されていない。」と述べている。 1991年、コペンハーゲン、デンマーク気象研究所のナッド・ラッセンと彼の協力者エギル・フリス=クリステンセンは、太陽周期の長さと、北半球の気温変化との関係に強い因果関係を見出した。手始めに彼らは、1861から1989年にかけての太陽黒点と気温についての計測記録を調べたが、後に4世紀前まで遡れる気候の記録によって彼らの探し出したデータを補強した。この関係はこの期間にわたる測定された温度変化のほぼ80パーセントを占めたとされる (グラフ参照)。一方で、ダモンとラウトは、グラフが幾つかのエラーをフィルタして補正されたことを示し「近年の地球温暖化に対するセンセーショナルな同意が、全世界的な注目を引き起こしたために、(その事実は) 全くかき消されてしまった。それにもかかわらず、作者と他の研究者は古い紛らわしいグラフを参照示し続けるのだ。」と述べた。(「グラフ参照」先のリンクこそ、この一例であることに注意。) ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者、サリー・バリウナは、太陽の変化による「近年の地球温暖化の突出を含む、数値評価可能な過去300年における地球の気候変動」の主唱者の一人である。 2006年5月6日、ニュー・サイエンティスト (New Scientist) 誌は、ラッセンと天体物理学者ピーター・シェル (Peter Thejill) が、1991年に発表されたラッセンの研究を更新し、気候と太陽変動との関連説では、未だ1900年以来の温度上昇の約半分を (太陽変動の要素が) 占める事を 説明できるが、1980年以後の0.4℃の上昇を説明できないでいるという記事を掲載した。「このカー は1980年以降、逸れていく」とシェルは述べ、続けて「ここに驚くべき程の偏差が存在する。何か他の力が気候に作用している…まさに温室効果の影響の証拠に他ならない。」と述べた。 この発表後、同年に、ピーター・ストット (Peter Stott) と英国はハドレーセンターの他の研究者は、論文を発表した。彼らは20世紀の気候に関する、これまでに最も包括的と考えられるシミュレーション・モデルについて報告を行った。彼らの研究は、人為的要因強制 (温室効果ガスや硫酸塩エアロゾル) と同じような、自然強制代行者 (太陽活動の変化と火山活動の排出物) を見つけることであった。彼らは「太陽の影響は、この世紀 (20世紀) 前半期までの放射照度記録を用いて再構成した結果に基づいて、目だった寄与があったと思われるが、後半の期間に入ってからは、我々は、人為的要因として温室効果ガスの増加が、広汎に観測された温暖化の主原因となることを見出し、バランスをとり得る幾つかの寒冷化要因に、人為的な要因としての硫酸塩エアロゾルの増加 (日傘効果を参照) によるものは見られても、太陽の影響が顕著であった証拠は見出さなかった。」と述べた。ストットのチームは、これらの要因すべてを結合することで、それらが密接に20世紀中の全体的な温度変化をシミュレートすることを可能にした。そして彼らは、継続的に続く温室効果ガスの排出が、「最近十年間の観測されたものと同じ変化率で」未来の温度上昇を引き起こすことを予測した。それらの太陽の放射強制力が宇宙線などを介した間接的な効果ではなく、いまだ、受け入れられたメカニズムが全く存在していない - これらの考えがまだ具体的に肉付けされていない「太陽放射照度におけるスペクトルの変化が決定すること」を - 含んでいたことに注意が必要である。加えて、この研究は「歴史的に強制に対する知識の不明確さ」を指摘する。--言い換えれば、過去の自然由来の強制力は、おそらくは海洋のもつ影響により、温暖化効果に対する遅れの効果を持っている可能性があることを示唆している。
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