ハリウッドの頂点へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 04:37 UTC 版)
「シャーリー・テンプル」の記事における「ハリウッドの頂点へ」の解説
20世紀フォックスと契約以後、シャーリーが会社にもたらした興行収益は1930年代当時の金額で3000万ドル以上と言われる。1930年代、アメリカ映画界最高のスターであり、1935年から1938年まで4年連続で興行収益1位という歴史的な記録を打ち立てる。これは子役としては不動の記録であり1940年代に史上最高の5回を獲得したビング・クロスビーに破れるものの、女優でこの記録を抜き去る者は2009年にいたるまで現れていない。また他のスターは俳優業に一生を捧げ、その総決算として興行収益トップの座を手に入れるのであって、彼女のケースは10歳未満でやすやすと4回も取ると別の分野に転進して顕著な功績をあげ、非常に際立っていると言えよう。なお20世紀フォックスを含む日本の一部の情報源にはシャーリー・テンプルの映画1作品あたりの出演料が100万ドルだと述べてあるがそれは完全な誤り。女優の映画1作品あたりの出演料が100万ドルになったのは1960年代、エリザベス・テイラーの『クレオパトラ』(20世紀フォックス)やオードリー・ヘプバーンの『マイ・フェア・レディ』からである。出演料トップのシャーリー・テンプルさえ、1930年代は10万ドルである。 この時期の代表的な映画作品には上述に続きファンの多いものが連続していて、一作ごとの成功の詳しい事情はシャーリーの自伝上巻pp.147-424を参照のこと。このうち『テンプルの福の神』と『農園の寵児』は公的機関であるアメリカ映画協会 (AFI) が「ミュージカル傑作180選」(ミュージカル映画ベスト)に選んだ。また『輝く瞳』は正確に言えば準ミュージカルであり、イギリスのチャンネル4テレビが選ぶ「傑作ミュージカル100選」 (2003) の97位を占める。 この時期、ゲイリー・クーパーとスペンサー・トレイシー、キャロル・ロンバードとジャネット・ゲイナー、フランク・モーガンとライオネル・バリモア、アリス・フェイ、ランドルフ・スコット等、錚々たるトップスターと共演している。また世界最高のタップ・ダンサーといわれたビル・ボージャングル・ロビンソンとの共演は特筆すべきで、この二人はアメリカ史上初の黒人と白人のダンス・ペアである。彼女は共演した相手の中でロビンソンが最も好きだったと語った。 有名なユーモア作家アービン・コッブが「(子供たちへの)サンタクロースの最大の贈り物」と呼んだように、シャーリーは世界中の少女から熱狂的に支持された。アイデアル社(Ideal Toy Company)が発売したシャーリー・テンプル人形は爆発的な売れ行きを示し、シャーリー・テンプルにちなむ少女向け子供服やアクセサリーも飛ぶように売れ、アメリカ・ヨーロッパ・日本だけでなく文字通り世界中の少女たちがこういう商品を欲しがった。その陰でシャーリーは何度か誘拐事件がらみの脅迫を受けたり、気のおかしい女性から射殺されそうになったりしたが、いずれも間一髪で難を逃れた。 1937年にニューヨーク・タイムズはシャーリーを「アメリカ国民の天使」に選出。同じ年に『テンプルの軍使』が撮影され、ガッツを見せて長くジョン・フォード監督に高く評価された。後にフォードは彼女の長女の名付け親にもなる。『テンプルの軍使』については大物小説家のグレアム・グリーンが9歳のシャーリー・テンプルに中年男性の観客は欲情を感じるという趣旨の批評を書き、イギリス世論の怒りと20世紀フォックスの告訴を招いた(この件に関しては後述の「グレアム・グリーン事件」を参照)。 1939年の『オズの魔法使』のドロシー役もシャーリーが演じる予定だった。非公式にメトロ・ゴールドウィン・メイヤーがカメラテストをして衣装をつけて主題歌を歌わせてみたところ出来が素晴らしく、ルイス・メイヤー社長は彼女以外にこの役を演じられる者はないと惚れ込んだ。しかし20世紀フォックスとの話し合いがつかず、結局ジュディ・ガーランドに役が回った。だがシャーリー個人の語る降板理由は、オズの魔法使いのアシスタントプロデューサーのアーサー・フリードがまだ12才だった彼女が一人でフリードの部屋に面接に入った時に、彼は下半身を出して陰部を見せ付けたというセクシャルハラスメントがあったことが原因だと自伝で明かしている。フリードは女優相手にキャスティング・カウチ(セックスをした相手に役や契約を回すこと)を頻繁に行うことで有名な人物であった。 フリードにような倫理観に乏しい人物の魔の手を逃れたシャーリーは、もはやただの少女子役にとどまらず、「無垢なアメリカ(アメリカン・イノセンス)」の象徴となった。
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