【MiG-31】(みぐさんじゅういち)
1970年代、旧ソビエトのミコヤン・グレービチ設計局がMiG-25をベースとして設計した迎撃戦闘機。
運用国は現在の所、ロシア(280機)とカザフスタン(34機)のみ。
NATOコードは"Foxhound(フォックスハウンド)"
「超音速で展開可能な空飛ぶSAMサイト」ことMiG-25を改良したものなので開発はスムーズに進行し、1979年には量産化が開始された。
NATO諸国が保有する攻撃機・爆撃機・巡航ミサイル等への対抗を主目的とし、航空機としては初のパッシブフェイズドアレイレーダーである RP-37 N007「ザスロン(障壁)」(NATOコード「フラッシュダンス」)を装備し、データリンクを使用してミニAWACSとしても運用できる。
長距離・中距離での目視外射程戦闘能力はSu-27やMiG-29以上である。
また、同じデータリンクを使用して、レーダーで捉えた目標データを同じ防空軍所属機であるSu-27などに送信することが可能である。
武装ではR-33やR-37・KS-172等の長射程空対空ミサイルの運用が可能となった。
また中射程空対空ミサイルではR-77(MiG-31Mのみ)・R-40を、短射程空対空ミサイルではR-60が搭載可能。
他にソ連機としてはおなじみのIRSTやMiG-25には無かったGSh-6-23 6砲身23mmガトリングガン・空中給油プローブを搭載している。
また、エンジンをソユーズ・ツマンスキー R-15BD-300ターボジェットから燃費の良いソロヴィヨーフ D-30F6ターボファンへと換装されている。
基本的にMiG-25の改良型といえる機体であるため、高空での高速迎撃に特化しており、その反面、低空における機動性は皆無に等しい。
これはそもそも「超音速で展開可能な空飛ぶSAMサイト」という本機の設計コンセプトに由来しており、これに徹底した同機は、R-33用にショックコーンの外にミサイルを出した後に発射するトラピーズ式ランチャーを備えるなどして、超音速領域での安定したミサイル発射能力に力を入れている。
また、この機が担当する広域防空においては守備範囲及び目標迎撃能力を決定する速度性能は極めて重要な要素であり、この機を評して「速度性能は重要な要素ではない」とする評論家は、そもそもこの機の目的を理解していないと言えよう。
スペックデータ
乗員 | 2名 |
全長 | 22.69m |
全高 | 6.15m |
全幅 | 13.47m |
主翼面積 | 61.6㎡ |
空虚重量 | 21,820kg |
離陸重量 | 41,000kg(機内燃料最大時) |
最大離陸重量 | 46,200kg |
最大兵装搭載量 | 6,960kg |
エンジン | ソロヴィヨーフ(現アビアドビガーテル)D-30F6ターボファン×2基 |
推力 | 93.1kN 151.9kN(A/B使用時) |
最高速度 | マッハ2.83 |
巡航速度 | マッハ2.35(最大) マッハ0.85(経済) |
上昇率 | 208m/秒 |
実用上昇限度 | 20,600m |
航続距離 | 1,780nm(フェリー時、空中給油なし) |
戦闘行動半径 | 388nm(マッハ2.35、R-33×4) 647nm(マッハ0.85、R-33×4) 782nm(マッハ0.85、R-33×4、増槽使用時) 1,185nm(マッハ0.85、R-33×4、増槽使用、空中給油1回) |
固定武装 | GSh-6-23 23mm機関砲×1門 |
兵装 | R-40、R-60、R-33、R-77/RVV-AE、R-37を搭載可能。 |
MiG-31の主な種類
- Ye-155MP:
試作原型機。
1975年9月16日に初飛行。
生産型と比べて、主翼付け根のストレーキが無く、前縁フラップも無い。
また、エアブレーキを兼ねる主脚扉の形状も異なっている。
- MiG-31:
空中給油プローブを持たない初期生産型。
- MiG-31DZ:
初期型に空中給油ドローグを装備した試験機。
- MiG-31B:
ECCM能力を高めた「ザスロンA」レーダーやECM機器、空中給油装置を搭載した型。
改良型のR-33S空対空ミサイルを搭載可能。
- MiG-31BS:
MiG-31(初期生産型)のB型仕様への改修型。
- MiG-31LL:
射出座席試験機型。
- MiG-31D:
対衛星ミサイルを胴体下ハードポイントに1発搭載する衛星迎撃型。
2機が試作され、実物のミサイルも製造されたが、ミサイルは試射すら行われず1990年に計画が中止された。
- MiG-31A:
D型に準ずる商業用衛星打ち上げ母機型。
単体で100kg、「イシム」固体燃料ブースター装備で160kgまでの小型衛星を低軌道に乗せられる能力を持っていた。
計画のみ。
- MiG-31E:
レーダーやジャミング装置、IFFを装備せず電子戦関連装置をダウングレードした輸出型。
現在のところ海外からの発注はイランのみ。(現時点ではイランの受領は確認されていない。)
また、カザフスタンにも輸出された。
- MiG-31M:
MiG-31の性能向上型。
レーダーに「ザスロンM」を搭載し、ハードポイントを胴体下と翼下外側の2箇所に追加。
電子機器も改良され、後席はグラスコックピット化された。
また、R-37やR-77の運用能力を付与された。
7機の試作機が生産されたが、予算不足で計画は中止され、量産・運用に至らなかった。
- MiG-31F:
「ザスロンAM」レーダーを搭載し、空対地攻撃能力を持つマルチロール型。
MiG-31M同様に後席がグラスコックピット化するなど近代改修を受けている。
量産・運用されなかったが、技術はのちのMiG-31BMにフィードバックされた。
- MiG-31BM:
F型に準ずるマルチロール型。
Kh-29、Kh-31、Kh-59/Kh-59Mなど多様な空対地兵器の装備が可能となった。
量産・装備されず。
- MiG-31FE:
BM型の輸出型。中国、イラク、リビア、アルジェリアに提案されたが、量産・運用されず。
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