軟鋼
鉄中の炭素量が約2%以下を炭素鋼といい、炭素量により炭素鋼の機械的性質が大きく変化するために便宜的に0.25%以下を軟鋼または低炭素鋼、0.25~0.60%を中炭素鋼、0.60%以上を高炭素鋼と大別している。低炭素鋼は、引張り強さが5MPa以下で成形性が良好なため、あまり強度が要求されない鋼板、線釘、条材、リベットなど多方面で多量に使用される。
炭素鋼
(軟鋼 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/03 05:46 UTC 版)
炭素鋼(たんそこう、carbon steel)とは、鉄と炭素の合金である鋼の一種で、炭素以外の含有元素の量が合金鋼に分類されない量以下である鋼である[1]。加工が容易で廉価なので一般的によく使用される鉄鋼材料である[2]。
組成
炭素鋼は鋼の一種であることから、鋼と同様、炭素鋼の炭素含有量(質量パーセント濃度)は0.02 - 2.14%の範囲である[3]。炭素のほか、珪素・マンガン・リン・硫黄が含まれるが、これらは意図的に添加されたものではなく、製造時に残った物である[4]。これらの元素の量が炭素よりも多い場合もあるが、そのような場合でも炭素が鋼の性質に最も影響するので、炭素鋼と呼ばれる[5]。
炭素鋼は含有されている炭素量が多くなると、引張強さ・硬さが増す反面、伸び・絞りが減少し、被削性・被研削性が悪くなる。また、熱処理を施すことにより、大きく性質を変える事が出来る[6]。炭素鋼の代表的な熱処理としては、焼なまし、焼ならし、焼入れ、焼戻しがある[6]。
分類
炭素鋼のうち、炭素含有量(質量パーセント濃度)が0.25%以下を低炭素鋼、0.25 - 0.6%を中炭素鋼、0.6%以上を高炭素鋼と呼ぶ[1]。特に0.6%以下の低炭素鋼と中炭素鋼は広く使用されていることから、0.6%以下の炭素鋼を普通鋼とも呼ぶ[3]。
一般に炭素鋼は炭素含有量0.6%以下のものを構造用鋼として、0.6%以上のものを工具鋼として使用される [7]。日本の場合は、構造用鋼は一般構造用と機械構造用に分けられ、日本工業規格(JIS)の一般構造用圧延鋼材と機械構造用炭素鋼鋼材がそれぞれに対応する[7]。一般構造用圧延鋼材は特に熱処理せずにそのまま使用されることを前提としており、機械構造用炭素鋼鋼材は熱処理をされることを前提としている[3]。
炭素鋼の硬さによっても分類され、軟鋼、硬鋼などとも呼び分ける[8][9]。さらに細かく分ける場合は、柔らかい方から順に、特別極軟鋼、極軟鋼、軟鋼、半軟鋼、半硬鋼、硬鋼、極硬鋼あるいは最硬鋼などと呼ぶ[10][11]。ただし、このような種別による呼び分けは厳密な意味のものではなく[10]、文献によって各種別名や種別を規定する炭素量範囲などが異なっている[10][11][3]。一例として各種別と炭素量の関係を示すと、軟鋼と硬鋼で大きく分ける場合で軟鋼(約0.18-0.30%)、硬鋼(約0.40-1.00%)[8][9]、細かく分類する場合で極軟鋼(0.15%以下)、軟鋼(0.15 - 0.2%)、半軟鋼(0.2 - 0.3%)、半硬鋼(0.3 - 0.5%)、硬鋼(0.5 - 0.8%)、最硬鋼(0.8 - 1.2%)[11]などと分類される。
脚注
- ^ a b 日本機械学会 編『機械工学辞典』(第2版)丸善、2007年、819頁。ISBN 978-4-88898-083-8。
- ^ “炭素鋼とは 大辞林 第三版の解説”. コトバンク. 朝日新聞社、VOYAGE GROUP. 2014年10月3日閲覧。
- ^ a b c d 朝倉健二・橋本文雄『機械工作法Ⅰ』(改訂版)共立出版、2002年、8-9頁。 ISBN 4-320-08105-6。
- ^ 佐々木雅人『機械材料入門』(第1版)理工学社、2005年、41頁。 ISBN 4-8445-2737-1。
- ^ 門間改三『大学基礎 機械材料』実教出版、1982年、33頁。
- ^ a b 佐々木雅人『機械材料入門』(第1版)理工学社、2005年、47頁。 ISBN 4-8445-2737-1。
- ^ a b 山方三郎『図解入門 よくわかる最新熱処理技術の基本と仕組み』(第1版)秀和システム、2009年、30-31頁。 ISBN 978-4-7980-2269-7。
- ^ a b 日本機械学会 編『機械工学辞典』(第2版)丸善、2007年、400頁。 ISBN 978-4-88898-083-8。
- ^ a b 日本機械学会 編『機械工学辞典』(第2版)丸善、2007年、961頁。 ISBN 978-4-88898-083-8。
- ^ a b c 門間改三『大学基礎 機械材料』実教出版、1982年、62-63頁。
- ^ a b c 佐々木雅人『機械材料入門』(第1版)理工学社、2005年、56頁。 ISBN 4-8445-2737-1。
関連項目
軟鋼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 01:48 UTC 版)
炭素が0.25%以下の焼き入れ硬化が無視できる鋼材を軟鋼と言う。最も一般的な鋼材で引っ張り強度は400N/mm2程度である。低炭素鋼、普通鋼などとも言う。 JIS規格では、一般構造用圧延鋼材のSS400という鉄鋼が軟鋼に相当するが、JIS規格ではリンと硫黄の成分のみが規定されており、炭素や他の成分は規定されていない。従ってメーカーやロットによっては同じSS400でも溶接に適さないものもある。 そのため溶接用に規定された軟鋼としてはSM材とSN材が規定されている。SN材は特に建築用として規定された材料で、大地震などで十分な強度が得られるように成分調整と検査が義務付けられた鋼材である。軟鋼は特に溶接性の悪い材料ではないが、比較的柔らかい鋼材のため、溶接量が多いと大きな歪みが生じる。そのため形状によっては縮み代や逆歪み、冷却などの対策が必要になる。 余談だが、日本では鉄と鋼は一緒くたにされているが、日本以外では全く違う物質として認識する地域もある。日本のSS400だと規格上、国によっては鋼として分類されずにクズ鉄同然の見方をされることがある。
※この「軟鋼」の解説は、「アーク溶接」の解説の一部です。
「軟鋼」を含む「アーク溶接」の記事については、「アーク溶接」の概要を参照ください。
「軟鋼」の例文・使い方・用例・文例
軟鋼と同じ種類の言葉
- >> 「軟鋼」を含む用語の索引
- 軟鋼のページへのリンク