マッキール一族
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予言者 マッキール家に古くから伝わる伝説の救世主で、唯一プリンスに勝るとされた存在。予言者の魔力はブラッドストーンとして引き継がれ、魔力を継ぐ者が触れると淡い緑色に輝くと言われている。 予言者の伝説に付随して、“予言者の許婚”の存在も語り継がれていた。条件としては、20歳以下の魔力に通じた女性に限定されるため、許婚を絶やさぬよう、人間界のマッキール家と妖精界のフィル・チリース族の間ではチェンジリングが慣習的に行われていた。その役割は、主に予言者の補佐と認識されていたが、本当の役割は明確になっていない。 マッキール家では、善・悪それぞれの妖精に通じるフェアリードクターは双子でなければならず、前者は後者が間違いを犯さぬように見張り、道を踏み外した時にはそれを止める役割を担っていた。百年前に予言者になった人物は、マッキール家の善き妖精に通じるフェアリードクターであったが、片割れが氏族を裏切り“災いの王子”を生み出したため、自らが予言者となって対抗する力を蓄えた。この人物は、能力こそは片割れに劣っていたが、ある一点において勝っていたと言われている。この予言者は、新たに予言者となる者に魔力を託すため、予言の言葉とともにブラッドストーンを聖地の棺に封印した。 悪しき妖精のフェアリードクター 百年前に予言者となった人物の双子の片割れ。アンシーリーコートの魔力の秘密を守る立場にありながら、その魔力を使って“災いの王子”を生み出した、あらゆる悲劇の元凶とも言える人物。 魔力の秘密は最大の禁忌とされ、アイルランドのコノート王家、イブラゼルの青騎士伯爵家、ハイランドのマッキール家と、三つの家系の一人から一人のみに代々伝えられ、扱うことを禁じられてきた。しかし、前二つの家については伝える後継者が絶え、最後のマッキール家で魔力の秘密を受け継いだこの人物の裏切りにより、禁忌が破られた。その後、男は妖精国へ赴いて、予言者と偽って大樹に近づき、グラディスが隠したドラゴンの卵を盗んだ。追ってきた予言者とマッキール家によって間もなく捕らえられたが、処刑される間際に自分の魂を卵に移して、体を失ったのちも邪悪な蛇に姿を変えて生き続けた。魂だけの存在となった男は、ニールを唆して操り、ドラゴンを復活させようと画策するが、エドガーらに阻まれて失敗し、手足であったニールを失う。一時退却してテランのいるプリンス組織に合流し、リディアの体内にある予言者のブラッドストーンを狙っている。 ダネル・フィン (Darnell Finn) ウィーンで評判のヴァイオリン奏者。あちこちに跳ねた朱色の髪が印象的。目立って美形ではないが、不思議と人目をひく物静かな青年。外見上は全く見分けがつかない程そっくりなニールという名の双子の兄がいる。 予言者の子孫だが、祖父の代にハイランドから新大陸に移住しているため、マッキール氏族とは無関係に育った。裕福な暮らしではなかったが、幼い頃から音楽の才能に恵まれていたダネルは、兄にマネージャーの役割を任せ、二人三脚で演奏活動をしながら生計を立てていた。ある時、ヨーロッパの演奏会に向かう船旅の途中で、兄弟の乗った船は突如嵐に遭遇した。激しい雷雨の中、あるはずのない島影を見た次の瞬間、船は難破し、兄弟は海に放り出されていた。そこへ流れてきた不思議な卵に、「片方を海に沈めた方を助けてやろう」と持ちかけられる。判断に迷ったダネルは、迷わず助かろうとしたニールに突き飛ばされたが、溺れた時に掴んでいた細い枝が漂流していたボートに引っ掛かり、九死に一生を得た。実は、卵の正体は“災いの王子”を生み出したフェアリードクターの邪悪な魂であり、一方でダネルが掴んだ枝は、妖精国の神聖な大樹の枝であった。一人で演奏活動を続けていたダネルは、マッキール家の氏族長に招待されてヘブリディーズ諸島に赴き、そこで起きている現状を知った。嵐の中で見た妖精国の島影の話をしたことから、パトリックに予言者の再来と言われ、彼自身に自覚はなかったが、先祖の土地を救いたいという思いから、パトリックに協力をするようになった。 