一般国民との相違面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 08:20 UTC 版)
皇族も、日本国憲法第10条に規定された日本国籍を有する「日本国民」である。皇室典範その他の法律により若干の制限はあるものの一般の国民との差異は本来大きいものではない。皇族の参政権は、皇族が戸籍を有しないため(詳細後述)公職選挙法付則により当分の間停止されているだけである。しかし、実態として皇族の権利や自由は大きく制約されている。これは「『皇族という特別な地位にあり、天皇と同じように制限されるべきだ』という考え方が市民の間で根強かったため」であるとされる。このため、一般国民とは異なる取り扱いがなされている面が多くある。 具体的には、事実上、皇族に対しては日本国憲法第3章が一部適用されないということである。 家制度があり家父長制が存在する。 養子をすることができない(皇室典範9条)。 皇族男子の結婚は、皇室会議の承認が必要である(皇室典範10条)。離婚と皇族女子の結婚は承認不要。 皇太子・皇太孫の成年は満18歳とされている(皇室典範22条)。それ以外の皇族は民法を準用し満20歳である。直系か傍系かという地位により区別される。成人または婚姻した際に、「皇族身位令」(1947年廃止)を準用して叙勲される(身位#日本国憲法下を参照)。 皇后・太皇太后・皇太后は天皇同様「陛下(へいか)」、それ以外の皇族は「殿下(でんか)」の敬称を付する(皇室典範23条)。上皇・上皇后に対しては「陛下」を用いる(天皇の退位等に関する皇室典範特例法第3・4条)。また氏を持たない。マスメディアでは宮号を使って「**宮さま」「**宮妃**さま」「**宮家の**さま」と表現される。これにより、動静は最高敬語を以て報じられる(1947年〈昭和22年〉8月の旧宮内省と報道各社の取り決めに基づく)。 皇后・太皇太后・皇太后(又は上皇后)の死は天皇同様「崩御(ほうぎょ)」、それ以外の皇族の死は「薨去(こうきょ)」と称される。ただし多くのマスメディアにおいては、「ご逝去」「ご死去」などの表現も使われる。 成年皇族は皇室会議の議員・予備議員(各2人・任期4年)の互選人となり、当選すれば議員・予備議員に就任することができる(皇室典範28,30,32条)。 通常の戸籍には登録されず、身分に関する事項は皇統譜(こうとうふ)に登録される(皇室典範26条)。 公職選挙の参政権(選挙権・被選挙権)が停止されている。 住民基本台帳には記録されない(住民基本台帳法39条・同法施行令33条)。 通常の旅券(パスポート)を用いず、皇后を除き、「皇族」という官職名で外交旅券の発給を受ける。 国民健康保険に加入する義務・権利がない。民間団体に勤めないと医療費は全額自費負担となる。 皇后・太皇太后・皇太后(又は上皇后)を葬る所は天皇同様「陵」、その他の皇族を葬る場は「墓」と称される(皇室典範27条)。 内廷費や、皇族としての品位保持の資に充てるために皇族費が国庫から支出される一方で、財産の賜与(贈与)及び譲受に関して日本国憲法と皇室経済法による強い規制がある。生計が政府の丸抱えになるので“極端な形の世襲の国家公務員”だと評する意見がある。 内廷には侍従職・東宮職がある外、各宮家には、宮務官や侍女長といった側近(家事使用人)が付けられている。なお、侍従職・東宮職・宮務官・侍女長は特別職国家公務員である。 全ての皇族は、どこに赴く際にも必ず護衛が付く。皇室関連施設内では皇宮警察本部に属する皇宮護衛官が、皇室関連施設以外の東京都内ならば警視庁の所轄署の警察官が、東京都(警視庁)以外の46道府県ではその道府県警察本部の警備部が指揮し所轄の警察官が警護する。護衛は皇族の外出先を全て把握し、24時間体制で警護にあたる。東京都から他の46道府県に赴く際は、護衛官がその道府県警察本部の警護担当者に連絡を入れる。 事実上、信教の自由がない。法的根拠はないが、宮中祭祀という宗教行事があるために実質上、皇室構成員全員は神道の信徒である。
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