1985年の上院公聴会
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PMRCの夫人達は夫の力を利用して上院で「ポピュラー音楽の憂慮すべきコンテンツに関する」公聴会を開催させるように働き掛けた。公聴会は1985年9月19日に開催された。アル・ゴア(民主党の上院議員)とポーラ・ホーキンス(英語版)(共和党の上院議員)が支持側の証人として出席した。 反対側の1人目の証人:フランク・ザッパ(ミュージシャン兼音楽プロデューサー)はアメリカ合衆国憲法修正第1条の内容を読み上げ、PMRCの検閲の提案は実際には子供達のためにならず、大人達の市民的自由を侵害し、解釈と執行上の問題でそれを取り扱う裁判所を年中忙しくさせてしまい、まずい考えの無意味なものだと主張した。ブランク・テープ税の導入の提案者の一人である上院議員ストロム・サーモンドの夫人がPMRCのメンバーなのは偶然なのかという疑問点を提示した。また、雇われた俳優が役を演じる映画と違い、音楽の場合は基本的にミュージシャン自身の芸術作品として捉えられているので、その個人が汚名を着せられてしまうことになるという両者の違いを説明した。 反対側の2人目の証人:ジョン・デンバー(フォークロックミュージシャン)は「我々の社会、あるいはどこか他の世界におけるいかなる種類の検閲にも強く反対します」と決意を表明した。その後に彼自身の二つの苦い経験を語った。「ロッキー・マウンテン・ハイ(英語版)」がドラッグの歌だと誤解されてしまい、多くのラジオ局で放送禁止にされてしまった話と主演した映画『オー!ゴッド』の題名が主を連想させるとして広告の掲載が一部の新聞で拒否された話である。「拒否されているものが最も望まれることになり、隠されているものが最も興味深いものとなる」として検閲が逆効果になるとの見解を示した。 反対側の3人目の証人:ヘヴィメタルバンド、トゥイステッド・シスターのディー・スナイダーは最初に「私は30歳の既婚者で、3歳の息子がいます。クリスチャンとして育ち、今でもこの教えを守り続けています。信じられないかもしれませんが、私は煙草も酒もドラッグもやらない。ヘヴィメタルに分類されるトゥイステッド・シスターというロックンロールバンドの曲を演奏するし、作詞もしている。私は先に述べた自分の信念に基づいて作詞している曲を誇りに思っています」と自己紹介をした。スナイダーもデンバーと同様に彼の音楽が誤って解釈されていると感じていた。ティッパー・ゴアはバンドの曲である「アンダー・ザ・ブレイド(英語版)」がレイプ、ボンデージ、サドマゾヒズムを称賛する内容だと非難する記事を以前、彼の故郷の新聞に投稿していた。しかし、これは断片的かつ恣意的に歌詞を引用しており、実際には差し迫った手術について書いた曲だと反論した。「この曲のサドマゾヒズム、ボンテージ、レイプはゴアさんの心の中のみにあるのです」と述べた。続いて 「ウィアー・ノット・ゴナ・テイク・イット(英語版)」は不愉快な15曲のリストにも含まれており、V(バイオレンス)のコンテンツとして評価されているが、リストの対象となるのは歌詞についてのみであるのに、歌詞には暴力的な表現は一切入っておらず、ビデオ映像にある過激な表現と混同している可能性を指摘した。最後に、ニューヨークで開催された歌詞論争に関する公開フォーラムに出席したティッパー・ゴアが「子供達が着ているTシャツを見つめ、トゥイステッド・シスターと手錠を掛けられて大の字になっている女性を見て下さい」との声明を発表しているが、これはあからさまな嘘であり、このタイプのシャツを自分達が販売したことは無いと否定した。バンドに対する、自分が知る限りのこの3つの中傷すべてが事実無根の話だと述べた。「判断が出来る者が他に誰一人として存在しないので、子供を守るすべての責任は私と妻が負わなければならない」と結論付けた。 フランク・ザッパは1985年に公聴会のやり取りの音声記録をサンプリングした「ポルノ・ウォーズ」を収録したアルバム『ミーツ・ザ・マザーズ・オブ・プリヴェンション』を発売した。このアルバムのカバーはRIAAの警告ステッカーのパロディを特色とした。彼の亡き後の2010年には音声記録の完全版が収録されたアルバム『コングレス・シャル・メイク・ノー・ロウ...(英語版)』が発売されている。上院議員のアーネスト・ホリングス(英語版)、スレイド・ゴートン(英語版)、アル・ゴア、ポーラ・ホーキンスの音声も聞き取ることが出来る。
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