虎
『国性爺合戦』(近松門左衛門)2段目「千里が竹」 大明国の千里が竹に迷い入った和藤内は、猛虎と出会い格闘する。力は互角であったが、付き添う母の教えで伊勢大神宮の御祓を突きつけると、ようやく虎はおとなしくなる。そこへ唐人たちが押し寄せるが、猛虎が和藤内母子に味方するので唐人たちは降参し、和藤内の家来になる。
『水滸伝』百二十回本第23回 景陽岡に人喰い虎が出るゆえ、通行の旅商人らは昼間に限り、大勢で隊を組んで通るべし、との告示が出される。酔った武松が夕暮れ時に1人で景陽岡の峠を登り、襲いかかる虎を押さえつけて拳骨で滅多打ちし、殴り殺す。
『水滸伝』百二十回本第43回 李逵は、盲目の老母を梁山泊に迎えて安楽に暮らさせたいと考え、夜、老母を背負い沂嶺の山越えをする。ところが、李逵が水を汲みに行っている間に、老母は虎に食い殺される。李逵は怒り、老母の腿をしゃぶる2匹の子虎と、その親の2頭の大虎を、朴刀をふるって殺す。
★2.絵の虎。
『傾城反魂香』(近松門左衛門)「土佐将監閑居の場」 大虎が現れて村々を荒らす。土佐将監光信が、「これは名手の描いた虎の絵に魂が入って、抜け出たものだ」と見抜き、「その証拠に足跡がないはず」と言う。百姓たちが地面を見回すと、確かに足跡がない。将監の弟子修理之助が、「絵ならば筆先で描き消そう」と言って、虎を消してしまう。
『南総里見八犬伝』第9輯巻之27第143回~巻之30第148回 巨勢金岡(こせのかなおか)が掛け軸に描いた虎が、絵から抜け出て人を襲う(*→〔瞳〕1)。犬江親兵衛が虎の両眼を矢で射て、殴り殺す。管領細河政元が死骸を検分に行き、家来らが、虎の矢を抜き四足を合わせて縛ろうとすると、忽然として虎は姿を消す。掛け軸を開くと、虎はその中に戻っていた。
*絵の虎を縛れとの難題→〔難題問答〕1aの『一休と虎』(昔話)。
『淮南子』「俶真訓」第2 昔、公牛哀は変化の病にかかり、7日目に虎になった。兄が戸口から様子をのぞきに入ると、とびかかって殺してしまった。
『山月記』(中島敦) 李徴は詩人を志すが文名上がらず、やむなく地方官吏となる。鬱屈した思いを抱く彼は、ある夜旅宿で発狂し、闇の中へ駆け出して人喰い虎と化す。翌年、李徴は虎の身のまま旧友に再会し、過去を述懐する。
『太平広記』巻430所引『野人閑話』 不孝不義の男がおり、帰りの遅い彼を母親が市門に出迎えたが、男はかえって母親を罵った。男はその後市門を出て路上に坐し、一声叫んで着物を脱ぎ、赤虎に変わった。王が臣下に命じてこれを射殺させた。
『太平広記』巻432所引『原化記』 南陽山に住む男が熱病にかかり、「お前は虎になる」と告げられる。翌日、病気が治って外出すると、歩いているうちに虎に化す。不思議な老人が現れ、「王評事という人を食えば人間に戻れる」と教えるので、男は王評事を襲って食い、人間に戻る。前後数日間の出来事と思われたが、家に帰ると、すでに七~八ヵ月が経過していた→〔過去〕2。
★4.虎に変身する術。
『捜神後記』巻4-7(通巻47話) 魏の時代、尋陽県の北の山中に住む蛮族は、人を虎に化す術を持っていた。ある男がこの術を習い、虎の絵と呪文を記した紙を髻(もとどり)におさめ、虎に変じて、妻と妹に見せた。男の主人がこれを知り、男を酔わせてその秘法を聞き出した。
『高岳親王航海記』(澁澤龍彦) 貞観7年(865)1月。67歳の高岳親王は、広州から船で天竺へ向かう。途中、親王は真珠を呑み込んだために、喉が痛み声がかすれて、自らの死が間近に迫ったことを悟る。親王は、身体を羅越国の虎に食わせることによって天竺へ到達しよう、と考える。虎は親王を腹中にして、天竺までひた走る。親王の死は、貞観7年の末と推定されている。
『ちびくろサンボ』(バナーマン) ちびくろサンボが、赤い上着に青いズボン、紫の靴に緑の傘、といういでたちで、ジャングルへ散歩に出かける。虎が次々に現れてサンボを食べようとするので、サンボは最初の虎に赤い上着、2番目の虎に青いズボン、3番目の虎に紫の靴、4番目の虎に緑の傘を与える。虎たちはそれぞれ、「これで俺様は、ジャングルでいちばん立派な虎になったぞ」と喜んで、どこかへ行ってしまう→〔周回〕3。
★7.虎の皮。
『河東記』(唐・作者不詳)7「山林を慕う妻」 ある男が、都から漢州(四川省)へ赴任する道筋で、雪に遭って一軒家に宿を請う。その家には老夫婦と1人娘がいたが、男は娘を気に入り、妻として任地へ連れて行く。男と妻は仲むつまじく、任地で1男1女をもうけた。任期が終わり、一家は都へ帰る旅の途中、妻の実家に立ち寄る。そこにはもう父母の姿はなく、妻はさめざめと泣いた。そのうちに妻は1枚の虎の皮を見つけ出し、「これがまだここにあったのか」と笑って、その皮を着る。妻は虎に変じ、夫と子供2人を残して、どこかへ走り去った。
*羽衣を見つけ出した天女が、夫や子供を残して天に昇った→〔水浴〕1aの『近江国風土記』逸文。
*虎に見えた石→〔石〕9cの『捜神記』巻11-1(通巻263話)。
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