捜査 捜査の概要

捜査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/14 06:28 UTC 版)

概説

捜査は犯罪の発生を前提として行われる[2]

その一方で、捜査機関が犯罪者を発見や逮捕する目的で、捜査官や第三者を「おとり」にして、捜査機関側があえて犯罪を誘発し、その犯罪の犯人を現行犯として逮捕しようとする捜査方法が採用されることがある。これをおとり捜査と言う[3]

なお捜査は公訴の遂行のためにも行われる(通説)[2]。ただし、陪審制度(陪審手続)をとる国では一応の嫌疑でも公訴しうるが、そうではない日本などでは確実な嫌疑のない起訴は公訴権濫用として伝統的に許されていない[2]

捜査は社会の変化・進展に対応するかたちで、法医学・心理学・物理学・化学・工学・精神医学などの助けを借りて、次第に科学的捜査の性格を強めてきている[1]

捜査は、逮捕・捜索などといった強力な権限行使を含みうるものであり、関係者の人権に強い影響を与えるものであるので[1](つまり人権侵害をしかねないものであるので)、法律によって厳格に規制されなければならない[1]。そのため捜査官を規律するための原則がいくつも定められている。#捜査に関する原則

捜査行為はすべて法律の規定の範囲内で行わなければならない。法律を逸脱して行ってはならない。一般に違法な捜索・押収等によって証拠物を集めること、また広義には、被疑者を違法に身柄拘束すること、違法な取り調べを行って自白を得ること、違法な盗聴により会話を録音することなどを違法捜査と言う[4]。違法な捜査を行う捜査官は、もはや捜査官ではなく、彼自身のほうが犯罪者であり、捜査官には不適なので解任されて厳格に処罰されるべき存在、という位置づけとなる。

線引き、名称の使い分け

犯罪が発生しようとしているため、それを予防し制止しようとする行為は、警察官の行為であっても司法警察権の行使とはいえず行政警察権の行使であり捜査ではない[5]。また、捜査は捜査機関によって行われるものであり、犯罪被害者からの告訴等は捜査の端緒とはなるが捜査そのものではない[6]

自白偏重から証拠主義へ

自白への偏重を避け、あらゆる証拠を適正に収集しその合理的総合力により捜査を完結させること(証拠によって事実を明らかにすること)を証拠捜査主義という[7]。捜査は社会の変化・進展に対応するかたちで、法医学心理学物理学化学工学精神医学などの助けを借りて、次第に科学的捜査の性格を強めてきている[1]

日本における違法捜査、密室での不適切な取り調べ、自白偏重

日本ではいまだに、捜査官が個人的に心におもいついたストーリー(フィクション)にもとづいて、被疑者を長時間拘束し密室で尋問(「取り調べ」)をつづけ被疑者を心理的に追い詰めたり心理的に誘導することで、犯罪を犯していない人にまで自白の強要(捜査機関の思い込みによる虚偽の自白の作文や署名の強要など)が行われ、その「自白」を絶対視して証拠を恣意的に解釈したり、捜査機関側が本物の証拠を隠ぺいするなどのことが行われ、冤罪を多数生んでいる[8]。本来、適法な捜査だけが行われていれば尋問は全て録画されていて何の問題もない。(アメリカでは警察の取り調べは録画されるようになっている。自白の状況が録画されていない自白や自白調書は無効である)。本来なら取り調べは全て100%録画されて公正さが確保されなければならないのだが、日本の捜査機関にはいまだに前近代的な風土が残っており、自白偏重で、問題だらけの尋問が行われているようで、100%の録画も行われないまま尋問が行われる状態がずさんに放置されてしまっていて、捜査官による不適切な行為が密室で行われ、多数の冤罪を生むような状態がいまだに放置されている[8]。日本におけるこの野蛮な状態を改善するには、取り調べは全て100%録画されていなければならない、とする規則が制定され、取り調べが100%録画されていない場合はたとえ「自白があった」と捜査官が言ったり、自白調書に署名があったとしても、それを自白としては認めない、とする裁判原則が確立され、この原則が完全に守られなければならない。そうしない限り、捜査官らは虚偽の自白の強要を続け、冤罪が無限に生じ続ける。

