「何人死んだんだ」ヤジ問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 07:51 UTC 版)
「松本文明」の記事における「「何人死んだんだ」ヤジ問題」の解説
2018年1月25日、衆議院代表質問で日本共産党の志位和夫委員長が、沖縄で起きた米軍ヘリの事故・不時着問題について保育園の保護者の不安の声を紹介し、普天間基地移設問題、辺野古新基地問題、沖縄からの海兵隊の撤退を求めたところで、松本が「それで何人死んだんだ」とヤジを飛ばした。その後の『しんぶん赤旗』による取材で「死者が出なければ良いという考えか」という質問には「そんなことは全然ない」と返答した。 松本のヤジは、来たる2月4日に投開票を迎える沖縄県名護市長選挙への影響を懸念した自民党中枢の逆鱗に触れ、安倍晋三首相ならびに菅義偉官房長官は瞬時に松本の更迭を決めた。そして1月26日に松本と面会した安倍首相は、「大変な時期なので緊張感を持って対応してもらわないと困る」と松本を厳しく注意し、事実上更迭した。松本は「沖縄県民ならびに国民の皆様に迷惑をかけた。おわびするしかない」と陳謝したものの、議員辞職は否定した。 松本のヤジに対しては多くの批判が寄せられた。立憲民主党の川内博史議員は、「(松本のヤジは)沖縄への暴言、冒瀆だ」とし、さらに「任命権者として県民に謝罪すべき」として松本を副大臣に任命した安倍首相の責任も問うた。これに対して安倍首相は「沖縄の皆さん、国民の皆様に対して深くおわび申し上げたい」「改めて深くおわびを申し上げたいと思う」と謝罪した。政府・与党内からも批判の声はあがった。自民党所属の江崎鉄磨沖縄北方担当相は、松本のヤジについて「沖縄県民は非常に強いいら立ちを覚えたと思う」と述べ、また同じく自民党所属の鈴木俊一五輪相は「内閣の方針とは相いれない発言。更迭に近い形で辞表を受理されたのはやむを得ない」との認識を示した。公明党の山口那津男代表は、「(松本のヤジは)極めて軽率で、許されない。責任感を改めて自覚してもらいたい」との考えを示した。自民党の國場幸之助議員は、「(松本のヤジは)大変遺憾だ。これまで沖縄では米軍による事件、事故で多くの人が犠牲になった。県民の心は深く傷つけられた」と述べ、松本のヤジを非難した。これに関しては安倍首相も「政治家は自らの発言に責任を持ち、有権者から信頼を得られるよう自ら襟を正すべきだ」として松本に反省を促した。 新聞各紙も社説などで批判を展開した。読売新聞は「(沖縄)県民感情を無視した重大な失言である」と酷評し、朝日新聞も「誤解の余地など寸分もない、政治家としての資質を欠く暴言だ。しかも、松本氏は沖縄担当の副大臣を務めたこともあるというのだから、あきれるほかはない」と松本を批判した。毎日新聞も「米軍事故の危険にさいなまれる住民を気遣うどころか、犠牲者が出なければ構わないと言わんばかりだ。失言で済まされる問題ではない」と批判した。東京新聞および中日新聞は「死者が出なければ部品落下や不時着が続いても構わないと受け取られかねない発言だ。内閣の一員である副大臣による国会内での発言として不適切極まりない」として松本のヤジを問題視し、西日本新聞は「耳を疑う発言だ」「人が死んでから動けばいいとでも考えているのか」と論じた。北海道新聞は「大惨事寸前の事故が相次ぐ中での暴言である。沖縄から『死人が出なければ政府は動かないのか』と、怒りの声があがるのも当然」として松本のヤジを批判した。 松本のヤジに対しては、沖縄県からも批判の声が相次いだ。翁長雄志沖縄県知事は「沖縄の問題を全く熟知していない」と松本を批判し、さらにヤジに関連して「(政府は)『県民に寄り添って判断したい』『米軍にしっかり申し伝えたい』と何十回も何百回も言っている。いいかげん、新しい言葉を出すくらいの勇気を持ってもらいたいと首相には言いたい」と述べて安倍政権も批判した。桃原優渡名喜村長も「(松本の発言は)とんでもないヤジだ。恐ろしいことを口にする。人の命を何だと思っているんだ」「攻撃ヘリがいきなり村のヘリポートに降りてきた。それを住民がどんな気持ちで眺めたか。『死』という例えが出てくる発想自体が、全く理解できない」と松本を非難した。また、宮城一郎沖縄県議は松本のヤジに関して「本土に米軍基地を引き取り、米軍機が上空を飛ぶ生活を体験してほしい」と語った。米軍ヘリの部品が見つかった宜野湾市の保育園の園長は「この1カ月半、たまたま死人が出ていないだけ。死人が出なければ政府は動かないのか。人権を守る政治家の資格がない」「沖縄の状況、沖縄の民に向き合わない政府に憤りを覚える」と憤った。前泊博盛沖縄国際大学教授は、「いつ何が落ちてくるかわからずにおびえている人たちがいるのに、『基地を抱えている人たちは犠牲になっても当たり前』という風に聞こえる。ひどすぎる発言だ。副大臣、国会議員というより、人間としてどうかが問われる。副大臣を辞めて済む問題ではない」と批判した。 沖縄の新聞各紙も批判を展開した。沖縄タイムスは「開いた口が塞(ふさ)がらない。まるで問題を起こした米軍よりも県民を責めるような口ぶりである。この程度のことで大騒ぎするなと言いたかったのか」「(松本の)ヤジは、無理解とか認識不足のレベルを超える。内閣の一員でありながら松本氏は、県民に大きな基地負担を負わせていることに対する反省もなく、逆に、傷口に塩を塗るような言葉を吐いたのである。辞任は当然だ」と酷評し、琉球新報も「(松本のヤジは)聞きようによっては、一連の米軍事故で死人は出ていないじゃないか、とも受け取れる。辞任して済む話ではない。松本氏は発言の真意を説明する責任がある」と論じた。
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