かんがいぶかい

実用日本語表現辞典

感慨深い

読み方：かんがいぶかい

感慨深いとは、心に深く感じることや、感動や思いが深いことを表す形容詞である。主に、経験や出来事に対して、その意義や価値を深く理解し、心に響く感情を抱く際に用いられる。感慨深い状況は、人生の節目や記念すべき出来事、感銘を受ける出会いや別れ、美しい風景や芸術作品など、様々な場面で感じられる。

感慨深いという言葉は、感慨という名詞と深いという形容詞が組み合わさった言葉である。感慨とは、心の中で感じることや、感情が湧き上がることを指し、深いとは、その程度が高いことや、広範囲にわたることを示す。したがって、感慨深いとは、心に強く訴えかける感情や思いが、非常に高いレベルで感じられることを意味する。

（2023年6月14日更新）

感慨深い

読み方：かんがいぶかい

「感慨深い」とは・「感慨深い」の意味

結婚式などで耳にする「感慨深い」という言葉は、悪い意味で使われることはなく、「しみじみと心に感じ入る」という良い意味で使われる。

「感慨」には「心に感じ入る」という意味があり、それが「深い」のであるから、「深く心に感じ入る」という意味になる。心で感じるものには良い感情も悪い感情もあるが、深く感動した場合やしみじみと感じ入った場合の感情とは、良い感情を表しているため、悪い意味で使われることはない。「感慨深い」という表現は、自分や身内のこれまでの経緯に対して、今の自分や身内が成長したことへの実感、何かを成し遂げた満足感、苦労を乗り越えた達成感などの肯定的な表現として使われる。

「感慨深い」の読み方

「感慨深い」は、「かんがいぶかい」と読む。「感慨（かんがい）」と「深い（ふかい）」の複合語であり、2つの語を組み合わせたことで「ふかい」が「ぶかい」と濁音化している。このように、語の最初の音が濁音化することを連濁と言い、複合語では一般的に起こりうる語の変化である。

似た言葉に「考え深い（かんがえぶかい）」があり、混同されたり誤用されたりすることがある。考え深いは、「考え」と「深い」の複合語であり、それぞれの字が意味する通り、考えが深いという意味をもつ。つまり、「思慮深い」と同義であり、深く考えを巡らせている様を表す言葉である。

「感慨深い」の熟語・言い回し

「感慨」と別の言葉を組み合わせた熟語には、「感慨無量（かんがいむりょう）」、「感慨多端（かんがいたたん）」、「感慨一入（かんがいひとしお）」がある。「感慨無量」とは、「感慨」と「無量」を組み合わせた複合語であり、「計り知れないほど身に染みて感じ入る」という意味の熟語である。「感無量」とも言う。「感慨多端」とは、「感慨」と「多端」を組み合わせた複合語であり、「深く感じ入ることがたくさんある」という意味の熟語である。「感慨一入」とは、「感慨」と「一入」を組み合わせた複合語であり、「より一層しみじみと感じ入る」という意味の熟語である。感慨深いと感慨無量はほぼ同義で使われ、心に感じ入ることが複数ある場合には感慨多端、感慨がより一層強くなった場合には感慨一入を使う場合が多い。

感慨深いと似た言い回しとしては、「感慨に耽る（ふけ-る）」、「感慨に浸る（ひた-る）」、「感慨を覚える（おぼ-える）」などがあり、どの言葉もしみじみと心に感じ入っている様子を表す言葉である。一方で、感慨深いと混用されやすい言い回しに「感銘深い」「趣深い」などがあるが、これらはそれぞれ意味が異なる。「感銘深い」は、深く感動したことを表す時に使う言葉で、「感銘を受ける」という表現でも使われる。「趣深い」は、情緒がある様子を表す言葉で、「趣がある」という表現でも使われる。「感銘深い」は、深く心に刻まれる言葉や体験に使われて、「趣深い」は、綺麗な景色や物などに対して深く感じ入った時に使う。何に対して感じ入っているのか、またそこに込められた気持ちも異なるため、正しく使い分ける必要がある。

なお、「感慨深い」を目上の人に使うのは好ましくない。なぜなら、過去と現在を比較してその成長や達成に対して使う言葉であり、目上の人に対して使うのは失礼に当たるからである。もし、「昇進や達成をお祝いする」という賛辞を表現したいのであれば「感無量」、また、「深く感謝する」という気持ちを表現するのであれば「痛み入る」を使う方が望ましい。具体的には、「部長への昇進、おめでとうございます。私も部下として感無量です。」「このプロジェクトでずっとお世話になってきたこと、誠に痛み入ります。」などのように使うのが良い。

感慨深い気持ちとは

「感慨深い気持ち」とは、「しみじみと感じ入っている気持ち」を表す言葉である。先述した通り、過去と現在の関係によってどのような気持ちを表しているのかが異なるという特徴をもつ。例えば、「我が子の成長が実感できて感慨深い気持ちだ。」という文では、「あんなに小さかった子供がこんなに立派になって嬉しい気持ちである」などの意味で使われる。また、「仕事をやり遂げることができて感慨深い気持ちだ。」という文では、「仕事上のさまざまな苦労を乗り越えて目標を達成できたことに対する満足感や充足感という気持ちを深く感じている」などの意味で使われる。つまり、「感慨深い気持ち」とは、その言葉を使う人のこれまでの経緯や使う文脈によって、どのような気持ちを表しているのか意味が異なるのである。

