マラッカ王国の繁栄とヨーロッパ人の進出
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「マラッカ海峡」の記事における「マラッカ王国の繁栄とヨーロッパ人の進出」の解説
15世紀における海峡最大の貿易港はムラカ(マラッカ)であり、中継貿易で繁栄した港市国家マラッカ王国の主要港としてにぎわった。ムラカの港務長官は4人おり、第一長官はインド西海岸のグジャラート州、第二長官は南インド、ベンガル州およびビルマ(ミャンマー)、第三長官は東南アジアの島嶼部、第四長官は中国(明)、琉球王国、チャンパーをそれぞれ担当地域とした。ムラカは、商人や船員、通訳、港湾労働者、人や物流を管理する吏員、船乗りや商人の相手をする遊女などでにぎわった。 16世紀初頭、ポルトガル人トメ・ピレス(英語版)の『東方諸国記(ポルトガル語版)』によれば、ムラカの港市には、カイロ・メッカ・アデンのムスリム、アビシニア人(エチオピア人)、キルワやマリンディなどアフリカ大陸東岸の人びと、ペルシャ湾沿岸のホルムズの人、ペルシャ人、ルーム人(ギリシャ人)などを列挙したうえで、「62の国からの商人が集まり、84もの言葉が話されている」と記している。こうした繁栄を知ったポルトガル人は1511年、16隻の軍艦でこの町を攻撃、占領してポルトガル海上帝国の主要拠点のひとつとした。1498年にヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を「発見」してから15年足らずのことであった。 その後、マラッカ海峡の両岸は、ポルトガルとスマトラ島北端部のアチェ王国、マレー半島南部とリアウ諸島に基盤を置くジョホール王国の三者が合従連衡を繰り返してマラッカ海峡の交易の利を独占しようとし(「三角戦争」)、17世紀前半にはアチェ王国が優位に立ってアチェ全盛時代を築いたが、最終的には、新規参入者であったオランダとマラッカ王国の末裔であったジョホール王国とが連合し、1641年にポルトガル勢力を駆逐し、ムラカはオランダの占領するところとなった。しかし、ムラカ(マラッカ)は貿易港としては衰退し、17世紀後半には海上民を統制し。オランダ・アチェとも良好な関係を構築したジョホール王国がジャンビ王国と抗争しながらも全盛期をむかえ、東西交易の中継として繁栄した。 海峡地帯にはマレー人はじめスマトラ内陸部ミナンカバウ人やスラウェシ島南部のブギス人など東南アジア各地の諸民族、中国人、インド人、アラビア人、ペルシア人、ヨーロッパ人、日本人など数多くの人種・民族が住んだ。ムラカはその後、19世紀初頭のナポレオン戦争の際にはイギリスによって占領された。ムラカはいったんオランダに返還されたが、1824年、イギリスはオランダとのあいだに英蘭協約を結んで、マレー半島側をイギリスの勢力圏、スマトラ島側をオランダの勢力圏とした。 1869年のスエズ運河の開通後は、それまでスマトラ島・ジャワ島間のスンダ海峡を利用していた船舶も、その多くがマラッカ海峡を利用するようになり、いっそう重要性を増した。また、特にマレー半島側の鉱業・農業における大規模開発を促し、ペナン、シンガポールの両港の発展がもたらされた。 その一方で、オランダ東インド政庁は1871年のスマトラ条約によってイギリスの干渉を排除し、1873年、海峡の安全確保を名目にアチェ王国の保護領化を企図して王国への侵攻を開始した。これがアチェ戦争であるが、アチェの人々の頑強な抵抗により、オランダ軍がスマトラ全土を制圧したのは1912年を待たなければならなかった。これにより現在のインドネシア全域がオランダの植民地となった。いっぽう、現在のマレーシアに相当する英領マレー連合州が成立したのは1896年のことである。 第二次世界大戦時にイギリス軍が日本軍に放逐され、終戦に至るまで日本軍の占領下におかれた。終戦後にイギリスやオランダの国力が低下したことを受け、インドネシアはオランダ領、マレー連合州はマラヤ連合(のちマレーシア連邦、現在のマレーシア)としてイギリス領からそれぞれ独立した。海峡沿岸国の領海は3海里から12海里に拡大され、かつて公海として自由な航行に供されてきた海峡も現在は領海化されている。 マラッカ海峡は、1994年に発効した国連海洋法条約における「国際海峡」に該当するとされており、外国の艦船や航空機は、国際法上の取り決めと沿岸国の法令にしたがうことを条件として、海峡通過のための通航権が認められ、沿岸諸国は現在、航路帯および分離通航帯を設定し、通航船舶にその遵守を求めている。
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