反個体主義とは? わかりやすく解説

反個体主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/24 04:30 UTC 版)

タイラー・バージ」の記事における「反個体主義」の解説

バージは、哲学において先陣切って反個体主義(anti-individualism)を解説し擁護してきたといえるバージ言葉では、反個体主義は次のことを主張する理論である。つまり、「人や動物心的なものを個体化することは、たいてい、人が物理的環境に対してもつ関係に、あるいは場合によっては社会的環境に対してもつ関係に必然的に依存している」 (Burge 1988, p. 650)。こういった見解やそれに類するもののいくつかは、「内容外在主義」やたんに「外在主義」と呼ばれてきた。バージがこの術語より「反個体主義」を好むのは、部分的には、彼の考えでは、中心となる問題が、何によって内容個体化されるであって、「外在主義ということ示唆されるようにどこに内容位置するということではないからである (Burge 2003a, pp. 435-436)。 「個体主義心的なもの」におけるバージ議論では (Burge 1979b)、言語話者思考内容は、単語コミュニティのなかで因習的にもたされている意味に依存している。バージ採用する論法押し進めるのは、ある仮説事例に関する直観的省察よる。その仮説事例は、ヒラリー・パトナムによる双子地球思考実験から着想得たのだったバージにしたがって、ある患者医者診てもらいにいき、医者に腿が関節炎で痛いと正直に伝えた考えてみよう。バージ直観によれば患者は腿が関節炎で痛いと信じている(定義により関節炎が腿に生じことはないため、この信念は偽である)。次に、同じ患者別の世界にいるのを考えてみよう。先ほどとの唯一の違いは、「関節炎」という単語因習的意味にある。ここでは、「関節炎」は、関節炎とほかのリウマチ疾患指し示すことになっていて、そこにはこの患者の腿の疾患含まれている。バージ直観では、この筋書き患者は、腿が関節炎で痛いとは信じない私たち患者信念報告しようとするなら、私たちは、「関節炎」のこの用法反映する単語あらたにつくり、彼は腿が(いわば)腿節炎で痛いと信じているという必要があるバージ直観では、患者がこれら2つ事例でもっている信念異なるものである。しかし、2つ事例のあいだの唯一のちがいは「関節炎」という単語の意味であるのだから、バージ結論するところでは、患者思考内容は、言語コミュニティによって定められる因習的意味に依存していることになる。 バージは、同じ方法で、人の信念物理的世界依存していることも論じている。パトナムが「意味の意味」のなかで呈示した議論では (Putnam 1975) 、「のような自然種語の意味は、物理的世界性質依存している。パトナムしたがい仮説的世界――双子地球――を想像しよう。それは地球酷似しているが、唯一の例外は、H2Oのような外見作用をもつ液体H2Oでなく、化学的に異な物質であり、XYZ略記されるものであるという点である。パトナム主張では、双子地球の「」という単語は、H2O指示せず、かわりにXYZ指示するバージは、単語指示異なる点でバージ賛同するが、双子地球人思考地球人思考異なっているのだとも主張している (Burge 1982)。つまり、地球人H2Oに関する思考をもち、双子地球人XYZに関する思考をもつのである。この思考みられる相違点は、おのおのの物理的環境存する物質の性質のあいだのちがいに原因帰せしめうる。「関節炎思考実験同様に物理的世界依存しているということが、この思考実験事例に関して省察することにより純粋に導かれうる結論である。 バージは、反個体主義のテーゼ視覚理論領域拡張している。デイヴィド・マーたちによって開拓されてきた視覚計算理論では、表象内容仮定するが、バージ議論によれば表象内容は、有機体進化史を形づくってきた環境依存している(Burge 1986aを見よ)。 思考に関する反個体主義は、異論の多いテーゼである。さまざまな理由によって異議差し挟まれてきた。たとえば、人が自分自身思考内容について権威をもって知りうることをそのテーゼでは弱めることになってしまうと主張されてきた(たとえば、McKinsey 1991見よ)。また、心的状態が行動を引き起こす方法私たち理解していることに問題生じさせるとも考えられてきた(たとえば、Fodor 1991見よ)。バージ議論によれば、反個体主義は私たち自身心的状態を知りうることと矛盾しない (Burge 1988)。同じく彼の議論によれば、それは私たち因果作用理解していることに何ら問題もたらさないBurge 1989見よ)。

※この「反個体主義」の解説は、「タイラー・バージ」の解説の一部です。
「反個体主義」を含む「タイラー・バージ」の記事については、「タイラー・バージ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「反個体主義」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「反個体主義」の関連用語

反個体主義のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



反個体主義のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのタイラー・バージ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS