ダクト 建設業としての位置

ダクト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/02 14:21 UTC 版)

建設業としての位置

設備工事としてのダクト設置工事は、建設業のうちの管工事業に分類される。工事の例示としてダクト工事と記載される。法律上は風導管という言葉はほとんど出てこない。業として営むには建設業許可が必要である。この場合、現場や営業所の主任技術者になれるのは、管工事施工管理技士と実務経験者(10年以上)などである。板金工事の技能士は管工事業の主任技術者になれなかったが、平成27年4月1日よりダクト板金技能士も主任技術者となれることとなった。

歴史

明治期に日本に冷暖房が入ってきた頃に、アメリカよりダクトが導入された。 当初は板金工事(ブリキなど)の職人が従事していたので、技能の系統としては板金作業になっているが、流体力学的にも配管工事に近い業務である。

この頃は墨壺、墨指と折尺を用いた手作業による部材の展開、「まとも」と呼ぶ大型のはさみによる手切り、手折りの本はぜによる組み立て、リベットをハンマーでかしめたフランジ接続で、現場での製作が基本であった。

昭和期に入ってピッツバーグはぜが導入されると作業性は僅かに改善されたが、はぜは手折りだったため未だに板金作業と変わるところが無かった。

昭和40年代に入ってロール成形機を必要とするボタンパンチはぜが導入されると機械化が進み始め、現場製作をやめて工場製作が主流となっていった。

昭和60年(1985年)頃に自動プラズマ切断機と共板工法がアメリカより導入されて機械化の波は一気に広まり、日本国内においてもダクト先進地域であるアメリカ、ヨーロッパ並に生産性が向上した。

平成20年ごろから輸送中の体積を減らすために、半完成品を折り畳んで出荷して現場で組み立てるなどの工夫も一部で見られる。しかし工場で完成品として製作、出荷して現場で取り付けるのがなお一般的である。

ダクトの種類

まっすぐのもの、まがったもの、とそれらの組み合わせであり、取り付け現場の要求にしたがって様々な形状、寸法になる。

矩形(角ダクト)

