連続主義とは? わかりやすく解説

連続主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 16:37 UTC 版)

チャールズ・サンダース・パース」の記事における「連続主義」の解説

「連続主義」(synechism) は、パースギリシア語のσυνεχής(シュネケース:「連続的」)から案出し造語である。彼自身説明によれば、連続主義は何らかの絶対的な形而上学的教説というよりは、我々がいかなる仮説編み出し検討すべきかを規定する論理学規範原理である。平たく言えば、連続主義はあらゆる物事連続性見出していこう、という考え方である。 ここで「連続性」という概念をどう理解するかが問題であるが、パース自身生涯通して数学における連続性概念について思索深めていった経緯があり、一つ固定的な捉え方があるわけではない。ただ、1895年以降彼の思考成熟していくにつれて一つ明確なモチーフ浮かび上がってくる。それは、「真の連続体」(true continuum) は、いくら無限に要素があろうと、単なる集合還元することはできない、という発想である。ゲオルク・カントールは、1874年論文連続体実数全体集合同一視したが、パースはこれを「疑似連続体」(pseudo-continuum) と呼んで斥けている。彼によれば、真の連続体は、集合濃度によって決まるのではなく要素同士繋がり方によって決まる。そして真の連続体特徴的な要素繋がり方は、「直接的連結」(immediate connection) だと彼は言う。二つ要素、AとBが、ある意味において同一であるとき、AとBは直接的連結の関係にあると定義する。しかし、この「ある意味において」が問題である。 ケンブリッジ連続講義第3講義「関係項の論理学」に、この問題解いてくれそうな例がある。連続的な線に点を書いたとする。次にその点の箇所で線を切断し左側領域Lと右側領域Rを作るそうすると元の点は二つの点になる。一つはLの右端に、もう一つはRの左端にできる。ここで再度二つの端をくっつけると、二つの点はまた一つに戻る。 この思考実験示しているのは、二つ要素、AとBは、同一ありながら潜在的に異なることが可能だということである。もし外部から不連続性課されると、AとBの違い顕わになるような順序性存在していると言える。しかし不連続性導入される以前は、AとBは異なとは言えない。これがパースにとって、真の連続体の最も重要な特徴である。すなわち、それは個体要素集まりではなく、むしろ個体書き込むことのできる存在者なのである連続体要素間で関係が成り立つのでは決してなく、連続体そのものが関係の構造というわけである。個体性は、あくまで外部的確定結果生まれるのであって切断前においてAとBが同一であるか異なるかという問い厳密には意味を成さない。「他性 (otherness) や同一性(identity)の適切な定義は個体世界前提とする。個体から構成されていないような世界、すなわちあらゆる部分同種の部分から成るような世界においては個体認められる限りにおいてのみ他性や同一性成り立つ」。 以上、パース数学的連続性概念見てきたが、この概念が、数学外の世界いかなる意味を持つのかと疑問思われるかもしれない。ここで重要なのは、パースが「一般概念」を真の連続体同一視するということである。「関係項の論理学照らせば、一般者 (general) は正確に連続体であることが分かる。したがって連続性実在性主張する教説は、スコラ哲学者たちが実念論 (realism) と呼んだ教説と同じである」。真の連続体が、可能な要素空間であるのと同様に一般概念は、可能な具体的事例空間指定するさて、連続体一つ性質に、どの二つ要素取っても、その間要素が必ず存在する、という性質がある(これを「稠密性」と呼ぶ)。一般概念場合同様に、どの二つ具体的事例取っても、その間性質を持つような事例考えることができる。例えば「」という概念場合、「黒い猫」と「茶色」の間の性質を持つ「黒茶色」を考えることができる。重要なのは、どれだけ多く個体集めても、決し一般概念尽くすことはできないという点である。真の連続体が点の集合還元できないのと同様に一般概念もその個々体現事例還元することはできないのである実念論)。 もちろん、二つ具体的事例中間の性質を持つような事例が、現実存在するとは限らない例えば「」と「」は一見したところ、全くかけ離れている。しかし、それらが互いに完全に切り離され概念だと考えると、我々の知識はそこで止まってしまう。「」と「」との間には確かに不連続性があるが、その不連続性絶対的ではなく、より高次連続性に対して相対的であると考えるべきである。かくして、その二つ概念包括する高次類概念として「哺乳類」という概念編み出され、我々の切り離され知識統合される。これがすなわち連続主義の持つ規範性である。つまり連続主義は、一見全く性質異な二つのものがあったとしても、それらが互いに切断されていると考えるのではなく何らかの隠れた関係が存在するという前提探究せよ、と命じ発見法仮説である。 パース挙げる例に睡眠覚醒というのがある。我々は普通、起きている状態と寝ている状態は全く異なる状態だと考えがちであるが、実際は、我々が寝ているときも、我々が思っているほど寝ているわけではなく、また我々が起きているときも、我々が思っているほど起きているわけではない、と彼は言う。「我」と「汝」の違いについても同様である。連続主義者は、「私は完全に私であり、あなたではない」と言ってはいけない。また生と死連続的であり、あくまで程度の差だと彼は述べている。 これらの例からも分かるように、連続主義はあらゆるものの本質的同一性説く考え方であるが、これは、先に述べた真の連続体特徴とも関わっている。不連続性課される以前は、個々要素同一性について云々することが不可であったのと同様に一般概念においても、個々具体的事例は、現実化以前全体の構造の中でいわば「融け合って」いるのであるまた、科学的探究とは、個々具体的な事物出来事理解可能にしていく過程であるが、何かを理解するとは、それを一般概念特殊なケースにすることであるから科学とは、個々具体的事例一般概念包摂していくプロセス捉えることができる。そして一般概念連続体だとすれば科学的探究とは、個々具体的事例連続体包摂していくプロセスということになる。これがパースにとっての「最高善」(summum bonum) である。宇宙進化究極目標は、あらゆるものが、一つの完全な連続体として結晶化することである。我々人間は、その宇宙進化極小一部担っていると彼は考えていたわけである。

※この「連続主義」の解説は、「チャールズ・サンダース・パース」の解説の一部です。
「連続主義」を含む「チャールズ・サンダース・パース」の記事については、「チャールズ・サンダース・パース」の概要を参照ください。

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