軟質ポリウレタンフォーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 08:23 UTC 版)
「発泡プラスチック」の記事における「軟質ポリウレタンフォーム」の解説
連続気泡型で柔らかい軟質ポリウレタンフォーム(軟質PUF)は、開放状態の気泡を持ち、圧縮に対して極めて柔らかく、また復元性を持つ。 一般的な発泡倍率は10 - 60倍、見掛けの密度は16 - 100kg/m³。第二次世界大戦後にアメリカでPURへの関心が深まり、フォームの研究が盛んになった。1957年頃にはポリエーテルの実用化がポリウレタンフォームのコストダウンを実現し、用途が急速に拡大した。1958年にデュポンがフロンガス発泡法を確立したが、後の技術開発によって脱フロンが実現している。 原材料 ポリウレタンフォームは、大きくポリエーテル系とポリエステル系に区分できる。ポリエーテル系は化学構造がランダムで、弾性に優れ、加水分解性が低く、コストが低い。ポリエステル系は極性カルボニル基や水素結合の量が多く、気泡径の調整が容易で、機械的性質や耐薬品性などに優れる特徴を持つが、加水分解を起こしやすい。 ポリエーテル系フォームの原料は、トリレンジイソシアネート(TDI)-80と分子量3000のポリエーテルポリオールが標準的に使用される。フォームの弾性を上げるにはイソシアネートに変性TDIやTDI/ポリメリックMDI(クルードMDI)混合物などを併用し、ポリオールも分子量の高いタイプやグラフト・共重合ポリオールまたはポリマーフィラー分散ポリオールなどを併用しつつ、架橋剤の選択なども工夫が施される。これにより、ボールリバウンド率50%以上の弾性フォームを得ることも可能となる。密度を高めるにはイソシアネート・ポリオールの選定以外にフィラーを加える手法もあり、逆にソフトさを追求して密度を下げるには発泡助剤の使用などが挙げられる。ポリエステル系フォームは、TDI-80、TDI-65、分岐ポリエステルポリオールなどの原料を用いる。添加剤としては、気泡を整えるシリコーン、触媒類、また着色用染料・顔料や難燃剤、強化フィラーなどを用いる場合がある。 発泡には水と発泡助剤が使用される。開発当初は発泡時の内部温度を低減しスコーチ(部分焼け)を防ぐ効果からトリクロロフルオロメタン(フロン-11)が補助的に使用されていたが1995年を最後に使用が禁止され、またこれに代わった塩化メチレンも使われなくなり、不燃性を持つ低沸点の化合物の利用と空気冷却など製造工程での工夫が施され、フロン類の全廃が完了している。 製法・性能・用途 注型発泡成形法のうち、発泡製造体(スラブ)を後加工するブロック法と型内で発泡成形するモールディング法が用いられる。ブロック法は工程紙上にミックスした原料を吐出して自由発泡させ、幅1-2m高さ0.3-1mの断面を持つ角状またはカマボコ状の塊状フォームを短尺では2m程のブロックを、連続的には60m程度の長い発泡品を製造する。これには、二次加工時のロスを減らすために、上面に生じる冠状の表面荒れ低減や一定の断面形状を得るよう様々なプロセスの工夫が為されている。裁断やプレス成形など二次加工を前提とするブロック製のラブフォームは弾性やクッション性などの柔らかさ、また濾過性や吸音性などを特徴とする。家具・寝具類またはスピーカー・ヘッドフォンなどのクッションやマット、衣類関連のパッドやインソール類、家電機器や産業機器類の吸音・断熱材またはフィルターなど、また農業分野の水耕マットや培地など、広い範囲で使用される。 型の中で発泡させるため形状が複雑な製品を高い寸法精度で大量に生産できるモールディング法は、キュア工程の温度によってホットキュアとコールドキュアに分けられる。ホットキュアは150 - 300℃で5 - 15分ほどプレキュアを行い金型温度25 - 50℃程度のアルミキャストで成形する。金型に多数のベントホールを設ける必要があるが、型抜き後のクラッシング(冷却後の収縮を避けたり、独立気泡を連続気泡化するためにローラーなどで圧縮する工程)を必要としない。コールドキュアのプレキュアは80 - 110℃と低く時間も5分以下に設定可能な上に、金型のベントホールも少なくできる。しかし金型のクランプは高くしなければならず、クラッシング工程も必要になる。モールディング法フォームは弾性に優れ、硬度/密度比が大きい特徴を持つ。製造時に複数の原料を注入できる設備では、フォームの特定部位の硬度を変えることも可能となる。またファブリックなど表皮カバーを一体成形をする製法もある。用途は乗り物のシートや自転車のサドルなど、また家具のクッション類、枕などに利用される。
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