両軍の攻撃隊発進
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 06:32 UTC 版)
10月26日の日の出は、日本時間午前3時45分である。天候は晴れ、風速は北西10ノット以下、海面は穏やかで、たびたびスコールがあった。午前4時50分、日本軍翔鶴四番索敵機はアメリカ軍機動部隊を発見し「敵空母サラトガ型1、戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦16、針路北西」(南雲機動部隊から125度210浬)を報告した。瑞鶴索敵機も敵艦隊を発見していたが、同機の報告は母艦に届かなったという。日本軍はアメリカ軍機動部隊戦力を空母3隻と判断した。 午前5時30分頃、翔鶴飛行隊長村田重治少佐が指揮する第一次攻撃隊が発進する。内訳は旗艦翔鶴から24機(村田機を含む九七式艦上攻撃機20機、零式艦上戦闘機4機)が発進、瑞鶴から瑞鶴飛行隊長高橋定大尉が率いる29機(九九式艦上爆撃機21機、零式艦上戦闘機8機)、瑞鳳から(零戦9機)、三艦合計62機(零戦21、艦爆21、艦攻20)が発進した。また触接のため瑞鶴と瑞鳳から艦攻各1機が発進した。 続いて第2次攻撃隊として各艦合計44機(九七艦攻16機、九九艦爆19機、零戦9機)が発進準備を行う。だが、翔鶴のレーダーがアメリカ軍機の機影をとらえたため第二次攻撃隊全機が揃うまで発進を調整せず、まず翔鶴から(関衛少佐・翔鶴飛行隊長:艦爆19、新郷少佐・翔鶴飛行隊長:零戦5)が発進し、30分遅れた午前6時45分、瑞鶴から(今宿大尉・瑞鶴飛行隊長:艦攻16、零戦4)が発進した。他に触接のため艦攻2機(翔鶴1、瑞鶴1)が発進した。母艦上空直掩に零戦を配備したため、南雲部隊は攻撃隊に十分な数の護衛機をつけられなかった。 またアメリカ軍機動部隊発見の報告は日本軍前進部隊(第二艦隊)麾下の空母隼鷹(二航戦)にも伝えられ、前進部隊はガダルカナル島攻撃を中止した。アメリカ軍機動部隊の攻撃に向け、航空隊の発進準備がはじまった。前進部隊指揮官の近藤信竹中将は第二航空戦隊を南雲機動部隊の指揮下に預けると自身はアメリカ軍方向に南下し、同時に機動部隊前衛(第十一戦隊:戦艦比叡、霧島等)を指揮下に入れ夜戦を挑む考えを各部隊に通達した。 ほぼ同時刻、アメリカ軍も日本艦隊を発見した。エンタープライズはSBD 16機を偵察に投入しており、SBD 2機のペアは第61任務部隊の北東方面を捜索した。ウェルチ大尉機とマクグロウ中尉機は、「フロート1つ」の日本軍水上偵察機とすれ違い、20分後に金剛型戦艦を発見した。キンケイド提督は「戦艦2隻、重巡洋艦1隻、駆逐艦7隻、南緯8度10分、東経163度55分、針路北、速度20ノット」という報告を受け取る。まもなく、第10偵察隊隊長J・R・"バッキー"・リー少佐と僚機から「空母2隻、護衛艦、南緯7度5分、東経163度38分」(距離320km)の連絡が入った。リー機とジョンソン中尉機は襲ってきた零戦3機を返り討ちにしたと主張し、2機とも生還した。日本軍機動部隊の位置をつかんだキンケイド少将は、指揮下の第16任務部隊と第17任務部隊に対し、直ちに攻撃隊発進を命令する。空母ホーネットから第1次攻撃隊29機(F4Fワイルドキャット8機、SBDドーントレス15機、TBFアベンジャー6機)、空母エンタープライズから第2次攻撃隊19機(F4F 8機、SBD 3機、TBF 8機)、さらに「ホーネット」から第3次攻撃隊25機(F4F 7機、SBD 9機、TBF 9機)、合計73機が推定距離200浬の日本艦隊にむけて発進した。 南雲機動部隊から空母翔鶴の第二次攻撃隊の発艦準備が終了しかけたとき、瑞鶴より「発艦作業30分遅れる」と報告が来た。さらに、索敵中のアメリカ軍SBDドーントレス2機(バーニー・ストロング大尉機、チャールズ・アーヴィン少尉機)が彼らに全く気付いていない空母瑞鳳に奇襲をかける。上空警戒中の零戦9機もSBD 2機を阻止できなかった。SBD 2機が投下した爆弾は瑞鳳の飛行甲板後部を直撃した。ストロング機とアーヴィン機は日本軍の対空砲火と零戦の迎撃をふりきり、逆に計2機の零戦の撃墜を主張して生還している。日本軍にとって幸運なことに被弾箇所が最後部であったこと、被害艦が第二次攻撃隊を艦内に抱えていた瑞鶴でなかったため、誘爆によるミッドウェー海戦の悪夢再現は避けられた。しかし飛行甲板の破孔により、瑞鳳は発着艦不能となった。瑞鳳は駆逐艦2隻(舞風、初風)に護衛され戦線を離脱する。このため南雲長官は瑞鶴隊を置いて、翔鶴隊を発進させた(第二次攻撃隊戦力は上記参照)。攻撃隊が発進すると翔鶴では被弾に備えて可燃物を全て捨てたが、この時、演芸会用の女着物とかつらが投げ込まれるのが目撃された。 日本軍機動部隊の第一次攻撃隊は、進撃途中に日本艦隊を目指すアメリカ軍のホーネット隊とすれ違った。お互いに相手を視認しながら、両軍とも素知らぬふりをしてやり過ごそうとする。次にエンタープライズ隊とすれ違って間もなく、日本軍攻撃隊最後尾に位置していた瑞鳳零戦隊9機(指揮官/日高盛康大尉)が反転し、エンタープライズ隊19機(艦戦8、艦爆3、艦攻8)を追撃した。エンタープライズ攻撃隊は零戦の奇襲で損害を受けた。F4F 3機が撃墜され、1機は被弾し機銃と無線を破壊されて母艦エンタープライズへの帰投を余儀なくされた。また雷撃隊も指揮官機を含む2機を撃墜され、1機が不時着し、別の1機が被弾により攻撃を諦め母艦へ帰還した。エンタープライズ隊はF4F 4機、SBD 3機、TBF 4機となったが、進撃を続けた。一方瑞鳳隊(零戦9)は空戦により零戦2機が撃墜されて残存7機となった上、母艦の方角がわからなくなってしまう。第一小隊2機(日高大尉)、第2小隊(内海秀一中尉)2機、第3小隊(河原政秋飛曹長)3機の各小隊ごとに分散して帰投するも、内海小隊2機が帰途行方不明、誘導機も帰投しなかった。瑞鳳零戦隊9機は4機喪失(2機撃墜、2機行方不明)1機大破という損害を出した。
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