自然地理学の分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 14:52 UTC 版)
「アメリカ合衆国の地理」の記事における「自然地理学の分類」の解説
アメリカ合衆国の東部は地勢的に多様である。テキサス州とメキシコの国境からフロリダ半島を含みニューヨーク市まで、メキシコ湾と大西洋の海岸には広く平らな海岸平原がある。そこから内陸にはうねりのある丘陵部と温帯樹林がある。アパラチア山脈は低い山の並びであり、東部の海岸と五大湖地方やミシシッピ川盆地とを分けている。五大湖は合衆国の北中部にあり、そのうち4つはカナダとの国境になっている。南東部には亜熱帯雨林があり、メキシコ湾岸の特にフロリダ州ではマングローブ湿地がある。アパラチア山脈の西にはミシシッピ川盆地があり、その東側にオハイオ川とテネシー川の2つの大きな支流がある。オハイオ川とテネシー川の流域および中西部は大半がうねりのある丘陵と生産性の良い農地であり、メキシコ湾岸まで南に延びている。 グレートプレーンズはミシシッピ川の西、ロッキー山脈の東にある。合衆国農業生産高のかなりの量がこのグレートプレーンズで栽培されている。グレートプレーンズが農地に転換される以前は、東部平原の丈の高いプレーリーから西部ハイプレーンズ(英語版)の丈の低いステップまで広大な草地が拡がっていた。ミシシッピ川岸近くの数百フィート地点から標高が少しずつ高まり、ハイプレーンズでは1マイル (1,600 m) 以上の高さになる。この平原の一般的に浅い起伏が幾つかの場所で遮られており、中でも著名なものはオザーク高原とウォシトー山脈である。これらはアメリカ内陸高地と呼ばれ、ロッキー山脈とアパラチア山脈の間では数少ない山地である。グレートプレーンズはロッキー山脈でばっさりと切られている。ロッキー山脈はアメリカ合衆国西部の大半を占めており、カナダから伸びてきて、メキシコ近くまで達している。ロッキー山脈は概して他の大きな山地に比べてかなりなだらかな斜面と低い山頂が並んでおり、数少ない例外としてはワイオミング州のティトン山地とコロラド州のサワッチ山脈がある。ロッキー山脈は連続した一体の山地であると言うよりも多くの小さくて切れ切れの山地からなり、その間に盆地や渓谷の大きな繋がりが形成されている。 ロッキー山脈の西は山間地高原(山間地西部とも呼ばれる)であり、ロッキー山脈と、カスケード山脈やシエラネバダ山脈との間の広大で乾燥した砂漠地帯である。その南部の広大な地域はグレートベースンと呼ばれ、塩原、河川流域、および北から南に走る多くの小山地がある。アメリカ合衆国南西部は大半が低地砂漠地帯である。フォーコーナーズ地域を中心とするコロラド高原と呼ばれる地域の景観は世界で最も壮観だと考えられている。中でもグランドキャニオン、アーチーズおよびブライスキャニオンなどの国立公園が見物である。 山間地高原はカスケード山脈やシエラネバダ山脈で終わりとなる。カスケード山脈は大半が断続的な火山からなり、周囲と比べてひときわ高い。その南のシエラネバダ山脈は高く、岩が多く密な山地である。ここには標高14,505 フィート (4,421 m) で48州の中では最高峰のホイットニー山がある。ここにも素晴らしい景色の場所があり、ヨセミテやレーニア山国立公園となっている。カスケード山脈とシエラネバダ山脈の西はカリフォルニア州のセントラルバレーやオレゴン州のウィラメットバレーなど、一連の川の流域がある。海岸に沿っては太平洋岸山地など一連の低い山地が並ぶ。太平洋岸北西部の海岸の大半は、熱帯以外では最も密な植生が拡がり、セコイアのような世界最高の樹高をもつ樹木もみられる。 アラスカ州では国内で最も表情豊かで未開発の景色をみることができる。広く平らなツンドラ平原から高く形の良い山岳が急に立ち上がっている。アラスカ州南部および南西部海岸沖の諸島には多くの火山がある。ハワイ州は太平洋上でアラスカ州の遙か南にあり、熱帯の火山島が連なり、東アジアやアメリカ合衆国本土からの観光客に人気がある。 アメリカ合衆国の地理はその広大な領域の中で様々に変化する。