舞台演出への関与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 09:41 UTC 版)
「小室哲哉の使用機材」の記事における「舞台演出への関与」の解説
スタジオミュージシャン時代にYMOのライブに行った際に「数々の高級な機材を積み上げて、その中央に毅然と佇む」メンバーの魅せ方に憧れ、小室も「全ての会場にレーザー・サラウンドシステムを搭載するのは当たり前で、会場では気球が飛び、地方への移動には広告宣伝車が10台以上連ねる」のを理想としながらも「自分にはできない、ならいっそのことやらないことに決める方が格好良い」と諦めていた。しかし、エピックのスタッフから「ヒット曲が出たら、小室君のやりたいライブをやらせてあげるよ」と言われて奮起し、CDのセールス枚数を考慮しつつライヴステージの設計・演出にも、積極的に情報を集めて指示を出すようになる。 1980年代はステージの進行は秒刻みでコントロールされ、「ステージ上で振動が起こる時点で物語が始まっているのに、波にノってきた所で急に非現実から現実に戻されるのが自分はいやだ」という思いからMCは極力排除し、アンコールも行わなかった。サウンド面では体育館等元々設計がコンサート向けではない会場で行う場合は1枚5万円はする吸音材を最低100枚床に貼り込み、照明を組み込んだ総重量6t以上のスピーカーを音質を考慮し前と後ろに置き、さらに宙吊りにする。音楽だけでなく視覚面でも感動してもらうために、音楽と舞台に用意された大量のバリライト等の照明・スクリーンに映る映像のシンクロの具合・照明の光量にも注意を払い、音のタイミング優先で同時制御し、演奏の途中でボーカルの人差し指の先にステージの全照明を集める等、360度光と音が飛び交い、それを体感できるように演出した。この時点でステージエンジニアと舞台演出のための機材は、音色作りのスタッフより多く、視覚面はアーティストのキャラクターやパフォーマンスより、照明やスクリーンを重視したライブ演出を志向するようになった。ライブツアーは開催地・規模で予算が決まるため、照明器具にかける予算が限られている場合は、小室が自腹を切った。 1990年代以降は、楽曲の間奏中はダンサーとDJにスポットライトが当たるように小室が照明スタッフ・カメラマンに指示したことにより、ステージの奥行きを出し、画のバリエーションを増やした。ライブ会場にはテレビスタジオ5軒分の機材を持ち込み、事前に用意された100以上の演出映像ソースの他、10台のカメラによるライブで取り込んだ映像は、即高速計算されてリアルタイムCGとなってスクリーンに映し出される。コンサートが行われる時間はテレビの特番サイズを意識し、場面転換は15秒のCMを流し、演奏時の映像はメンバーのパフォーマンスの拡大映像だけでなく、メンバー出演の収録映像も事前に用意する等、テレビ放送局の送出技術を応用するようになる。ドーム規模の会場でライブを行う際には、ドームでの公演専用の音響機材の開発を指揮し、「ドームでの公演は音が悪い」という風評を払拭した。キーボードの脇にディスプレイを置き、色んな角度から映るステージ中央部分を見ながら、イヤーモニターを使ってメンバーとサポートミュージシャンにどのように動くか指示を出す・ミスの修正・今後の演出の強化に役立てる等、「舞台に立つメンバーを格好良く見せる」「ステージを豪華にする」「閃きを早く実行する」ために駆使する等の舞台演出に採算度外視で挑んでいる。 「テープよりも、楽器から直接出る音でレコードを再現したい」「シンクボックスで動かしているE-mu Drumulatorの音だけをドラマーに送って、ヘッドホンでモニターしたい。クリック音だと周囲の音量にかき消される」「テクノロジーの最先端をライブで使いたい」「ディスコの規則正しいリズムに慣れちゃっているから、その方が気持ち良い」「ドラマーも機械に合わせてやらせると、窮屈になるけど、すごくしっかりぴたりとくる」「僕の場合、このやり方が正解だった」という小室の意向から、1985年・TM NETWORK「DRAGON THE FESTIVAL TOUR featuring TM NETWORK」より、ライブシステムは専門のプログラミングスタッフを起用した上でコンピューターでコントロールしている。2005年以降は完全にデジタルの機材で整備されるようになった。低音から高音までのレンジが幅広くフォローされて、人間の耳には聞こえないが、体で感じることができる音域まで表現した。松浦勝人は「ホールが壊れてしまうと本気で心配したほど圧倒的だった」と語っている。 ライブのリハーサルは面積の広いスタジオにPublic Addressを持ち込んで行う。まずレコーディングの要領での打ち込み作業から始まり、大変な時間がかかるため「ライブハウスでミュージシャン同士で集まって、すぐに音を出し合う」タイプのリハーサルができない。回数も少なく、大抵は長くて通しで1週間・準備は打ち込みのデータを渡し、細かい点の確認のみで反復練習はほとんどしない。これについては「本番でのセッション・即興演奏が好きで最初から決めた上で出来上がってしまうと長いツアーの場合3・4回で飽きる」「ライブのリハーサル所か、本番にかける時間すらもったいないから、その時間をレコーディングに回せば1曲できる」と語る。
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