日本の森林鉄道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/23 01:39 UTC 版)
明治時代の後半、欧米列強の脅威から国を守るために富国強兵と殖産興業に邁進していた日本では、国産木材の需要が急速に高まった。しかし、古来から行われていた筏による木材の水上輸送は、常に商品である木材の紛失と水難事故の危険を伴うもので、計画的な物流が難しかった。そこで、森林鉄道の建設を目指す機運が全国で高まった。また、水力発電のためのダムの建設により水上輸送が不可能になることへの補償として、電力会社主導で敷設されることもあった。 日本の森林鉄道の歴史は、1909年(明治42年)12月20日に開通した津軽森林鉄道に始まる。その後、長野県の木曽、高知県の魚梁瀬をはじめとして、全国各地の林産地帯に大小さまざまな森林鉄道が建設された。また、当時は日本の一部だった台湾にも、同様に阿里山森林鉄路などの森林鉄道が建設された。 軌間は殆どが762mm でいわゆるナローゲージである。営林署が中心となって762mm を標準とし、例外的に610mm を採用していた模様であり、かなり小規模な路線でも鉱山用軌道や構内軌道に見られる508mm の軌間は採用されていなかった[要出典]。運材台車や機関車の互換性の他に木材移動時の転覆の防止もあったものと考えられる。 1960年代までの日本は国産材中心の時代であり、大量の木材が生産されていた。しかし伐採した木材を搬出する林道網が貧弱な上、トラックなどの性能が低かったこともあり、運搬手段として鉄道が一般的に利用されてきた。宮崎県では当時[いつ?]の国鉄の営業キロを上回る延長の森林鉄道が存在した。 1970年代になると、外国材の輸入が本格化して採算性が悪化したこと、資源の枯渇が進み鉄道で運び出すほどの量の木材が生産できなくなったこと、自動車の発達と林道網の充実したことにより、またたく間に山から消えていった。1975年に、本州最後の森林鉄道が廃線し、歴史に幕を閉じた。林鉄の衰退後、自動車輸送の集積所まで索道が用いられることもあったが、それも伐採量の減少により廃止され、現在、付加価値の高い材木はヘリコプターで集められるようになっている。 21世紀を迎えた現在、全国には森林鉄道の遺構である橋や軌道跡が多く残されている。中には、道路や遊歩道などに姿を変えて利用されている場所も多く、かつて林業で栄えた歴史を持つ地方自治体の中では、それらの観光や車両の動態保存を通じて地域振興を図る機運が高まっている。 国有林林道延長 (Km)年度 鉄道(1級)軌道(2級)索道自動車道車道木馬道牛馬道合計1947 1,964 4,639 10 - 9,394 1,495 4,178 21,680 1948 2,371 3,752 8 4,910 5,193 1,273 3,964 21,471 1949 2,421 3,751 15 5,048 4,779 1,176 3,950 21,140 1950 2,488 3,643 17 5,444 4,788 1,098 3,900 21,378 1951 2,592 3,602 22 6,071 4,422 1,012 3,932 21,653 1952 2,692 3,491 25 6,786 4,332 927 3,850 22,103 1953 2,103 3,930 25 7,560 4,243 832 3,840 22,533 1954 2,112 3,848 26 8,515 4,001 722 3,514 22,738 1955 1,819 4,103 28 9,423 3,752 708 3,331 23,164 1956 1,743 3,914 31 10,497 3,623 673 3,285 23,766 1957 1,740 3,876 29 10,527 3,615 673 3,286 23,746 1958 1,605 3,736 33 11,410 3,518 569 3,174 24,045 1959 1,474 3,348 34 12,383 3,428 521 3,142 24,330 1960 1,352 3,033 41 13,535 3,432 498 3,112 25,003 1961 1,164 2,737 40 14,535 3,441 380 2,760 25,057 1962 1,049 2,466 38 15,602 3,045 328 1,892 24,420 1963 900 2,095 36 17,010 2,859 290 1,628 24,818 1964 750 1,756 30 18,252 2,692 264 1,454 25,198 1965 602 1,285 21 19,536 2,690 232 1,317 25,683 1966 438 998 21 20,920 2,537 137 1,150 26,201 1967 326 779 17 22,052 2,368 81 926 26,549 1968 261 580 14 23,123 2,200 61 799 27,038 1969 170 321 9 24,347 2,142 54 653 27,696 1947年度の車道は自動車道含む 日本林業技術協会編『林業技術史』第4巻、日本林業技術協会、1974年、318頁
※この「日本の森林鉄道」の解説は、「森林鉄道」の解説の一部です。
「日本の森林鉄道」を含む「森林鉄道」の記事については、「森林鉄道」の概要を参照ください。
- 日本の森林鉄道のページへのリンク