角ダクトの直管にドン付けで繋がるエルボとSカーブ
直管
同じサイズで、ただまっすぐのダクト。定尺の鉄板からそのまま取れるものは定尺ダクトと呼ぶ。鉄板の素材コイル幅が6フィート(1828mm)を標準としているため、角ダクトの接続面間の長さは共板工法の場合1740mm、フランジ工法の場合1815mmが標準である。部材接合用のはぜを4箇所用いる4枚取りの他に、Lの字型に折り曲げて2箇所で済ませたり、1枚板を折り曲げて1箇所で済ませるファブリと呼ぶ取り方もある。
エルボ(elbow)
まがったダクト。角度は90度が標準であるが、任意の度数まで何度でも製作は可能。カーブしながら変形したり、ねじれを加えたりもできるが、断面積が少なくなると抵抗が増す。内側アールの円弧の中心から接続面の中心までが、そのダクトの幅サイズと等しい場合を1アールと呼び(用語的には丸ダクトの用語であり、角ダクトの場合通常は、内Rを指定して製作依頼する必要がある)、そのエルボの内アールの標準としている。標準以下になる場合は内部にガイドベーンを取り付けて、圧力損失=抵抗が増えないようにする必要がある。また、内Rによっては製作ができない場合もあり、この場合は「内角」や「テーパー」などで対応する。また、建物の壁面を沿って登ってゆく縦管などでは、135°エルボの一体物で製作(無論、90°と45°の組み合わせも可能)し、最後を網で終える形が多い。
ホッパー(hopper)
入り口と出口のサイズが違うダクト。普通は面間が平行だが、角度やねじれのついたものも製作可能。有効寸法が取れていないと騒音の元となる。拡大、縮小の角度は仕様書により指定されるが15度から30度が普通である。
Sカーブ(S管とも)
面間は平行のまま振れたり上下するダクト。Sの字状。拡大、縮小を兼ねる場合もある。
分岐管
二股、三つ股など接続口が3つ以上あるダクト。分岐、集合に用いる。最近ではドン付け、直付けといって本管に開口して接続する場合がほとんどである。分岐管として製作する場合は、「ダキ」とも呼ばれ、2つの分岐の場合が多いが、3分岐での製作ももちろん可能である。
フード(hood)
厨房内において、火気を使用する調理器具などの上部に設置され、調理の排気を効率的に捕捉するためにつけられる下部が開放された箱。[箱型]、[山型]や美観と性能を兼ね備えた[二重]などの形がある。下部には油受けとなる折り返しが付いている場合がほとんどであり、その油受けに油抜きのためのドレンコックが設置される場合もある。排気は側面または上面からされることが多い。また、フライヤーの上に設置して油煙を排気する場合は、バッフル板などが備えられたグリスフィルターの設置が義務付けられており、そこを通過した油煙はフィルターを構成するステンレス鋼板に衝突して通過する間に油分を濾し取られオイルカップに排出されるため、ダクト内への油分侵入を防いでいる。また、火災防止の観点から、FS[ファイアーシャッター]や、フードからの排気ダクトにFD[ファイアーダンパー]が備えられる。指定温度以上になるとシャッターや羽根が閉止されて、高温の空気がダクトに流れて延焼するのを防ぐ。逆に、食洗機やコンベクションの上に設置するフードには、基本的に油分が含まれないことから、FSのみでグリスフィルターを設けない場合が多い。材質は亜鉛めっき鉄板やステンレス鋼板(SUS)が多いが、国土交通省の仕様書では「1mm以上のSUSに限る」となっている、亜鉛めっき鉄板で作ると錆が食品に落ちる可能性があるのでステンレス鋼板で作るのが基本。SUS304での指定が多いが、防錆力の劣るSUS430での製作も近年増してきている。また、美観からBA[ビーエー]などの光沢のある表面仕上げのステンレス鋼板を使用する場合も多いが、近年、No.4[ナンバーフォー]などの、多少くすみがかった仕様も多くなってきている。また高級店などでは、連続した研磨目が整って見栄えも良好なHL[ヘアーライン]の指定が多い。
チャンバー(chamber)
気流の分岐や合流が必要な場所に、複数のダクトを突っ込み、大きなサイズのボックスを取り付けることがある。このボックスをチャンバーと呼ぶ。用途によって混気チャンバーなどと呼称されることもある。空調機の吹き出し側に大きな箱を作り、風速を一定にしたりするために作られる物を給気チャンバー、還ってきた空気を一定の風速静圧で吸い込むための物を還気チャンバーとして空調機に隣接させることもある。
角丸(かくまる)
一方の口が円形で、他方の口が矩形のもの。丸ダクトと角ダクトの接続に用いる。
角ダクトの直管の末端を閉じる閉止板(メクラ板)
閉止板[6](フサギ、メクラとも)
配管されたダクトの末端を閉鎖するときに用いる鉄板。将来のリニューアル工事などでダクトを延長できるように、角ダクトの接続面を残して蓋をする。
  • 共板工法 - 鉄板の4辺を10mm折り曲げ、立ち上がった面を外側にして4隅をボルトで締め、その立ち上げにダクトクリップをかける。
  • フランジ工法 - ダクトのフランジと同じサイズのフラットバーに鉄板を取り付けて、ボルトで締めて取り付ける。
高速ダクト等には必要に応じてリブ補強やアングル補強を入れることもある。
共板・フランジ共に、長さ50mmほどの閉塞した蓋を作って実質的に閉止板とすることもある。俗に弁当箱と言われる形状となる。

円形(丸ダクト)

