反公害運動(公害記録人)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/08 21:04 UTC 版)
「沢井余志郎」の記事における「反公害運動(公害記録人)」の解説
1954年(昭和29年)からは東亜紡績株式会社の解雇を無効とする解雇無効訴訟をしながら四日市の地区労事務所の事務局員として勤務。解雇後の生計を立てた。1963年(昭和38年)に四日市市南部の工業地域で発生した四日市ぜんそくなどの反公害運動に参加した。沢井は1966年(昭和41年)7月10日、四日市ぜんそくの苦しさから自殺した四日市公害患者の追悼集会で、患者の1人だった元磯津地区の漁協組合長から一喝された。「組合長は支援しよう」という沢井に、「公害患者の苦しみを知っているのか」と問いかけた発言が、公害問題にのめり込むきっかけになった。 カメラと録音機を携帯して三重県立塩浜病院に通った。息をしながらゼイゼイ苦しむ公害患者を見て、沢井のカメラを持つ手が震えた。「四日市公害の歴史を記録するため、何度も患者から話を聞き、何枚も写真を撮った。昔は記録を保存する意識はなかったが、結果的に公害の歴史を伝えることになった」と発言した。 1968年(昭和43年)に「四日市公害を記録する会」を設立した。1971年(昭和46年)に「四日市公害と戦う市民兵の会」に加入して、四日市ぜんそくの公害患者の支援活動をした。2007年(平成19年)に『四日市公害市民運動記録集』全4巻を編集して四日市公害を記録する会の本を刊行する。昭和20年代には四日市市民など全国の住民が仕事や生活を記録する「生活綴(つづ)り方運動」が活発だったので四日市ぜんそくによる公害問題を記録しようと考えた。公害記録人として沢井は一番被害が多かった塩浜地区の漁師町である磯津地区を取材するようになった。公害に苦しむ漁師たちはうさんくさそうだなと思い「日本社会党や日本共産党の革新陣営の選挙目当ての住民であろう」と言った。「おまえは四日市公害を何も知らんじゃろう。塩浜病院で見てみろ」と怒鳴られたので空気清浄機があった病室付きの塩浜病院に行った。病室中に呼吸の苦しさから発作を起こす人がいた。公害前は健康で、いい人が多かった漁師がなぜ病気でひどいめにあうのか、許せないと強く思った。 その後、1980年(昭和55年)3月に、「生活を記録する会」の娘たちが20年ぶりに四日市に里帰りをした際、結婚して主婦となった彼女たちが言った「四日市は急激に変化をした。河川も伊勢湾も公害による環境汚染で濁っているし、伊勢湾での海水浴もできなくなった。四日市市は精神的生活や自然環境など心が貧しくなった」とのことばに沢井はショックを受けた。 その結果、沢井は一生懸命努力して反公害を記録をまとめ、1984年(昭和59年)沢井が編集した『くさい魚とぜんそくの証文 公害四日市の記録文集』が、はる書房から出版された。鶴見和子と田尻宗昭の2人が序文を寄稿したこの書物は、四日市公害に苦しむ磯津漁民の記録であり、四日市ぜんそくなど四日市公害患者や平田佐矩・田中覚・九鬼喜久男・前川辰男などの政治家や、石原産業・三菱化学・中部電力・昭和石油などの四日市コンビナートの企業関係者の生々しい声を編集した記録集である。沢井は四日市公害訴訟を津地方裁判所に提訴した際に、原告全員が揃って記念撮影をした。沢井が撮影した場面が最初で最後の1回きりとして、全員が揃った写真であった。 四日市公害の事を一番知っていると新聞記者から言われて、沢井は四日市公害が始まってから、1日も休まず自分からペンを取りガリ版をきり、四日市ぜんそくを記録し続けた。労働や苦楽を共にした戦友の田尻宗昭は「自分でもうけるとはこう云う事でないか、その見本が沢井さんである」「沢井さんは、四日市公害が生んだ歴史的遺産である」と最大級の絶賛をした。 沢井は平成に入っても、日本全国の大学生や四日市市民や三重県民に反公害を教育をする、四日市公害の語り部として活躍をして、2011年(平成23年)には東海テレビ制作のドキュメンタリー『青空どろぼう』の主演となった。沢井はその中で「もしあの公害裁判を前川辰男議員たちが原告を動かしてやってくれなかったら、あるいは敗訴していたら四日市の人たちはひどいめにあっていたと思う。」「四日市公害裁判は日本の公害対策を根本的に改革する事件であり、それを四日市コンビナートの企業の人が知らないのは問題である。今は四日市コンビナートと公害患者は敵対関係ではなくて、四日市を良くするために共存していきたい」と述べた。 2015年(平成27年)12月16日、心不全のため死去。
※この「反公害運動(公害記録人)」の解説は、「沢井余志郎」の解説の一部です。
「反公害運動(公害記録人)」を含む「沢井余志郎」の記事については、「沢井余志郎」の概要を参照ください。
「反公害運動」の例文・使い方・用例・文例
- エコタージュという反公害運動
- 反公害運動のページへのリンク