連続並進対称性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 08:16 UTC 版)
「並進演算子 (量子力学)」の記事における「連続並進対称性」の解説
「ネーターの定理」も参照 まず「全ての」並進演算子が系について対称である場合を考える。以下で見るように、この場合では運動量の保存が起こる。 たとえば宇宙全体の全ての粒子と場を記述するハミルトニアンを ^H、宇宙全体のすべての粒子と場を同時に同じだけシフトする並進演算子を T ^ ( x ) {\displaystyle {\hat {T}}({\boldsymbol {x}})} とすると、これは常に対称である。^H は宇宙全体の完全な物理法則を記述し、場所に依存しない。その結果、運動量の保存が宇宙全体で成り立つ。 一方で、^H と T ^ ( x ) {\displaystyle {\hat {T}}({\boldsymbol {x}})} はただ一つの粒子について言及すると考えられる。このとき並進演算子 T ^ ( x ) {\displaystyle {\hat {T}}({\boldsymbol {x}})} が厳密に対称であるのは、粒子が真空中で孤立しているときのみである。それに対応して、1粒子の運動量は通常は保存しない(粒子が他の物質に衝突したときに変化する)が、真空中で孤立しているときは保存する。 運動量保存則とのつながりは次のような考えによるものである。全ての並進演算子が系で対称である(つまり全て ^H と交換する)と仮定する。運動量演算子が無限小並進演算子の和で書けるため、このとき ^H は運動量演算子とも交換しなければならない。 このことはエーレンフェストの定理から得られる(運動量演算子 p ^ {\displaystyle {\hat {\boldsymbol {p}}}} が時間に依存しないため)。 [ H ^ , T ^ ( x ) ] = 0 ⇒ [ H ^ , p ^ ] = 0 ⇒ d d t ⟨ p ^ ⟩ = i ℏ [ H ^ , p ^ ] = 0 {\displaystyle {\begin{aligned}&\left[{\hat {H}},{\hat {T}}({\boldsymbol {x}})\right]=0\\&\Rightarrow [{\hat {H}},{\hat {\boldsymbol {p}}}]=0\\&\Rightarrow {\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} t}}\langle {\hat {\boldsymbol {p}}}\rangle ={\frac {i}{\hbar }}[{\hat {H}},{\hat {\boldsymbol {p}}}]=0\end{aligned}}} つまり系のハミルトニアンが連続並進に対して不変であれば、系は運動量保存則を持ち、運動量演算子の期待値は一定となる。これはネーターの定理の一つの例である。
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