大陸アメリカ合衆国の中に8つのはっきりとした自然地理学的分類があり、そのそれぞれがさらに幾つかの小区分に分けられる。主要区分は以下の通りである。 ローレンシア・アップランド - カナダ楯状地の一部、五大湖地方まで拡がる。 大西洋岸平原 - 大西洋岸とメキシコ湾岸に拡がる東部と南部の海岸地域、大陸棚を含む。 アパラチア高地 - アメリカ合衆国東部にあり、アパラチア山脈、ワチャング山脈、アディロンダック山地、およびもともとは東部大森林を擁していたニューイングランドが含まれる。 内陸平原 - 大陸アメリカ合衆国内陸部の一部、グレートプレーンズと呼ばれる地域の大半を含む。 内陸高地 - これも大陸アメリカ合衆国内陸部の一部、ここにはオザーク高原がある。 ロッキー山系 - アメリカ山系の1支脈、西部州から遠い内陸にある。 山間地高原 - コロンビア川台地とコロラド高原およびベイスン・アンド・レンジに分けられる、ロッキー山脈と太平洋山系との間の高原、盆地、山脈および峡谷の並びである。グランドキャニオン、グレートベースンおよびデスバレーがある。 太平洋山系 - 海岸山脈、アメリカ西海岸がある。 アメリカ合衆国の大西洋岸は例外的な低地である。アパラチア高地は、地質時代の最初期に起こった、現在のアパラチア山系が形成される契機となった地殻変動によって北東から南西の方向に斜めに造山された。この山系はかなり昔(おそらくはペルム紀)に地殻変動のピークを迎えており、その後徐々に起伏の少ないなだらかな地形になってきた。現在の高度は初期の線にそって隆起が繰り返されたか、現在の山地として最も浸食されにくい岩石が残ったことによって生まれたものである。海岸の斜めの構造線は、比較的最近の地殻変動(北東部に沈降を引き起こし、それによって陸地が海に浸食された)ながければさらに顕著であったはずである。さらに南東部で隆起が起こり、海岸線の発達をもたらした。 下図は自然地理学地図と呼ばれる地球科学者が用いる地図で、アメリカ合衆国本土48州の地域について地理と地勢の情報を示している。この地図には地形だけでなく海上に陸地が現れた年代も記されている。 大西洋岸が相対的に低地であるのに対し、太平洋岸は幾らかの例外はあるものの、丘陵や山が多い。この海岸は主に地質学的には最近の地殻変動で形成されており、ゆえに大西洋岸よりも起伏に富んでいる。 大西洋岸には低地が広がり太平洋岸には丘陵や山が多いという地理的特徴は、アメリカ合衆国内の山地分布にも影響している。東海岸のアパラチア山系は当初森林に覆われ、比較的低く狭く、南東と南は重要な海岸平原で遮られている。大陸西側の山脈は高く広く、ロッキー山脈系と太平洋山脈系の2つの支脈が複雑に入り組んでいる。こうした山脈系の間に山間地高原がある。北西部の海岸は深い森林で覆われているが、北西部において他に樹木が見られるのは高山帯以下の高度が高い地域のみである。山間地渓谷、高原および盆地には樹木が生えていないか砂漠であり、南西部では大変乾燥した地帯となっている。 コロンビア川とコロラド川の水源は山系の東端近くにあり、高原や山間地盆地を通って太平洋に注いでいる。 ローレンシア高地、内陸平原および内陸高地は2つの大洋の間にあり、メキシコ湾岸から北に延びてカナダ国境を越え、北極海に至っている。中央平原はカナダ側とアメリカ合衆国側とでは(ほとんど知覚できないが)標高が異なる。大ミシシッピ水系はアメリカ合衆国側から発し、南に流れメキシコ湾に注ぐ。ミシシッピ川上流とオハイオ川盆地の幾らかは半乾燥平原であり当初から樹木は川沿いだけにあった。アパラチア山脈に向かう高地は東部大森林地域に含まれ、平原の西部は大変乾燥した気候なので植生は疎らであり、南部は地質的に不毛である。 標高の極値 最低地点:デスバレー、カリフォルニア州インヨー郡、海面下282フィート (-86 m) 最高地点:デナリ、アラスカ州デナリ郡、海抜20,320フィート (+6,194 m)
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