たとえば日本では捜査機関が痴漢冤罪を多数発生させていることはつとに有名であり、乱暴な捜査風土が社会問題にもなっている。映画監督の周防正行が取材を行い、日本の問題ある捜査風土を扱った映画『それでもボクはやってない』が2007年に公開された。日本の捜査機関は、人権軽視の体質が酷く、たまたま同じ客車内の近くに乗り合わせただけの人でも犯人と決めつけて密室に何日も何日も閉じ込めて、妻子などの家族と連絡をとることも、職場に連絡を一本入れることも一切許さず、密室に閉じ込められた当人が「愛する家族たちは、自分が行方不明になったと、もう何日も心配しているだろう」「同僚たちも行方不明になったと心配しているだろう。職場でも大問題になっているに違いない」「だが目の前の捜査官らが、連絡を1本入れることすら許さない」という極限状況に追い詰めておいて、「ここから出たければ自白しろ」などと脅して、捜査機関側が作文した文章に署名を強要して、犯罪をおかしていない人々まで強引に犯罪者にしてしまうのである。

たとえば障害者郵便制度悪用事件では、大阪地検の検事がやはり、たまたま自分の心に思い浮かんだストーリーにとりつかれ、当時厚生労働省の局長であった村木厚子を証拠も無いのに犯人だと決めつけ、あげくは証拠の改ざんまで行った(大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件

捜査に関する原則

適正かつ公平の原則

適正かつ公平の原則とは、捜査は公共の福祉を維持しながら個人の基本的人権の尊重を全うしつつ事案の真相を明らかにするものであるから、捜査権は公正誠実に実行され、個人の自由や権利を不当に侵害するものであってはならないという原則をいう[6]

任意捜査の原則

任意捜査の原則とは、捜査は基本的人権の尊重に配慮する必要があるという前提に基づいて人権に対する侵害の少ない形態を原則とすることをいう[6]。即ち、強制捜査(逮捕家宅捜索など)は最後の手段とせよ、ということ。

密行の原則

密行の原則とは、捜査は事件関係者の基本的人権を保障する趣旨からも、捜査内容の外部への漏えいによる証拠隠滅や犯人逃亡を防ぐ意味からも密行を原則とする[9]。ただし、捜査情報の一部を公開して広く国民の協力を求める場合もある[6]。(公開捜査)


  1. ^ a b c d e ブリタニカ国際大百科事典「捜査」
  2. ^ a b c 河上和雄 & 河村博 2012, p. 8.
  3. ^ 『日本大百科全書』【おとり捜査】
  4. ^ [https://kotobank.jp/word/%E9%81%95%E6%B3%95%E6%8D%9C%E6%9F%BB-1270868 コトバンク 違法捜査
  5. ^ 河上和雄 & 河村博 2012, p. 10.
  6. ^ a b c d 河上和雄 & 河村博 2012, p. 11.
  7. ^ a b 河上和雄 & 河村博 2012, p. 13.
  8. ^ a b 冤罪生む捜査風土 自白の絶対視は許されぬ
  9. ^ 河上和雄 & 河村博 2012, p. 12.
  10. ^ 石川才顕『捜査における弁護の機能』(日本評論社)
  11. ^ 井戸田侃『刑事訴訟理論と実務の交錯』有斐閣
  12. ^ 土本武司『犯罪捜査』弘文堂
  13. ^ 佐藤英彦『治安復活の迪』(立花書房)
  14. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. “被害届”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2021年8月23日閲覧。
  15. ^ 憲法31条,刑事訴訟法197条1項但書
  16. ^ 刑事訴訟法197条1項本文
  17. ^ a b c 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 235「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
  18. ^ 村瀬信也 & 洪恵子 2014, pp. 235–236「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
  19. ^ 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 236「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分
  20. ^ a b 村瀬信也 & 洪恵子 2014, p. 237「ICCの刑事手続の特質」高山佳奈子執筆部分






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