けん‐し【検視】
検視
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/23 01:01 UTC 版)
検視(けんし、英: Forensic Autopsy, Postmortem)は、犯罪の嫌疑の有無を明らかにするための刑事手続。
日本における「検視」は刑事訴訟法229条に基づいて施行される。
一般にアメリカ合衆国などにおける「Autopsy」は、日本における「検視から司法解剖」までの一括した概念であり、「検死」と訳される場合もある。
概念
「検視」とは、日本の法令用語上では「検察官、またはその代理人によって行われる死体の状況捜査のこと」と定義されている。司法解剖などの解剖は含めない。
なお、検死という言葉は日本の法令用語には存在しない。
法規
刑事訴訟法229条によって、変死者または変死の疑いのある死体(変死体や異状死体)の場合、検察官が検視を行う。また、同条2項によって検察事務官または司法警察員にこれを代行させることができる(司法警察員が行う検視は代行検視という)。
検視規則5条では、必ず医師の立ち会いを求め、死体を検分しなければならないとなっている。
業務
検視は、鋭敏な捜査感覚と法医学的な知識を要するため、一般に刑事調査官あるいは検視官と呼ばれる特殊な訓練を受けた司法警察員が検視をしているのが現状である。
一般に以下の通りとなる。
- 主治医などにより、死亡診断や検案が行われ、異状の有無が判断される。
- 異状死体と診断された場合、医師は医師法に基づき、24時間以内に所轄の警察署に届け出る。
- 犯罪に起因するものでないことが明らかである場合、警察官により死体見分(死体取扱規則)が行われる。それ以外の場合は検視が行われる。
- 一般に警察官によって検視が行われ、犯罪性の有無を究明される。同時に医師による検案が行われる。
- 犯罪性なしの場合、医師の死体検案によって死体検案書が作成される。なお、検案によっても死因が究明されない場合は遺族の同意の上で承諾解剖を行うか、監察医制度の地域では遺族の同意がなくても行政解剖を行って死因を究明することができる。
- 犯罪性ありの場合、必要に応じて刑事訴訟法129条に基づき、司法解剖へ移行する。
取扱
- 犯罪死体
-
死亡の原因が犯罪であることが明らかな死体、変死体、変死の疑いのある死体の場合、検視が必要である(刑事訴訟法229条)。警察による「変死体、変死の疑いのある死体」の取り扱いは、検視規則(昭和33年11月27日国家公安委員会規則第3号)にもとづいて行われる[1]。
- 変死体や変死の疑いのある死体を警察官が発見した場合は警察署長に報告し、さらに都道府県警察本部長、検察庁に報告する(検視規則2条、3条)。
- 警察官が検察官に代行して検視を行う場合、必ず医師の立ち会いを求めて検視を行う(検視規則5条)。
- 非犯罪死体
- 警察による「死亡の原因が犯罪でないことが明らかな死体」の取り扱いは、死体取扱規則(昭和33年11月27日国家公安委員会規則第4号)にもとづいて行われる[2]。
脚注
関連項目
検視
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「タマム・シュッド事件」の記事における「検視」の解説
検視の結果、男性が死亡したのは12月1日の午前2時頃と推定された。 「心臓は、大きさやその他どこの点でも普通で、...通常は視認できない脳の細かい血管がうっ血により容易に視認出来た。咽頭にはうっ血があり、食道は白濁した粘膜で表層が覆われており、中間部には小さな潰瘍片があった。胃はうっ血がひどく...十二指腸の下行部(第二部)にもうっ血がある。胃の中には血液が混じった食物もあった。両方の腎臓にもうっ血があり、肝臓は血管内に血液が過度に滞留していた。...脾臓は印象的な程大きく... 通常の3倍程もあり... 顕微鏡で見ると肝臓の小葉の中央が破壊されていることが判明した。 ... 急性胃炎による出血や、肝臓から脾臓及び脳までの広い範囲にうっ血があった」 検視により、男性の最後の食事は死の3,4時間前に食べたパスティであることが明らかになったが、病理学者ドワイヤー博士 (英語: Dr. Dwyer) が行った検査では、遺体から薬物を検出することはできなかった。博士は自然死でないことを確信し、バルビツール酸系の毒物か、可溶性の睡眠薬の可能性を疑った。しかし、毒物には大きな疑義も残っており、パスティに毒物が仕込まれていたとは考えられなかった。男性の身元や死因のみならず、誰も顔を見た者がいなかったため、11月30日の夕方にソマートン公園の海岸で生きているところを目撃された男性と遺体が同一人物なのかについてさえ、検視官は結論を得られなかった。スコットランドヤードも事件の捜査を支援したが、成果はほとんどなかった。男性の写真や詳細な指紋が広く世界中に出回ったが、身元の判明にはつながらなかった。 警察が身元を特定できないため、遺体は1948年12月10日に防腐処理を施された。警察によれば、分っている限りこのような処置が必要になったのは初めてのこととのことであった。
※この「検視」の解説は、「タマム・シュッド事件」の解説の一部です。
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