妖精国のドラゴン復活を狙うニールを止めに入り、彼に銃で撃たれてしまうが、同時にニール自身にも同じ銃創が刻まれた。これはマッキール家の双子のフェアリードクターに受け継がれたシステムで、悪しき妖精の力に通じた方が間違いを犯した場合は、善き妖精の片割れが歯止めとなる役割を担っていたためだった(なお、逆は成立しない)。自ら湖に沈んだがケルピーに助けられ、死線を越えたダネルは予言者として覚醒し、己の成すべきことを知ったとリディアに告げた。 ニール (Neil) ダネルにそっくりな双子の兄。弟と一緒にヴァイオリンを始めたが、才能に恵まれたダネルとは差が開いていったため、見切りをつけて彼のマネージャー業務を引き受けていた。二人三脚で活動しながらも、弟の影として生きることに嫌気が差し、密かに弟を疎ましく思っていた。そのため、船が難破して嵐の海に兄弟そろって投げ出され、卵の姿をした邪悪なフェアリードクターの魂から、一人だけ助けてやろうと持ちかけられた時、迷うことなく自分が助かる方を選び、弟を突き飛ばした。ダネルは溺れて死んだものと思っていたが、そのことに後悔するどころか、初めて弟に勝てたと喜んでいた。 蛇に姿を変えた邪悪な魂に言葉巧みに操られ、弟に成りすましてエドガーやリディアに近づいては、彼らを混乱に陥れていた。リディアが飲み込んだブラッドストーンを狙い、止めに入ったダネルに向けて発砲したが、同時に彼と同じ傷を負い、湖に落ちて死亡した。これは、ダネルが傷ついた場合は、片割れであるニールも同じ傷を負うという、マッキール家の双子に受け継がれた仕組みだったが、ニールはこのことは知らされていなかった。遺体は毒気が強いために埋葬する前に浄化しなければならず、妖精国の木に無残に吊るされている。 パトリック (Patrick) マッキール家のフェアリードクター。黒い短髪で年齢は20代後半。リディアが妖精に慕われているのに対し、パトリックは恐れられており小妖精も近づかない。強い力を持つ水棲馬のケルピーさえも近づけず、時には攻撃できる程の力を持つ。実は全滅したといわれているアウローラの一族の唯一の生き残りで、リディアの母・アウローラの弟。年が離れた姉とは仲がよく、アウローラが聖地に乗り込む際に手引きし、氏族に伝わるものより古い伝承を伝えられている。 ファーガスがリディアとともにトローに攫われた時、二人を救出するため一時的にエドガーと協力するものの、トローとの戦いでアンシーリーコートの魔力を扱うエドガーを目の当たりにし、警戒の念を抱くようになる。不穏分子であるエドガーを葬り、同時にリディアの手によって予言者を目覚めさせるべく画策するが、聖地でエドガーこそがプリンスだと知り愕然とする。パトリックは、「正しいかどうかよりもリディアを守ることを優先する」というエドガーを、何より危険視している。 エドガーは、リディアを狙うマッキール家の表立った代表格として、パトリックを徹底的に敵対視しており、レイヴンには「リディアに近づいた場合は殺していい」と指示している程である。そのため正面から接触することはできないが、プリンスであるエドガーを葬り、リディアを予言者の許婚にするべく水面下で暗躍していた。しかし妖精国に近づいた際、オーロラから聞こえた声に咎められたことで、新たな道を模索し始めた。 ファーガス・マッキール (Fergus) リディアの母アウローラと同じマッキール家の族長子息。赤髪に、スコットランドの民族衣装であるキルトを身につけている。将来は父親の跡を継いで族長になる立場にある。リディアが予言者の許婚としての立場を終えた後に、彼女を娶る役割にあり、彼女の二番目の許婚。 元々は、ハイランドを救う役割としてリディアに近づいたが、ハイランドでエドガーと離れ離れになったリディアと深く関わるうちに、本気で彼女を好きになる。性格は快活で裏表がなく、マッキールの利益を優先するパトリックに反発し、リディアを優先して考えるようになる。彼女に本気で告白するが、エドガーとリディアの絆の深さを知り、互いのために別れを決めた二人を引き合わせる。
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