宣命とは? わかりやすく解説

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せん‐みょう〔‐ミヤウ〕【宣命】

読み方:せんみょう

天皇命令伝え文書様式の一。漢文体用い詔・勅対し宣命書き記されたもの。


宣命

読み方:センミョウ(senmyou), セミョウ(semyou)

天皇命令伝え文書の一形式


宣命

読み方:センミョウ(senmyou)

天皇命令伝える詔のうち和文体書かれたもの。


宣命(せんみょう)

天皇勅命書いた文書のうち、国文体で書かれたもの。

宣命

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/29 09:27 UTC 版)

宣命(せんみょう)とは、天皇の命令を漢字だけの和文体で記した文書であり、漢文体の詔勅に対していう。この文体を宣命体(-たい)、その表記法を宣命書(-がき)、また宣命を読み上げる使者を宣命使(-し)、宣命を記す紙を宣命紙(-し)という。宣命体は、漢字仮名交じり文の源泉となった文体で、かなの発達史上、大変重要な文書である。

概要

天皇が宣(の)りたまう大命(おおみこと、命令)の意で、本来は口頭で宣布され、それを宣命体で書記した。奈良時代朝賀即位改元立后立太子などの儀式に用いられ、平安時代以降は任大臣贈位神社山陵などの告文にだけ用いられた。

宣命体・宣命書

宣命・祝詞[1]などの文体を宣命体といい、その表記法である宣命書とは、体言用言の語幹を大きな字で書き、助詞助動詞・用言の活用語尾などは、一字一音の万葉仮名で小さく右に寄せて書く方法である。「を」には「乎」、「の」には「乃」、「は」には「波」などを一定して使っている。ただし、宣命体には2種類ある。助詞なども含めてすべて大字で書かれる宣命大書体(せんみょう だいしょたい)と、上述のように助詞などを小字で書き分ける宣命小書体(せんみょう しょうしょたい)である。

宣命書は、「漢字万葉仮名交じり文」と言えるが、その万葉仮名を平仮名に変えると、「漢字仮名交じり文」とほぼ同じになり、これは日本語表記の展開史の上で注目すべき出来事であった[2]

宣命体のモデル

古代朝鮮吏読(りとう)が宣命体を導いたと推測されている。文型上、朝鮮語は日本語とよく似た言語で、助詞や助動詞などの文法的要素を必要とするため、漢文で書かれていた古代朝鮮の公文書にこれらの朝鮮語を書き加えることがおこってくる。これを吏読というが、原則として漢文の各分節の終わりにその要素を送りがなのように漢字で記した。この方法は日本の宣命書と同じであり、ここに吏読が宣命体のモデルという推測が生まれた[3]。ただ、仮名を小さく書く宣命小書体に進展したのは、日本における成果である[4]

宣命紙

宣命を記す紙で、普通は黄麻紙(おうまし)を用い、伊勢神宮には色の紙、賀茂神社には紅色の紙を用いた[5]

黄麻紙とは、を主体に造った紙で、害虫を防ぐために黄檗(おうばく)で染めたため、その色からこの名がある。古来より麻は清浄なものとされていたので、奈良時代の写経にも多く使用された。 [6]

宣命

孝謙天皇宣命

続日本紀』には、697年、文武天皇の即位時のものをはじめとする宣命が62編、収録されている。しかし、いずれも原本は現存しない。 天平勝宝9歳(757年)3月25日の孝謙天皇宣命の転写が正倉院文書・正集第44巻に収めされている[7][8]

孝謙天皇宣命(部分)
原文 釈文

天皇 大命 良末等 大命
衆聞食 倍止 宣。
天平勝宝九歳三月廿日
倍留奈留
受賜 波理

天皇(すめら)が大命(おほみこと)らまと宣(のりたま)ふ大命を
衆(もろもろ)聞食(きこしめさ)へと宣(のる)。
此(こ)の天平勝宝九歳三月廿日
天(あめ)の賜(たま)へる大(おほい)なる
瑞(しるし)を頂(いただき)に受賜(うけたま)はり

後伏見上皇宣命

後鳥羽天皇後白河法皇の院宣(宣命)で践祚して以降、上皇による院宣(宣命)によって新天皇が践祚することができるようになった。次のものは、後醍醐天皇が笠置山に立て籠もったことによって、後伏見上皇が皇太子量仁親王(光厳天皇)の践祚を命じた宣命である[9]

 後伏見上皇宣命案

太上天皇 詔御命 、親王・諸王・諸臣・百官 人等、天下公民衆聞食 宣。先帝不為 致謙遊 、□皇太子 天日嗣 定賜 、衆諸此状 、清直 輔導 仕奉 、天下 令有 、詔御命 衆聞食 宣、
元弘元年九月廿日

— 『壬生家文書』「古宣命」[10]

