周辺機器とソフトウェア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/08 15:02 UTC 版)
「シンクレア ZX81」の記事における「周辺機器とソフトウェア」の解説
ZX81の成功により、すぐさま愛好家たちが様々な周辺機器やソフトウェアを生み出し始めた。クライブ・シンクレアはその様子を「楽しみ、喜んだ」が、その需要を満たす努力はほとんどせず、実入りのよい市場をサードパーティの供給業者に事実上明け渡し、多くの潜在的収益を逃した。例えばW・H・スミスはZX81の特殊性を利用して収益を上げている。ZX81に接続するカセットレコーダーとしては音楽用の高音質なシステムよりもモノラルの音質の悪いものの方が信頼性が高かった。そこでW・H・スミスは極東から安価なカセットレコーダーを大量に仕入れ、W・H・スミスのロゴを貼ってデータレコーダとして販売した。18か月で10万台以上を売り上げたという。 専用のプリンターはスパークプリンターと呼ばれる。 シンクレアがリリースした公式な周辺機器は2つしかない。16kBのRAMパック(ZX80向けにも同じ物をリリースしているが、ロゴを変更している)とZXプリンター (en) である。どちらもZX81の後面にあるエッジコネクタに接続する。どちらも当初49.95ドルで発売されたが、問題を抱えていた。RAMパックは重心が上にあり、しかも下部のエッジコネクタでのみ支えられていた。そのためぐらつきやすく、コネクタから外れてメモリ内容を失ってしまうということがよくあった。そこでユーザーは、チューインガムや両面テープや壁紙用接着剤などで問題に対処した。ZXプリンターは小さな放電破壊プリンターで、プリンター付電卓などで使われた方式のものである。単色印字で専用紙が必要。感熱式プリンターとは異なり、アルミニウムで覆われた紙の上でスパークを発生させて印字する。印字時のオゾン臭が特徴。印字直後は問題ないが、時間が経つと印字が読み取りにくくなる。 ZX81の欠点に対処する周辺機器やシンクレアが取り組まなかった多くの機能を提供する周辺機器が登場した。タイプライタ風のしっかりしたキーボード、最大64kBまでのぐらつきのないRAMパック、より高度なプリンター、サウンドジェネレータなどである。さらにはハードディスク用インタフェースも登場し、クライブ・シンクレアは「本来の美をまったく損ないすぎる」と評した。様々なソフトウェアもリリースされた。ZX81の発売からわずか1年で約200の企業が創業し、シンクレア互換のハードウェアの製造販売を開始した。そのような企業を立ち上げたのはコンピュータの専門家ではなく、フィナンシャル・タイムズによれば「学校教師、公務員、電気技師などが空き時間を利用して小規模に製造していた」という。 ZX81の爆発的人気を示す例として、1982年1月、公務員のマイク・ジョンストンが組織してウェストミンスター・セントラルホールで開催された "ZX Microfair" がある。最大収容人数650人のホール内で70人が出展者としてブースを設置し、来客数としては数百人を予定していた。しかし実際には12,000人を越える人々が集まり、群衆を整理するために警察が呼ばれる事態となった。多くはこのイベントのために地方から出てきた人々で、数千人がホール前で行列を作り、最高3時間待たされた。出展者はこのイベントで数千ポンド分のソフトウェアやハードウェアを売りさばいた。 数千のZX81用プログラムが発売された。印刷されたソースリストの形だったり(ユーザーが自分で打ち込む)、カセットテープからロードする形のアプリケーション製品だったり、様々である。ZX81用プログラムのリストを掲載したコンピュータ雑誌が多数存在した。例えば Sinclair Programs はそのようなリストだけを集めた雑誌である。誰でも自宅でゲームやアプリケーションを作り、広告を出し、テープにダビングして売ることができた。中にはソフトウェアハウスを創業し、プログラマ(一部は学生)のチームを雇い、ZX81などのコンピュータ向けにプログラムを開発した者もいる。既存の企業の中にも便乗した会社がある。PSIONはシンクレアと密接に連携し、フライトシミュレータなどZX81用プログラムをいくつも開発した。ICL(英語版)は3か月でZX81用プログラムを格納したカセットテープを10万本売り上げた。PSIONはZX81で成功し、そのことが同社の将来に大きな影響を及ぼすことになった。ZX81用データベース Vu-File を開発したことがきっかけで携帯情報端末の開発に注力するようになり、1984年には Psion Organiser を発売した。一部のZX81用ゲーム(PSIONのフライトシミュレータなど)は、後にカラー表示とサウンド機能が強化された ZX Spectrum にも改良されて移植された。 表示機能な貧弱なZX81でも冒険的なプログラマたちはゲームを開発した。有名なゲームとして 3D Monster Maze がある。一人称視点のゲームで、迷宮の中をティラノサウルスに追われて逃げるゲームである。BASICと機械語を組み合わせて書かれており、ホームコンピュータ用の世界初の3Dゲームと言われることもある。 シンクレア製コンピュータの人気にあやかった奇妙なソフトウェア製品が音楽会社から発売されている。1983年、EMIは Chris Sievey のシングルのB面にZX81用プログラムを収めた。アイランド・レコードは、バズコックスのピート・シェリーのアルバム XL1 に ZX Spectrum 用プログラムを同梱した。
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