感慨深いですとは

「感慨深いです」とは、「自分がしみじみとした気持ちに浸っている」ということを表現した文である。結婚式や会社など、公共の場でのスピーチで使われることが多い言葉である。しかし、何に対して感慨深いのかは、その時の状況や会話の相手、これまでの経緯によって異なる。そのため、不特定多数の相手に対して「感慨深いです」という文を使うのであれば、何に対して感慨深いのか、なぜ感慨深いのかなどを説明する配慮が求められる。

感慨深く思うとは

「感慨深く思う」も、「感慨深い」と同義で、しみじみと感じ入っていることを表す表現である。また、「感慨深い気持ち」の動詞表現とも取れる。「これまでの努力が結実して感慨深く思う。」などのように用い、文脈によってどのように思っているのかが異なるという特徴をもつ。

感慨深い人とは

「感慨深い」とは、しみじみと感じ入ることを表す言葉のため、「感慨深い人」という表現は誤用である。しみじみと感じ入っている人のことを表現したいのであれば、「感慨に耽る人」や「感慨に浸っている人」と表現するのが正しい用法である。もし、自分が感慨深いと感じている対象（自分の子供や会社の後輩など）を指し示すのであれば、「〜の成長が感慨深い」などと表現するのが適切である。

「感慨深い」の使い方・例文

例1：「あんなに甘えん坊だった息子がこんなに立派に成長するなんて感慨深い」
意味：息子が大きくなった姿を見て、これまでの子育ての苦労や努力、喜びなどが思い出されてしみじみと感じ入ってしまう。

例2：「会社に入った頃は右も左も分からなかった後輩が、部長に昇進したなんて誠に感慨深い」
意味：気にかけていた後輩が立派に昇進して、先輩としても誇らしく嬉しい気持ちでいっぱいである。

例3：「もう銀婚式を迎えるなんて、新婚の頃が思い出されて感慨深いわね」
意味：新婚の時から25年連れ添ってきて、結婚生活の苦労や感動を思い返すと深く心に感じ入るものがある。

例4：「先代から引き継いだこの店が創立50周年を迎えることができて、感慨深いものを感じる」
意味：引き継いだお店の経営がうまくいくように努力してきたことで、無事に50周年を迎えられた喜びを感じる。

例5：「一人で始めた会社だが、上場企業として再スタートを切ることができて、感慨深い気持ちでいっぱいだ」
意味：会社を大きくするための苦労を乗り越えて、企業を上場することができたことに、感無量である。

例6：「卒業アルバムを開くと、学生時代の思い出が蘇ってきて、感慨深い気持ちが溢れてくる」
意味：学生時代の交友関係や出来事、やんちゃしていたことなど、若かりし頃の思い出が蘇ってきて懐かしさで胸がいっぱいになる。

例7：「娘の振袖姿を目にすると、感慨深いものがあるなあ」
意味：成人式を迎えた娘の姿を目にすると、ここまで無事に育ってくれたことへの喜びや充足感を感じる。

例8：「これまでスポーツ選手として掲げてきた目標が達成できて、感慨深く思う」
意味：選手としての長年の目標が達成できたことに対して、夢が叶ったような満足感や達成感を味わっている。

例9：つい先日、ピカピカのランドセルを背負って入学したと思っていた子供たちが、もう卒業を迎えるなんて感慨深いものがある」
意味：入学した頃は幼かった子供たちが、立派に小学校を巣立っていく姿を見ると、成長を実感できて小学校の先生として誇らしく感じる。

例10：「この場所は、両親とよく来た場所だったから、感慨深いよ」
意味：子供の頃に両親と出かけた思い出が蘇ってきて、感じ入るものがある。

これらの例文から分かるように、「感慨深い」という表現は、自分が経験したこと・過去を思い出して感じ入った時・苦労や努力が報われた時などに使う表現である。

（2022年11月10日更新）

感慨深い

読み方：かんがいぶかい
別表記：感慨ぶかい

しみじみと感じ入るものがある、感じ入っている、という意味で用いられる表現。「感慨」の語そのものが「心に深く感じる」というような意味合いであり、「感慨深い」という表現は感慨を充分に感じ取っているようなさまを表明する言い方として用いられる。

「感慨深い」という表現が用いられる場面としては、たとえば「積年の努力が実って遂に念願がかなった」「過去に色々な出来事があったことを思い出す」というような場面が挙げられる。喜び・達成感・充実感・誇らしさなどの感情があったり、人情に助けられたり奇縁に恵まれたりあるいは世間の逆風にさらされたりといった幾多の記憶が思い出されていたりと、種類も程度も容易には表現しがたいものが胸裡に去来している、そのような心境が「感慨深い」と表現されているものと捉えられる。

「感慨深い」には、「しみじみとした趣を感じる」 「風情がある」というような意味合いは特にない。

「感慨深い」状況と似た心境を指す表現として「万感の思い」という言い方もある。「万感」は文字通りさまざまな感情のことである。「万感交到る」（ばんかんこもごもいたる）という慣用的な言い回しで用いられることもある。

「感慨深い」は「考え深い」（かんがえぶかい）と混同される場合があるが、「考え深い」は思慮深く慎重であるさまを形容する表現であり、意味も用法も大きく異なる。ただし「感慨深そうな面持ち」と「考え深そうな面持ち」のように、どちらをどちらと取り違えてもそれなりに意味が通りそうな文脈は少なからずある。

（2018年8月30日更新）