三空港経営統合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 10:04 UTC 版)
「関西三空港の経緯と現状」の記事における「三空港経営統合」の解説
関西三空港の役割分担を適切なものとすることを目的として、2005年に関西経済界を中心に、関西三空港懇談会が設けられた。その後、経営を一体化するため、国会でも立法化に乗り出し、2011年の第177回国会にて、「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律案」が提出され、可決し、同年5月25日に公布に至った。こうして、大阪国際空港と関西国際空港は2012年7月1日に経営統合された。なお、関西三空港懇談会は2010年以降開催されておらず、2017年には兵庫県知事の井戸敏三関西広域連合長から、懇談会座長の松本正義関西経済連合会会長に対し懇談会の再開の要望がなされた。 大阪国際空港と関西国際空港の経営統合の前には、国土交通省は両空港の運営基本方針を示していた。そこでは、両空港の活用策が提示された。その一方で、大阪国際空港について、中央リニア新幹線の開業などの情勢変化に応じて、将来的には廃止も含めて、大阪国際空港あり方の検討がなされると明記された。この基本方針の「廃止」の文言には、経営統合の理念に反するとして、11市協を含めた地元が反発した。11市協は、国に対して、運営基本方針から「廃止」の文言を削除する要望書を提出するなどの対応を取った。なお、この要望書提出に、大阪国際空港廃港論を唱える橋下徹大阪市長は反発し、対抗措置として、大阪市を11市協から脱退させた。このような動きをうけて、10市協は、この運用基本方針の修正を引き続きを求める一方で、「廃止」の文言について当面は静観する方針をとっている。 参考までに、大阪国際空港廃止を含めた空港のあり方を検討する要素のひとつである「中央リニア新幹線の開通」については、次のような見解がある。中央リニア新幹線の運用者である東海旅客鉄道は、中央リニア新幹線の影響を大きく評価しており、将来の東京-大阪間の交通利用は完全に中央リニア新幹線へ移行するとの見解を発表している。また、産経新聞は、過去に東北新幹線開業によって東京国際空港と仙台空港・青森空港を結ぶ路線が廃止になった事実から、中央リニア新幹線開業にともなって大阪国際空港の主要路線である東京国際空港との便が廃止になるだろうとの見方を示している。このような中央リニア新幹線の大阪-東京間の航空路線への影響を見据えて、中央リニア新幹線開業後の関西三空港合計の国内線旅客数の試算は、大阪国際空港と関西国際空港の経営統合前の時点でのものではあるが、各団体によって行われている。関西三空港すべての積極活用を支持する兵庫県は、2012年で2,100万人である国内線旅客数が、2025年には2,300万人に増加すると予測している。一方、関西経済連合会の試算では、同時期に1,500万人に下がると予測しており、兵庫県の試算とは800万人の差がある。旅客数が減少するとした関西経済連合会の試算は、大阪国際空港廃止を主張する橋下徹大阪市長が、その主張の論拠としている。このような意見も踏まえて、航空や財政学などの専門家は、次のような意見を述べている。航空アナリストの杉浦一機は、大阪国際空港についての「リニア新幹線開業後も競争力は維持か リニアは本当にライバルなのか」と題した寄稿で、次のように述べている。2045年に中央リニア新幹線が東京-大阪間を結ぶと、その所要時間は67分となり、競合航空路線である東京(羽田)発大阪(伊丹)行の所要時間の65分に迫る。しかしながら、中央リニア新幹線の始発・終着駅は、地域最大のターミナル駅である東京駅や大阪駅ではなく、そこから少し離れた品川駅と新大阪駅である。さらに、その駅でも中央リニア新幹線のプラットホームは地下40 mを超える深さになることが見込まれている。ターミナル駅から中央リニア新幹線駅までの移動時間に加えて、リニア新幹線駅の入口からその地下深くのプラットホームまでの駅構内移動時間を考慮すると、中央リニア新幹線の時間的優位性には疑問が残ると指摘している。また、杉浦は、中央リニア新幹線の建造費・車両費などに対して、公表されている中央リニア新幹線の予定運賃が安すぎることを指摘している。加えて、今後の中央リニア新幹線の事業費はさらに増加することが見込まれ、実際の中央リニア新幹線の運賃は、現在の公表値よりもさらに上がるのではないかとみている。また、中央リニア新幹線の輸送力にも問題が残ると指摘している。中央リニア新幹線の技術的な制限から、その車両は小型になり、運転間隔も大きく取る必要がある。そのため、中央リニア新幹線の輸送量は現行の40%減になるとみられている。これらに対して航空では、ボーイング787などの低コスト機の登場や航空機燃料税・着陸料引き下げなどによる、コスト削減で低運賃化が予想されている。このような背景から、将来、中央リニア新幹線が登場しても、大阪国際空港を発着する航空路線や現行の新幹線の競争力・重要性は変わらないであろう、と杉浦は述べている。また、財政学者の上村敏之も、著書のなかの「伊丹廃港論は現実的か」と題した一節で、確かに将来中央リニア新幹線が大阪まで開通することでJRの影響力が大きくなるが、それでも、利便性・運賃などの面において、大阪国際空港の存在は交通利用者にとって有益である、と述べている。 神戸空港も含めた一体経営についての言及もなされている。2012年8月31日、関西国際空港と大阪国際空港の経営統合後の新しい運営者である新関西国際空港株式会社の安藤社長は、将来的に神戸空港についても、同社の経営とする3空港一体経営に言及した。同社長の一体経営に関連する公式発言は、これが初めてであった。
※この「三空港経営統合」の解説は、「関西三空港の経緯と現状」の解説の一部です。
「三空港経営統合」を含む「関西三空港の経緯と現状」の記事については、「関西三空港の経緯と現状」の概要を参照ください。
- 三空港経営統合のページへのリンク