左金寺一統
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「風の市兵衛シリーズの登場人物」の記事における「左金寺一統」の解説
左金寺 兵部(さこんじ ひょうぶ) 北十間堀にかかる押上橋近くにある骨董店、「天の木堂」店主。水戸学の藤田幽谷の高弟である左金寺某の縁につながると自称している。常州鹿島の出身で、本名は兵太(ひょうた)。20歳になる前に江戸に出てきて、目利きの才を生かして財をなしたと言われているが、実は妻たちを通じて九郎平とつながりを持った左金寺は、九郎平から提供された資金を元手に金貸しを始め、それによって大金を得るようになった。俳句や茶道など趣味の会合を主催していて、そこに集う人々から資金を募り、投資を行なうこともしている。 ところが、元勘定吟味役の中川、細田、松平の指南に従って投資した大名為替で大きな損失を被ってしまう。そのため、出資者への利息の配当に窮し、御家人たちに対する投資詐欺に手を出すことになった。充広や八重木一家もその被害者である。 充広が投資話に乗ってしまった事情について尋ねるために訪問した市兵衞について、彼を警戒すると共に妙に肯定的な印象も抱いた。 事が露見すると坂内の助力で逃亡を図るが、市兵衞に阻止され、捕縛された。 九郎平(くろべい) 本所入江町にある岡場所、別名「鐘の下」のふせぎ役で、千2,3百人いると言われる女郎たちから夜ごとに4文ずつ口銭を徴収し、莫大な利益を得ていた。 40代半ばの年齢で、左金寺とは妻同士が姉妹という間柄。 左金寺が御家人に対する投資詐欺を始めると、投資話を持ちかけたり、投資のための資金を貸し出したりする役回りを演じた。しかし、変な欲を出して本来全員始末すべき百助一家のうち江だけを生かして水戸の岡場所に売り飛ばしたり、瑠璃の身売りを画策したりしたことで、左金寺の計画にほころびが出、真相の露見につながってしまった。そして捕らえられ、渋井によれば妻や手下どもと共に死罪は間違いないという。 お蓮(おれん) 九郎平の妻で菜々緒の姉。九郎平と左金寺とは、互いの妻を通じて義兄弟ということになる。お鈴に会うため2日連続して「駒吉」を訪れた市兵衛の元に、多七郎を差し向けて懲らしめようと九郎平に提案したが、逆に勘ぐられても困るといったん拒否された。 菜々緒(ななお) 左金寺の妻。事件の全容が明らかになった際、左金寺が逃げるのに足手まといだとして、坂内に斬り殺された。 お熊(おくま) 入江町の次郎兵衛店に住む、九郎平の息のかかった金貸しで腕のいい取り立て屋でもある。九郎平の斡旋で充広に30両を貸し付け、その取り立てのために連日追い回す。そして、瑠璃の身売り話を持ちかけたところ、激高した充広に殺されてしまった。 中山 半九郎(なかやま はんくろう) 元勘定吟味役で、3年前嫡男柿右衛門(かきえもん)に家督と役目を譲った。59歳。隠居後は、かつての経験と知識を生かして老舗の商家の指南役につき、左金寺が差配している出資仲間の相談役も務めている。細田 栄太郎(ほそだ えいたろう)、松平 三右衛門(まつだいら さんえもん)も同様である、 左金寺が投資詐欺を始めると、その投資が間違いないことを3人が保証することで、対象者を信用させた。 信正が私的に中山宅を訪問して、充広が手を出した投資話について尋ねたことで、目付が捜査していることを悟って3人とも大いに狼狽し、左金寺に叱咤された。そして、これまで騙した御家人たちにそれぞれ私財から出資額と同じ金額を配り、他言無用を願って歩いた。 事件の全容が明らかになると、彼ら3名の罪を記した老中からの召喚状を送られてきた。すると、家督を継いだ息子たちが密かに談合し、その後半九郎らは3人とも病死として届けがなされた。その結果それぞれの家がとがめを受けることは免れた。 徳山 坂内(とくやま ばんない) 本名板助(ばんすけ)。水戸にいたとき、鬼神と呼ばれていた鹿島流の道場主に学んでいて、後に左金寺兵部となる兵太とは道場仲間。師からは「勝てば良いと思っている卑しい剣術」として評価が低かったが、16歳の時に師を打ち倒した。そして、20歳になる前に兵太と共に江戸に出てきて、その後は彼の手伝いをすることに生き甲斐を見いだしていた。普段は「天の木堂」の下働きを行なっていて、彼を見下している菜々緒やお蓮も料理の腕だけはほめる。 江と梅之助が生きていることを知った左金寺から、水戸に逃亡するのための時を稼ぐため市兵衞を亡き者せよとの命を受け、3人の用心棒と共に市兵衞の長屋を襲撃した。峰岸を斬った市兵衛と対峙し、自身も斬られる。その際死んだと思われていたが、息を吹き返して翌日の検死前に逃亡、左金寺の元に向かった。そして、左金寺に逃げるよう言い、足手まといだとして菜々緒を斬った。その後、左金寺脱出の時を稼ぐために屋敷に火を放って死んだ。 峰岸 小膳(みねぎし しょうぜん) 左金寺が九郎平の元手で浪人への貸し付けを始めたとき、もめ事処理や取り立てのために抱えた用心棒。他の2人の用心棒と共に、左金寺から八重木一家全員の殺害を命ぜられたが、江だけは生かして水戸の遊郭に売り飛ばそうと考えた九郎平から金をもらってその通りにした。 市兵衞の長屋を襲撃した際、髙木と共に部屋に突入したが、用意万端待ち構えていた市兵衞に斬られてしまう。 高木 東吾(たかぎ とうご) 峰岸と同じ用心棒。市兵衞の長屋を襲撃した際、たまたま宿泊していた弥陀ノ介に斬られた。 校倉 源蔵(あぜくら ぜんぞう) 峰岸と同じ用心棒。7尺(約212.1cm)近い巨漢。梅之助を川の中に投げ込んだ。 市兵衞の長屋を襲撃した際は、弥陀ノ介の刀を弾き飛ばし、その体格を生かして格闘で圧倒するが、最後に弥陀ノ介の反撃に遭い、首の骨をへし折られて斃されてしまう。 多七郎(たしちろう) 九郎平一家の若頭。市兵衞が武家女の身売りをもっぱら請け負っている女衒について尋ねるため「駒吉」にやってきたのに怒った九郎平が、彼を懲らしめるために10名ばかりの手下と共に送り込んだ。しかし、物干し竿一本で簡単に撃退されてしまった。
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