水素エネルギー社会


水素エネルギー社会(すいそえねるぎーしゃかい)は、水素を燃料(水素燃料)[注釈 1]として用いる社会システム[1]。水素社会とも呼ばれる。
水素の生産
水素の生産は、主にエネルギー源として化石燃料(石油・石炭などの炭化水素)を消費して生産する。この際に、二酸化炭素が生成され、二酸化炭素貯留法を用いない限り、大気へ排出される。
しかし、もしも安価かつ二酸化炭素を大気へ排出しないエネルギー源が存在した場合に、もしくは余剰電力が大量に存在する場合に、それから水素を効率良く大量生産できたならば、生産された水素を燃焼させる利用段階時に限れば二酸化炭素を排出しないことから、環境負荷が低い社会が実現するとされる[2]。
燃料電池
水素を用いる燃料電池の原理は19世紀には見出されていたが、社会システム面までの言及は、1970年のミシガン大学 Lawrence W. Jones の Toward a liquid hydrogen fuel economy による。[3]
燃料電池は内燃機関よりも技術的には高度ではあるものの、全体的な効率は内燃機関よりも高効率ではない[4]。燃料電池は自動車、船舶から携帯端末やコンピュータまで様々な用途における電力を供給可能である。
燃料電池自動車は、乗用車ではトヨタ・MIRAI、ヒュンダイ・ix35 FCEV、ホンダ・クラリティ フューエル セルなど、路線バスではトヨタ・SORAなどのようにリース販売や一般販売が行われるようになっており、他の主要な自動車会社でも燃料電池車の開発が進められている[5]。
水素以外のエネルギー媒体
水素以外にもエネルギーを貯蔵できるガス、あるいは水素の化合物は実に多種多様に存在し、例えば窒素と反応させアンモニアとすることで沸点を大幅に下げ輸送を容易にしたり、二酸化炭素と反応させメタンを作り既存のガスインフラを利用するなど様々な方法が考えられる。これらガスから水素を作り出すこともできる。
他に常温で固体の金属であるマグネシウムを利用したマグネシウム循環社会なども考案されている。
関連項目
脚注
注釈
出典
- ^ 水素エネルギー社会の実現 エネルギー白書2013,資源エネルギー庁
- ^ 水素エネルギー社会に向けた取組,資源エネルギー庁
- ^ Lawrence W. Jones, Toward a liquid hydrogen fuel economy, ミシガン大学 engineering technical report UMR2320, 1970.
- ^ Sustainable Energy, MIT Press (2005), Tester, Drake, Driscoll, Golay, Peters
- ^ “Fakta bränsleceller”. 2015年2月27日閲覧。
外部リンク
- 水素エネルギー社会の実現 資源エネルギー庁
- 水素活用による、鉄道と自動車のモビリティ連携の検討を開始 - トヨタ自動車/東日本旅客鉄道(2018年09月27日発表)2018年10月16日閲覧
水素循環社会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 04:19 UTC 版)
「水素エネルギー社会」も参照 自然エネルギーからの電気(太陽光発電や人工光合成)によって水の電気分解から水素を生成してエネルギー媒体として貯蔵し、燃料電池を使って発電し電気を取り出すというエネルギーの循環構想がある。 一見、理想的で無駄のないサイクルに思えるが、電気分解から燃料電池による発電までの工程ではニッケル水素電池やリチウムイオン充電池と比較して効率が大幅に低い。高分子固体電解質を利用した電気分解の工程では分解時に両極でガスが発生するが、これが連続した反応を阻害する一因となる。また、燃料電池での発電工程でも同様に燃料電池のガス拡散電極の特性上、電流密度を上げるためにはスタックを重ねなければならず、取り出す電流を2倍にしようとすれば電極の面積も2倍にしなければならず、単位容積ごとの効率が低い。貯蔵時にも専用の高圧タンクや水素吸蔵合金を使用しなければならないため、単位体積ごと、あるいは単位重量ごとのエネルギー密度を下げる要因になり、利点を相殺してしまっている。
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