金魚電話ボックス「盗作」裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 14:15 UTC 版)
「京都芸術大学」の記事における「金魚電話ボックス「盗作」裁判」の解説
「金魚電話ボックス盗作裁判」も参照 2011年に京都造形芸術大学のウルトラファクトリー(ディレクターはヤノベケンジ)にて京都造形芸大在学生グループ6名らが教授銅金裕司氏の指導のもと、電話ボックスに金魚を入れた作品「テレ金」が制作され「おおさかカンヴァス推進事業」の公募に入選。同年10月に大阪市内にて展示へ。 2012年3月、奈良県のイオンモール大和郡山に続き、大和郡山市で開催されたイベントで再展示。同年8月、福島県いわき市の現代美術作家山本伸樹が、自身の作品「メッセージ」に酷似した「テレ金」が昨年に引き続き出品されることに対して出品停止と内容変更をおおさかカンヴァス事務局に抗議し、大学側は出品を辞退。 2013年3月、地域団体K-Poolにより「第53回 大和郡山お城まつり」で「テレ金2013」が展示され、その終了後に作品の部材が「金魚の会」(大和郡山市)に譲渡される。同年10月に同会により「金魚電話」として展示される。同年12月、山本は金魚の会の代表者、及びイベントの実行委員長に著作権の侵害があるとして抗議した。 しかし2016年2月、金魚の会から「金魚電話」の部材を譲り受けた同会元代表(以下K氏)と柳町商店街有志が大和郡山市内に「金魚電話ボックス」として作品を常設展示した以後は逆に山本が「パクリ」であるといった誹謗中傷をうけることもあった。引き続き山本は管理者である柳町商店街側に抗議するが事態は改善しなかった。 2017年2月に円満な解決を目指して大和郡山市の隣町である奈良市在住の作家寮美千子が山本の代理人として商店街理事長と交渉を開始。同年6月、口頭での合意に至り「金魚電話ボックス」は、山本の「メッセージ」が原作であることを明記し、作品を修正(緑色の電話機に交換するなど)した上で公認作品として再スタートをきることになった(費用はすべて山本がもつこととした)。しかし実際は8月に仮の説明板を一時的に設置したのみで、10月に柳町商店街が一方的に合意を破棄し説明板を撤去した。そこで山本は大和郡山市に仲裁を求め代理人が市長、副市長と面会。市は商店街とも交渉し山本と双方協定書を示したが不調に終わった。 2018年4月、商店街側は作品を撤去しつつ「山本の著作権は侵害していない」「裁判になったら断固として戦う」と主張。同年9月、山本は商店街他に訴訟を提起。「金魚電話ボックス」(訴状では被告作品として紹介され、テレ金、金魚電話も経緯説明で表記あり)が自身の作品の著作権を侵害したとして、2014年から2018年まで市内に展示した商店街側に330万円の損害賠償などを求め訴訟を起こした。 京都造形芸大側は「当時1年生であった6名は平成4年(1992年)前後の生まれであり、山本氏が発表された1998年の作品を、先行作品のリサーチにおいても気づいておらず「依拠性(著作権侵害)」という点では、参照できる状態ではなかった」とし、「もちろん、先行作品のリサーチでそこに及ばなかったことへの指導上の課題、主張の客観性という点でのご意見はあるかと思います」とした上で、指摘されている海外も含めた他の作品と「本質的な特徴の同一性」を有するとは言い難いとした。 2019年の一審判決は、山本作品を「発想はアイデアにとどまり、著作権保護の対象とならない」とした。しかし、2020年1月14日に大阪高裁にて控訴審判決がされた。高裁判決は、受話器から気泡を出す表現について、音声を通すための受話器に空気を通し、気泡を出すことによって通話を想起させる表現は創作性があり、作品全体が著作物と認められると判断。類似の作品をつくった商店街側の著作権侵害を認定、山田陽三裁判長は著作権侵害を認定し、山本の訴えを退けた一審・奈良地裁判決を変更し、商店街側に計55万円の支払いなどを命じた。判決によると、組合側は山本が2010年に発表した作品と表現面で同一性のあるオブジェを設置し、著作権や人格権を侵害したとした。 判決後、大阪市内で記者会見した山本は「(著作権侵害の)1つのガイドラインを示せた。完全勝訴でほっとしている」、「作家として、作品の著作物性を認めてほしいと起こした裁判だった。ほぼ全面的に私の主張を認めて頂いた完全勝訴。今後もこの作品を色々な形で展開していきたい」と話した。一方、商店街組合側は「上告の有無を含め、対応は今後調整する」とコメントした。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)はコメントしていない。
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