抗議と利用禁止の試み
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「ファン・ホーム ある家族の悲喜劇」の記事における「抗議と利用禁止の試み」の解説
2006年10月、米国ミズーリ州マーシャルのある住人が『ファン・ホーム』およびクレイグ・トンプソン(英語版)の『ブランケット』の2冊のグラフィックノベルを市の図書館から取り除くよう運動を行った。除去支持派はそれらの本を「ポルノ」とみなしており、子供がそれらを読むことを懸念していた。マーシャル市立図書館の館長エイミー・クランプはこれら2冊が「定評ある書評誌」によって高い評価を受けていることを指摘し、除去の要求を「検閲という滑りやすい下り坂」への第1歩と呼んだ。2006年10月11日、市立図書館の理事会は資料選出方針を策定するための委員会を設置し、新方針の発効まで2冊の利用を停止した。委員会は「偏見に基づくラベルの貼付や資料の隔離システムの作成は行わない」と決定し、方針案を理事会に提出した。2007年3月14日、マーシャル市立図書会理事会は評決により問題の2冊を書架に戻す決定を下した。ベクダルはこの閲覧禁止の試みを「非常に光栄」と呼び、この事件は「グラフィックノベルという表現形式が新しく生まれ変わる大きな過程の一コマ」だと述べた。 2008年、ユタ大学の講師が中級英語講座「英語文学の表現形式の批判的紹介」のシラバスに課題図書として『ファン・ホーム』を載せた。一人の学生がこれに抗議し、宗教面の配慮に関するユタ大の方針に基づいて別の課題図書を与えられた。後に、その学生から連絡を受けた地域の団体「ノーモア・ポルノグラフィ」は同書をシラバスから除外するためにオンラインで請願運動を展開した。ユタ大英語学科の学科長ヴィンセント・ペコラは本書と講師を擁護し、シラバスから除外する計画はないと述べた。 2013年、サウスカロライナ州の保守主義団体パルメット・ファミリーが、カレッジ・オブ・チャールストンにおいて新入生への推薦図書リストに『ファン・ホーム』が挙げられたことに対する抗議を行った。パルメット・ファミリーの代表オラン・スミスは本書を「ポルノ的」と呼んだ。ベクダルはこれに対し、ポルノは性的興奮を与えるために作られたものだが自作は異なると反論した。同大学のプロヴォストであるリン・フォードは『ファン・ホーム』を擁護し、特に同作がアイデンティティをテーマの一つとしていることは大学一回生が読む本としてふさわしいと述べた。しかし、それから7か月後、共和党が優位を占めていたサウスカロライナ州下院の歳入委員会は、本書を推薦したことへの懲罰として、同大学への交付金から夏期の読書プログラムの予算52,000ドルを削減した。削減を提案した下院議員ゲイリー・スミスは、チャールストン大は本書を推薦することで「ゲイやレズビアンのライフスタイルを広めている」と発言した。同じく削減を支持した下院議員スティーヴン・ゴールドフィンチは「この本は保守主義者の自由を踏みにじっている。[…] この本を、特にその絵を教育に用いるのは行き過ぎだ」と述べた。ベクダルはこの交付金削減を「悲しく、馬鹿げたこと」と呼び、本作が「結局のところ、この種の狭量が人々の人生をどのように損なうかを扱ったものだ」と指摘した。下院本会議は採決によってこの削減を維持した。チャールストン大の学生や教員は失望と異議を表明し、同大の学生自治会は全会一致で交付金削減を取り消すよう訴える決議を採択した。10グループに上る言論の自由の擁護団体は連合してサウスカロライナ州上院財政委員会に書状を送り、交付金を元通りにするよう訴えるとともに「立法府の一員が教育プログラムの一要素に賛成しなかったというだけの理由で、州立の教育機関に財政面でペナルティを科すのは、教育的にみて不健全であり、また憲法上の疑義を与える」と警告した。1週間に及ぶ論議の末、上院での議決により交付金の削減は取り消されたが、その用途は合衆国憲法および論文集『ザ・フェデラリスト』の研究に振り替えられた。またチャールストン大に対しては「宗教的、道徳的、文化的信条」によって課題図書を拒絶する学生に対して代替図書を提供することが義務付けられた。ニッキ・ヘイリー州知事はこの予算配分による大学へのペナルティに承認を与えた。 2015年、デューク大学において、2019年夏期の課題図書に本書が指定された。複数の学生が道徳的もしくは宗教的な理由によりこれを拒絶した。
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