『ちびくろサンボ』
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「ヘレン・バンナーマン」の記事における「『ちびくろサンボ』」の解説
イギリス陸軍の軍医だった夫に同行し、インドのタミル・ナードゥ州マドラス滞在中に自分の娘たちのために私家版として作ったのがThe Story of Little Black Sambo(『ちびくろさんぼのおはなし』)である。この絵本をはじめ、作品の多くの主人公が、添えられたイラストからも、南インド、もしくはタミルの子どもだと推測されるのはこのためである。 彼女の描いたイラストや物話自体には人種差別的な強調は含まれておらず、概して子どもの利巧さや発想の才を褒める物語が多い。しかし、本来私家版として作られた絵本を商業的な出版とする過程で著作権の混乱があり、アメリカ合衆国ではオリジナルとは異なるイラストによる異本が多数出版され、その中には主人公をアフリカ系の黒人のように描いたものも多かった。また、「サンボ」という主人公名は、アメリカでは黒人に対する蔑称でもあったため、これらの絵本はしばしば世界各地で発売禁止になったり、図書館での閲覧が制限されたりすることがあった。 日本で1953年(昭和28年)に出版された岩波版『ちびくろ・さんぼ』もアメリカで1927年(昭和2年)に出版されたフランク・ドビアスのアフリカ黒人風のイラストを用いたものであった。そのためもあって、1988年(昭和63年)に岩波版を含むほとんどすべての『ちびくろ・さんぼ』が自主的に絶版とされた。その後、ヘレン・バナマン自身によるオリジナルは『ちびくろさんぼのおはなし』(灘本昌久訳)として1999年(平成11年)に径書房から出版された。旧岩波版『ちびくろ・さんぼ』は、2005年(平成17年)に瑞雲舎によって『ちびくろ・さんぼ』(イラストはフランク・ドビアス)『ちびくろ・さんぼ2』(イラストは岡部冬彦)として復刊された。
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