東海地方の金融機関との競合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 11:28 UTC 版)
「十六銀行」の記事における「東海地方の金融機関との競合」の解説
岐阜県内金融機関の近年の傾向として、地盤とする岐阜県は2004年当時、十六銀行と大垣共立銀行、岐阜銀行、岐阜信用金庫の4行庫で預金40%、貸出金62%の寡占状態であり、また地場産業の低迷から、いずれも愛知県への進出(愛知県に本店を置く地銀協加盟行は存在しない)を強めている。こうしたなか、2000年(平成12年)以降、旧東海銀行の再編参加により、当時一層の勢力猛進が恐れられていたUFJ銀行に対抗する戦略として、十六銀行・名古屋銀行・百五銀行の3行で業務提携を締結した。具体的な施策として、名古屋銀行との店舗交換や、3行間でのM&Aの相互紹介、共同商談会等を行い、さらに後述するATM相互開放では愛知銀行を加え、これは、地域金融機関連携のモデルケースとして全国的に注目されてきた。 しかし2005年(平成17年)10月、親密都銀である東京三菱銀行の持株会社である三菱東京フィナンシャルグループ(FG)によるUFJホールディングスの救済合併が実現。追って商業銀行も2006年(平成18年)1月に合併し、対UFJ包囲網として構築された地域銀行業務提携は、その再定義が噂された。 東海地方は元々、無借金志向の企業が多いため貸出金利が全国平均より低く、また貯蓄率の高さから預貸率が低いため、その資金利鞘の改善が課題となっていた(旧東海銀行の東京進出および新興企業の積極的開拓もこうした歴史的背景からであるが、合併後の行内対立による経営悪化、とりわけ中京圏での弱体化は十六にとって奇貨となった)。今後の生存戦略の一選択として、銀行間の統合を探る動きも見られる。今後、十六銀行を巻き込んだ構図として考えられるのは、 3行業務提携から合併・経営統合への移行 十六の3行連携からの離脱と三菱東京UFJ銀行への接近 などである。 1. に関して、特に名古屋銀行とは人事考課システムがほぼ同様なものが採用され、”合併を見越したもの”と噂されている。しかし、合併等で重要なポイントとなる次期勘定系システムの構築において、十六銀行は日本IBMをメインフレームに三菱東京UFJ銀行新システムとの共同運用を採用し、名古屋銀行(ベンダーは富士通)・百五銀行(同日本ユニシス)も其々異なったシステムを構築しつつある。ちなみに、他の東海3県地域銀行のベンダー採用状況は、大垣共立銀行と三重銀行がNEC(三重は旧住友銀行のをパッケージ採用)、第三銀行と中京銀行と岐阜銀行が日立製作所(中京・岐阜は旧東海銀行のをパッケージ採用)、愛知銀行はNTTデータである。また前述の貸出金競争でも、名古屋銀行は貸出金総額を2兆円にすべく大幅な金利引き下げ競争を繰り返し、百五銀行は数年で愛知県内での貸出金をほぼ倍増させ、名古屋銀行の地盤である愛知県西三河地方への進出を強めているなど、3行間の競争は熾烈である。元々この業務提携は、愛知県内でUFJ銀行に対抗する為に名古屋銀行が最も積極的であったと言われ、3行間で温度差が前々から指摘されてきた。こうした理由で、3行間の合併・経営統合は東海銀行の合併同様、同床異夢の感もある。 2. に関しては、旧三菱銀行出身者により統治される三菱東京UFJ銀行において、同行の関連会社で旧東海銀行の親密行、中京銀行、岐阜銀行(勘定系システムは旧東海)との関係性変化を見る一部の見方から、両行を加えた「三菱UFJ系地銀」での再編成も考えられる。しかし、その点親三菱3行間、そして旧東海出身者の下、中京金融界の過度な三菱化を警戒する両行や名古屋財界との関係から、十六銀行が主導的に関与できるとは限らない。また岐阜銀は元々十六系列であったが、その露骨なまでの”子会社扱”に反発し、1999年(平成11年)に旧東海傘下に移った経緯があり、とりわけ十六にとって、すんなり決着できる関係とは言い難い。また、これとは別に、水谷研治中京大学教授ら一部旧東海OBより、旧東海銀行の独立を意図とした「東海三菱銀行」構想(りそなグループの傘下で、埼玉県を中心に営業する「埼玉りそな銀行」のような形態を想定)が出るなど、三菱主導による地域銀行再編も、様々な思惑が絡んでいるのが現状である。 2008年(平成20年)11月28日付の『日本経済新聞』など各紙の報道では、同年12月1日より十六銀行が、三菱東京UFJ銀行系列で経営再建中の岐阜銀行(岐阜市)に対し資本支援するなど、両行が包括的な資本・業務提携に向けた交渉に入ることが報じられた。十六銀は数十億円の出資を検討しており、岐阜銀が発行する優先株を引き受ける方法が有力という。三菱東京UFJ銀行の地銀囲い込み戦略が進む中で、東海地方における地元金融機関の生存戦略と十六銀行との関係が注目された。 2010年(平成22年)7月30日、岐阜銀行が三菱東京UFJ銀行側からの資本支援を行うことを前提に、十六銀行は岐阜銀行を2010年度に完全子会社化し、2012年(平成24年)9月18日に吸収合併した。
※この「東海地方の金融機関との競合」の解説は、「十六銀行」の解説の一部です。
「東海地方の金融機関との競合」を含む「十六銀行」の記事については、「十六銀行」の概要を参照ください。
- 東海地方の金融機関との競合のページへのリンク