18世紀の改革
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/11 00:06 UTC 版)
「近世イギリス海軍の食生活」の記事における「18世紀の改革」の解説
18世紀半ば以降、食事や衛生に関しては、様々な改革が行われるようになった。船医の提案により、特に病人用に新しい味覚が追加された。砂糖、干しブドウ、ニンニク、その他スパイス、そして、ランの球根で作ったサロップがあった。これは、壊血病に効き目があると言われていた。壊血病の治療には、ライムのジュースも用いられ、そのためイギリス海軍の乗員はライミーズというあだ名をつけられた。ジョージ3世やジェームズ・リンドが推薦した塩漬けや酢漬けキャベツも、新鮮な野菜の役目を果たした。ジェームズ・クックもこのキャベツを航海に持ち込んだ。また、肉や野菜の缶詰の出現は画期的だった。缶詰は1815年の海峡艦隊において初めて採用された。 その後、軍艦には酒保が設けられるようになり、バター、ジャム、ケーキなどの嗜好品が扱われた。 それまで確保が難しかった真水に関しても、19世紀になって、タンクに雨水を貯え、過マンガン酸カルシウム(カルキ)を入れて持ちをよくした。また、ブリストルの水は、生石灰が少量含まれていたため長持ちした上に、船員は便秘にならず、赤痢も防げて一石三鳥だった。 18世紀以後の食料表を比較すると、時代が下るごとに、野菜や嗜好品が増えているのが分かる。 1729年の軍艦の食料表 パン 1日当たり1ポンド ビール 1日当たり1ガロン 牛肉 火・土曜日に2ポンドずつ 豚肉 日・木曜日に1ポンドずつ えんどう豆 日・水・木・金曜日に1/2パイントずつ オートミール 月・水・金曜日に1パイントずつ バター 日・水・土曜日に2オンスずつ チーズ 月・水・金曜日に4オンスずつ 1867年の軍艦の食料表 1日当たりビスケット 1-1/4ポンドまたは柔らかいパン 1-1/2ポンド酒 1/8パイント 砂糖 2オンス チョコレート 1オンス 紅茶 1/4オンス 1週当たリオートミール 3オンス からし 1/2オンス こしょう 1/4オンス 酢 1/4パイント 1日当たり(それが入手出来るかぎり)生肉 1ポンド 野菜 1/2ポンド 1907年の軍艦の食料表 1日当たりビスケットまたは柔らかいパン1-1/4ポンド ジャム 2オンス 酒 1/8パイント コーヒー 1/2オンス 砂糖 3オンス コーンビーフ 4オンス 普通のチョコレート 3/8オンス、そのうち溶解チョコレート 3/4オンス 濃縮ミルク 3/4オンス 紅茶 3/8オンス 1日当たり塩 1/4オンス 1週当たりからし 1/2オンス こしょう 1/4オンス 酢 1/4オンス 生肉 3/4ポンド 野菜 1ポンド 単位:1ポンド=16オンス=453グラム 1ガロン=4クオート=16パイント=4545cc 一方、ライバル関係にあったフランスでは、17世紀の半ばに、軍艦の改革が行われ、乗員の居住性が増した。レパントの海戦当時のガレー船では、天候が悪くなれば、船内の状態はかなり劣悪なものとなった。またこういう船には、病気や栄養失調が蔓延し、各自のハンモックもなかった。フランス軍艦は、日光や外気を取り入れる構造になっており、当時のイングランド軍が、水っぽいシチューで飢えをしのいでいた同じ時期に、レンガの竈で温かい食事とパンが整えられ、腐りかけた肉や堅パンとは無縁だった。遠洋航海の場合、フランス軍はサラダ用の野菜を、プランターで作っており、少なくとも、将校の食事に関しては、イングランドのそれよりはるかに条件は良かった。イングランド軍では、かつてサー・リチャード・ホーキンス (Richard Hawkins) が、壊血病の治療薬として評価したはずのオレンジやレモンも無視された。これらは、のちにジェームズ・クックによって再評価された。
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