光厳上皇宣命

光厳上皇が、豊仁親王(光明天皇)の立太子践祚を命じた宣命。

 光厳上皇宣命案

太上天皇 詔御命 、親王・諸王・諸臣・百官 人等天下公民衆聞食 宣、
先帝事起不図 忽京師 、皇位 不可曠 、某親王(※豊仁親王) 皇太子 定賜 比弖、天日嗣 定賜 、衆諸此状 、清直 皇太子 輔導 仕奉 、天下 介久 令有 、又如此時 南都之人人不好 、天下 乎毛、己 氏門 乎毛 滅人等 前前有 、若如此有 人□者己 教(〃)教訓直 、各 己祖 □滅 弥高 仕奉 、欲継 思慎 无弐心 志弖 仕奉 倍志止 詔、御命 衆聞食 宣、

建武三年八月十五日 — 『壬生家文書』「古宣命」[10]

崇光天皇即位宣命

 崇光天皇即位宣命

現神 大八洲国所知 天皇 詔旨 良万度 宣勅 親王・諸王・諸臣・百官人等・天下公民衆聞食 宣、掛畏 平安宮 御宇 倭根子天皇 宣、此天日嗣高座 、掛畏 近江 大津 御宇 天皇 初賜 定賜 倍留 法随 仕奉 仰賜 授賜 大命 、受賜 受賜 、進 不知 退 不知 久度 宣天皇 、衆聞食 宣、
然皇 天下治賜君 、賢人 良佐 弖之、天下 乎者 治賜物 度奈牟 聞食 、故是以大命坐宣 、朕雖拙劣、親王等 、王等・臣等 相穴 奈比、相扶奉 、此 仰賜 授賜 倍留 食国 天下之政 、平 仕奉 倍志度奈牟 所念行 、是以正直之心 、天皇朝廷 衆助仕奉 宣天皇勅 、衆聞食 宣、

貞和五年十二月廿六日 — 『園太暦』貞和御即位記

脚注

  1. ^ 現在でも祝詞では宣命体が用いられており、祭りや祈願の際に神官によって記されている。
  2. ^ 大島正二『漢字伝来』P.113 - 114
  3. ^ 大島正二『漢字伝来』P.117
  4. ^ 森岡隆『図説かなの成り立ち事典』P.187
  5. ^ 新村出『広辞苑』
  6. ^ 二玄社編集部『書道辞典』二玄社;、2010年、30頁。ISBN 978-4544120080 
  7. ^ 続日本紀』には収録されていない。
  8. ^ 孝謙天皇宣命の転写はもう1点あり、正倉院文書・続修第一巻に収められている。
  9. ^ 宮内庁書陵部編『図書寮叢刊 壬生家文書 六』(昭和59年),p.27
  10. ^ a b 宮内庁書陵部編『図書寮叢刊 壬生家文書 六』(昭和59年)

参考文献

関連項目


宣命

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 07:19 UTC 版)

詔勅」の記事における「宣命」の解説

唐の律令制倣い詔勅の名を立てた後、即位改元立后立坊および国家の大事は和文宣告した。これを宣命といい、漢文詔勅並び行われた。あるいは、当初の詔の書式全て和文であったが、後に漢文書式定め和文書式を宣命と呼んで区別したともいう。 本居宣長によると、宣命とは命を受け伝えて宣り聞かせることをいう。神祇令に「中臣祝詞」(中臣祝詞宣すとあって令義解に「宣は布なり。言ふは、神に告げるに祝詞を以てし、百官宣明す」とあるように、宣命の宣もその意味であった日本書紀継体天皇紀に「宣教使」とあるが、これも勅旨を宣聞する使者のことであったそのほか宣旨・宣示などというときの宣の字は全て宣聞することに関係した延暦年間平安遷都前後)の頃から、宣命の用途一変した。『北山抄』は次のようにいう。神社・山陵の告文立后立太子任大臣節会、任僧綱天台座主喪家告文類いを宣命とする。奏覧の儀は詔書と同じであり、別に宣命の式はない。宣命すべき詔書を宣命と呼ぶ。御画のないものを前例為すきでないからである、と。これにより、恒例行事のみに宣命を用い臨時には用いられなかったことが分かる即位立后立太子大嘗などの大儀には、宣命の大夫が殿から降りて順序によって宣命するのを例とした。朝儀の宣命と神社・山陵の告文近世まで行われた。これは詔勅とは違う形式であった公式令によれば詔書の文は「明神御大八洲天皇詔旨」等に始まり「咸聞」で終わるが、続日本紀載る宣命は「現御神止大八島国所天皇大命良麻止詔大命乎」に始まり諸諸聞食止詔」で終わっていた。その読み次のとおりであった。 .mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}現御神(あきつみかみ)と 大八島国(おほやしまぐに所知しろしめす天皇(すめら)が大命(おほみこと)らまと詔(のたまふ大命(おほみこと)を・・・〔本文〕・・・諸(もろ)諸(もろ)聞(きこし)食(めさへ)と 詔(のる) これは単に漢訳和語違いしかない。 以上のように宣命はもともと上の命を下に宣聞する義であったが、特に神社・山陵の告文のみを宣命と称していた。明治維新初め、この用例古義ではないとされたため、宣命の呼称廃し天皇みずから親祭するものを御告文称し勅使奏するものを祭文改めた

※この「宣命」の解説は、「詔勅」の解説の一部です。
「宣命」を含む「詔勅」の記事については、「詔勅」の概要を参照ください。

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