オバマ政権の対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 07:38 UTC 版)
「ティーパーティー運動」の記事における「オバマ政権の対応」の解説
当初、オバマ政権と民主党は、ティーパーティー運動をたまにジョークのネタにした程度で、表だった批判は控えた。また「そんな運動があることはまったく知らない」と無視することもあった。これは連邦予算の削減や、減税といった運動が求める政策を次々と行っており、中低所得者に重点を絞った各種ケアなど政策への理解が浸透すれば、少なくとも無党派層からの支持は最終的には得られるだろうとの、楽観視があったからだ。それに共和党が医療保険改革などを槍玉にして強烈な反対運動を起こすであろうことは織り込み済みで、驚きはなかった. 2009年4月29日、オバマ大統領は歳出の無駄削減を約束し、「働くアメリカの家族を助ける」のは本当は誰か(どの党か)を見定めて欲しいと語った。また2010年4月10日の大統領週間演説と15日の講演では、Tax Dayのティーパーティーの抗議を考慮して、繰り返し減税を行ったことをアピールした。しかし15日の講演は内輪向けのもので全般的にジョークが多い軽いものだったため、「彼らはありがとうというべきだ」などと茶化す場面も見られた。民主党資金提供者の聴衆は喜んだが、嘲られた側には反発と憤りもあって、攻撃材料にもなった。 側近の4人組の一人として知られた当時の大統領上級顧問アクセルロッドも、2009年のTax Day抗議の後、経済状態が悪いときはいつでも不満はでるものだが、政権が(公約通りに)「アメリカ人の95%が対象となる減税」を行ったのに(課税反対運動が起こるとは)当惑させられると述べたが、これは後から考えれば運動に対する認識を欠いた発言だった。4人組への批判は民主党内でも次第に強まった。ジョン・ポデスタは、大統領自身は幅広い意見を聞く耳を持っているが、「4人組が自分たちとは違う反対意見を大統領の耳に入れようとせず、世論を敵に回している」のではないかと言っていて、対応のまずさがあったのではないかと危惧された。 主要閣僚の一人であるガイトナー財務長官は、NBCニュースのインタビューにおいて、我々は赤字を削減して財政均衡に注意しているとして、「オバマ政権はティーパーティー運動と同じ側にいる」と強調した。彼は「赤字が重要でないと言っていた政権(前ブッシュ政権のこと)の8年を過ごしましたが、今、大規模減税案を議会に通し、新しい政策を大きな負担なしに進められています」と述べて、共和党がどのような政策をしていたか人々に思い出させようとした。ところが、FOXニュースではこのガイトナーの話を全く違うトーンで伝えており、彼の話はウソであるとして、ほぼ80%のアメリカ市民はワシントンの既成政治を信じていないと言い、ブッシュ前大統領は最後の1年間で4,586億ドルの赤字をこしらえたが、オバマ大統領は2009年度会計で1兆4,000億ドルの赤字をこしらえたと指摘して反論し、赤字は今後も1兆ドルを上回り続けるだろうと予想して非難した。では実際にはどうだったかというと、2010年度は1兆1,710億ドルとやや下がったが、2011年度は1兆6,450億ドル(予想)と過去最高を更新する見込みで、財政赤字の拡大は続いている。これはティーパーティーや共和党が声高にオバマ政権を攻撃する際のポイントになっている。 2010年4月のラスムセン世論調査によれば、参加者のうちの89%がオバマ大統領の政権運営に不満で、国が正しい方向に進んでいると回答したのはわずか4%だけだった。(このオバマ政権に方向修正を求める傾向は中間選挙の出口調査でも変わらなかった) 94%は政府は特定の利益団体にのみ恩恵を与えていると考えていて、この考え(つまり政権が民主党であろうが共和党であろうが自分の利益団体のみを優遇するということ)は参加者以外でもアメリカ全体の67%に支持された。 アメリカの分裂があまりに深刻なため、リベラル派の意見ははなっから聞かないという保守派も少なくない。双方のメディア攻勢はこれを助長している面が大きいことは前述の通りで、過激なまでに熱を帯びている。オバマ大統領の医療保険改革を説明するマサチューセッツ州のタウンミーティングでは、オバマ大統領をヒトラーに模した写真を持ったティーパーティー活動家が「ナチの政策をなぜ支持するのか?」と質問し、民主党の名物下院議員バーニー・フランクが「逆にあなたはどこの惑星で暮らしているのか?と聞きたい。まったくナンセンスだ。・・・あなたとの会話は机に向かって一人で話しているのと同じだ」とやり返す場面も見られたが、リベラルと保守の対立はこうまで深刻なのである。 2010年10月、中間選挙が近づいても失業率は9%台と景気対策の効果が目に見えず、当初は高かったオバマ大統領の支持率も低下して、保守派の攻勢に危機感が高まった。前述のクルーグマンは、「今、オバマ支持者はまったく確信を失っているようだ。おそらくオバマ政権の退屈な現実が、変化を夢見ていた人々の期待を満たしていないからだろう。そうしている間にも、怒れる右派は激しい情熱に満たされつるある」と分析した。 選挙運動も終盤戦にきて、いよいよ民主党への逆風と芳しくない選挙予想が明らかになると、当初は軽視ないしは無視してきたティーパーティーはもはや侮れない存在であるとして、一部ではネガティブ・キャンペーンも交えて、批判的な対応となった。しかし11月2日の選挙では民主党は下院で大敗北、上院でも議席を大きく減らすという結果になった。(中間選挙の詳細については次章)
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