歴史参考
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 23:55 UTC 版)
明代末期の中国で書かれた『五雜俎』によると、漢代中国には「手勢令」と呼ばれるゲームがあったという。『五雜俎』では「手掌を以て虎膺とし、指節を以て松根とし、大指を以て蹲鴟とする」などの手勢に関する詳しい記載があるが、遊び方に関して「用法知らず」とされ、当時「捉中指」という遊びのルーツではないかと作者が推測している。『全唐詩』の八百七十九巻には、「招手令」について「亞其虎膺、曲其松根。以蹲鴟間虎膺之下」と、ルールと思われる記述がある。「蹲鴟を以て虎膺の下とす」から、三すくみ的要素を見て取れる。 ○○拳という呼称は、中国では主に拳法のことであるが、明代に書かれた『六研齋筆記』に「謂之豁拳」の記述があり、拳遊びのことを「猜拳」「画拳(かくけん)」「豁拳」などと呼んでいた。拳遊びを○○拳と呼ぶのは、中国の影響が考えられる。現在、中国で行われているじゃんけんは明治以後、日本から新たに伝わったものと考えられるが、同じく「猜拳」と呼んでいる。 石・紙・鋏(はさみ)のじゃんけんは日本起源で、近代以降、日本人の移民や交流で世界各地に広がり、日本と密接な関係を持っていたイギリスの旧植民地や、南アメリカでも日本人が入植した地域を中心にじゃんけんが行われている。一方、日本との接触が少ない所では、石・紙・鋏のじゃんけんは普及していない。 中国や朝鮮では、日本から伝播した際に紙が「布」に置き換わったため「石」・「布」・「鋏」となった。 19世紀後半まで鎖国していた日本に対し、19世紀中ごろのアメリカ大陸横断鉄道建設の労働者など、欧米に早くから多くの移民を送り出してきた中国式の石・鋏・布が世界標準とならなかったのは、中国に現在のじゃんけんが伝来したのが明治以降のことで、当時の中国人がまだ現在のじゃんけんを知らなかったからと思われる。現在の中華人民共和国西部地区(新疆ウィグル)や中央アジアでは未だにじゃんけんがほとんど普及していない。中国語ではじゃんけんの掛け声は「シータォー(石)・チェンツ(鋏)・プー(布)」であるが、「ジャン・ジン・ボー」などと言う人もいる。また、高齢者の中にはじゃんけんを知らない人もいる。 WRPSにおけるじゃんけんの手の出し方。左からそれぞれグー・パー・チョキを表す。 2002年(平成14年)、世界各地のじゃんけん系ゲームのルールを統一し、世界大会を開くためとして「The World Rock Paper Scissors Society(略号:WRPS)」がカナダで結成された。同団体は元々1842年にイギリスで設立されたと主張しているが、この頃にはまだ現在のじゃんけん自体が存在しておらず、これはWRPSのジョークである。そもそもWRPS自体が冗談で創られた団体であり、もし本当にじゃんけんが19世紀当時のイギリスで行われていたのなら、旧大英帝国領を中心にじゃんけんが普及していたり、他のヨーロッパ諸国にもイギリスから伝わった明らかな痕跡が見られるはずであるが、そのような事実はない。ヨーロッパでは19世紀以前の文献にじゃんけんは存在せず、20世紀になって日本についての記述からじゃんけんが出てくる。また、20世紀に日本人が海外での体験を書いた書物にも、日本人同士がじゃんけんをしていると欧米人が不思議に思い、何をしているのかと質問されたとの記事が散見され、最近までヨーロッパではじゃんけんがほとんど知られていなかったことが確認できる。このことからもWRPSの設立が比較的最近であることがわかる。 日本が舞台となった『007は二度死ぬ』(1967年(昭和42年))原作の小説では、日本的な雰囲気を出すために主人公ジェームズ・ボンドがじゃんけんをする場面が登場する。 日本のじゃんけんのチョキは、もともと人差し指と親指を伸ばす数拳での2を表し、和鋏の形状をイメージした現在の「男チョキ」と呼ばれるものであったが、日本国内を伝播するうちに、洋鋏からイメージされた人差し指と中指を使う「女チョキ」が派生した。じゃんけんの基となった遊びの多くが九州を中心とした西日本に多く分布し、古い形態である「男チョキ」も九州を中心とした西日本に多い(韓国でも「男チョキ」が行われている)。「男チョキ」は東京など東日本には普及しなかったので、一部では「田舎チョキ」と呼ばれることもある。ヨーロッパ諸国のじゃんけんは「女チョキ」しかないため、日本の関東地方から伝わったと推測される。また、日本ではパーを出す場合は五本の指が離れるように広げるが、WRPSのじゃんけんでは(■右の画像のように)五指を揃える。これは「パーは紙である」という意味しか伝わらなかったために生じたものであろう。
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