日本における復刊
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1989年(平成元年)、一斉絶版措置に反対して『ブラック・サンボくん』(山本まつよ訳・阪西明子絵、子ども文庫の会)が出版されたが、大手の取次店での取扱いがなされなかったため、一般にはほとんど知られないままであった。 1997年(平成9年)10月、当時信州大学教育学部助教授の守一雄は「森まりも」という筆名で『チビクロさんぽ』という改作を北大路書房から出版した。この改作本は原作のストーリーはそのままに、主人公を「サンボ」から「チビクロ」という名前の犬に変更し、その犬が散歩するという設定にすることで差別問題を回避したものであった。また、原作者ヘレン・バンナーマンの著作権継承者であるイギリスのRagged Bears Publishing社との契約により著作権の問題も解決されていた。この改作絵本には改作者の守一雄による解説小冊子が付録として付けられていた。それでも、本作出版後には、岩波版絶版のきっかけとなったといわれる市民団体「黒人差別をなくす会」から北大路書房への抗議が寄せられた。両者のやりとりは守一雄のウェブサイトの該当ページに公開されている。『チビクロさんぽ』出版をめぐっては、東京大学大学院教育学研究科教授市川伸一による『チビクロさんぽ』の出版は是か非か』という改作者らを交えた心理学者による電子討論の記録が出版されている。 1997年から1998年にかけては、主人公はアフリカ系黒人のまま名前をSamとしてストーリーも改変したSam and the Tigers(1996、邦訳『おしゃれなサムとバターになったトラ』)や、イラストを本来のインド風にして主人公とその家族を ババジ(Babaji)、ママジ(Mamaji)、パパジ(Papaji)としたThe Story of Little Babaji(1996、邦訳『トラのバターのパンケーキ』)というアメリカでの改作の翻訳版の出版も相次いだ。 1999年(平成11年)5月には径書房から、『ちびくろさんぼのおはなし』が原著と同じ内容、装丁、タイトルで復刊され、2カ月で8万部を売った。訳者は灘本昌久。また彼の著書には『ちびくろサンボ』擁護の立場に立ってその経緯や差別論に関する議論をまとめた『ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ』がある。灘本昌久の報告によると、絶版騒動の際に『ちびくろサンボ』の刊行を批判していた部落解放同盟中央本部のある、部落解放センターの書籍売場にこの2冊が平積みされていたという。 2005年(平成17年)6月に著作権の切れた岩波版(光吉夏弥訳)の『ちびくろ・さんぼ』が瑞雲舎から17年ぶりに復刊され、5カ月で15万部を売った。ただし、岩波版は原作でなく、黒人の人種的特長を誇張で問題になっているフランク・ドビアスの絵柄を基にした問題のあるものでありこの絵を使ってのちびくろサンボの復活にはロサンゼルス・タイムズ紙をはじめ、海外のメディアは批判的にこの復刊を伝えたが[要出典]、かつての絶版騒動の頃と違い、国内のマスコミが静観したこともあって、特に大きな問題となっていない。岩波書店はこの復刊を編集権の侵害として抗議したとされている。また、旧岩波版が抱えていた著作権問題は新しい瑞雲舎版でも解決されないままである。瑞雲舎は、その後も、もともとは岩波版1冊に収められていた、もうひとつのストーリーを別冊にして『ちびくろ・さんぼ2』、ヘレン・バンナーマンによる別の絵本を原作としたストーリーを『ちびくろ・さんぼ3』と銘打って出版。ただし、主人公が女の子から男の子になるなど、内容面はほとんど違う物語といえる程度に改変されている。 2008年(平成20年)6月、径書房が岩波版『ちびくろ・さんぼ』のもとになった、アメリカ版原書を忠実に再現した『ちびくろサンボ』を出版。岩波版では、サイズなどの規定によって、まるまるカットされたり、切り貼りや左右反転といった形で流用されていたイラストも、原形のまま掲載している。
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