直管
定尺4mのスパイラル管が標準で使われる。鉄板を丸めたシーム管(継ぎ目あり)を使用する場合もあるが、この場合は1m間隔で溶接を行う。
エルボ
標準の角度が90度と45度の曲がり管。およそ直径200mm以下では、プレス成形した2枚の鉄板を気流方向に接合したもの、それ以上では気流と直角方向に90度で4分割(大口径は5分割)、45度で3分割してはぜや溶接で接合したセクションエルボとする。必要があれば30度や60度といった任意の角度でも製作できる。
レジューサー(reducer)
入り口と出口のサイズが違うもの。普通は面間が平行(芯々)だが、角度のついたものや、片側を平らにした物も製作可能。通常はホッパー(テーパー)で徐々に絞っていくが、エンドキャップ(閉止カラー)に変換する口径を開口し、カラーを取り付けた「ドン付けレジューサー」などと呼ばれる継ぎ手も製作可能である。だが、ドン付けレジューサーは、口径変換の際に風を巻き、騒音の原因にもなり得る。
カラー(collar)
定着カラーとも。主に角ダクトやチャンバーから丸ダクトを取り出すときに使用される。丸ダクトから取り出す時に使われる、取り出しの根元に取り出される側の径に合わせたカーブを付けたものは、ピンキーと呼ばれる。また、カラーニップルと呼ばれる継手も存在し、これは、定着カラーにリブ(ヒモ)を入れた形になり、主に保温フレキなどを取り付ける際に使用する。
ニップル(nipple)
丸ダクト同士を差し込みによって繋ぐ継手。スパイラルサイズ(正寸)よりも3mmほど小さく作られ、スパイラル管同士を接続する。通常は、ストッパーとして外側にヒモ(リブ)が付けられる。継手同士を接続するなどの目的で正寸で製作することもあり、この場合は内側にヒモを入れることもある。
分岐管(T管、Y管、TY管など)
丸ダクトを分岐する継ぎ手の種類。幹となるまっすぐな方向に対し、枝が出る角度によって名称が異なる。
  • T管 - 幹から枝が90度で出るもの。チーズとも呼ばれる。
  • Y管・ト管 - 幹から枝が45度で出るもの。
  • TY管等 - Y管の枝が45度で、そこから再び曲がり最終的に90度の曲がりとなるもの。分岐の角度は指定ができパチンコY(フタマタY)管や、二又に分岐した後に45°返しによって、結局主管より90°で分岐二又TYなども製作できる。また特殊なT管として。主管よりも枝管の呼び径が大きいWTW(WRTやT管Wとも)管(Y分岐の場合はフタマタRYなど)も製作可能である。
  • RT巻・RY巻 - 主管をレジューサーとして呼び径を収縮させ、分岐への通気を促すもの。
閉止カラー[6](フサギ、メクラとも)
配管されたダクトの末端を閉鎖するときに用いるカラー。将来のリニューアル工事などで取り外して延長できる。縦走り管ではメクラカラーに水抜きのソケットなどを取り付けることもある。発注や受注の際は、ニップルサイズかスパイラルサイズかの確認が必要である。また、清掃口として取り外しができるように、持ち手を付けることも可能である。発注の際には雨水の流入なども加味して、本管側、メクラ側、どちらを正寸にするか注意が必要である。一体型としてT管やY管の主管の片端を閉じたMT管(片メクラT管)なども存在する。

  1. ^ スーパーダイマは新日本製鐵の高耐食性めっき鋼板の商品名である。
  2. ^ ZAMは日新製鋼株式会社の高耐食溶融めっき鋼板の商品名である。
  3. ^ アルシートは新日本製鐵株式會社の高耐食性めっき鋼板の商品名である。アルミニウムめっき鋼板は1939年アメリカのアームコ社によって製造法が開発された。
  4. ^ TDCは共板工法の一つ、アメリカのロックフォーマー社(LOCKFORMER)の製品名である。
  5. ^ AnemostatはMESTEK,INC.の登録商標である。
  6. ^ a b 業界内ではメクラの呼称が標準的に使われるが、差別用語と発音が同じなので項目名としては閉止板、閉止カラーとした。


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