天体観測・観察を始めるとき(1)
見えるもの・見えないもの
インターネットでは美しい天体の画像を数多く見ることができますが、あなたも、夜空に輝く星を、天体望遠鏡で直接見てみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。天体望遠鏡を通して夜空を見ると、そこには肉眼で見わたすのとは別の、美しく神秘に満ちた星の世界がひろがっています。天体観測の愛好家も数多く、さまざまな雑誌や本でその魅力が紹介されています。入門用の望遠鏡でも、多くの星座や星をとらえることができ、太陽と月をはじめ、水星、金星、火星、木星、土星の5つの惑星は表面の様子を観察することもできます。
ただし、雑誌などに紹介されるような、たとえばアンドロメダ星雲の美しい姿などは、特殊な方法で再現されるものですから、個人用の天体望遠鏡では見ることができません。そういう光景を期待していると、ちょっとがっかりするかもしれません。
望遠鏡を買うとき
天体望遠鏡は、デパートや専門のお店で売られています。たくさんのメーカーから多くの機種が発売され、性能と価格もさまざまです。買うときは、目的と予算をしっかり決めて、信頼できるメーカーの製品を買うことが基本です。
初めて望遠鏡を買うときは、入門書を1、2冊と専門の雑誌の最新のものをよく読むことをすすめます。これらの情報から、ほしい望遠鏡の目安(性能範囲・価格帯)をつけます。もし、あなたが小学生だったら、高性能で高価なものは必要ないでしょう。まずは基本的な望遠鏡を手に入れ、惑星や季節ごとの夜空をじっくりと観察して、天体観測の基礎知識を自分のものにしてください。そのあとで、本当に自分の見たい天体に合わせて、新しい望遠鏡を追加するのが理想的です。最初の望遠鏡は、補助機として役に立つのでムダになることはありません。
口径50cmカセグレン式反射望遠鏡による写真(国立天文台提供)
天体観測・観察を始めるとき(2)
望遠鏡を選ぶときのポイント
天体望遠鏡は、方式で大きく分けると「反射式」と「屈折式」があります。このほか反射式の高性能のもので「シュミット・カセグレン式」というのもあります。
望遠鏡を三脚に載せる台(架台)の方式にも違いがあり(赤道儀と経緯台)、これらの組み合わせを選ぶことになります。
いちばん基本的な組み合わせは、屈折式の望遠鏡と経緯台のセットで、入門者があつかいやすく、低価格でもあります。実際に買うときは、お店で実物をさわってみることがかんじんです。望遠鏡の性能だけでなく、三脚ががんじょうか、架台がグラグラしていないか、などもしっかりチェックしてください。
望遠鏡のアクセサリー
望遠鏡を使って天体観測をするさい、目的に応じてさまざまなアクセサリーが必要になります。
代表的なものは、アイピースと呼ばれる接眼鏡で、望遠鏡に付属しているもののほか、高い倍率や見かけの視界を広く得るために用います。太陽を観察するときには、アイピースに付ける専用の「サングラス」が必要です。(サングラスをつけずに太陽を見ることは絶対にやめましょう。目に害を与え、失明する場合もあります。)そのほか、屈折望遠鏡で天頂付近の星を見る場合に使う、天頂プリズムなどがあります。
その他の機器
天体の写真を撮りたいときには、シャッタースピードを自由に設定できる一眼レフカメラを、望遠鏡に取り付けることになります。望遠鏡の接眼部に直接付けたり、鏡筒に固定したりしますが、天体を長い時間にわたって追う場合は、架台は赤道儀に限られ、モータードライブで自動追尾したりします。
最近では、家庭用ビデオカメラで天体を撮影することもおこなわれています。カメラでもビデオでも、記録や作品として残したい映像は人によって違うため、市販の機器が使われる一方で、個人個人がそれぞれの工夫をこらして、手作りの装置を使ったりしています。望遠鏡そのものを自作する人もいます。
天体観測・観察を始めるとき(3)
星を見続けること
個人やグループで星を観測・観察する場合、とりあえずの目的は何でもかまいませんが、観測の記録はきちんとつけるようにしましょう。友達何人かでグループを作って始めるのもよいかもしれません。最初はガイドブックなどにしたがって、月の満ち欠けの変化などから始め、慣れてきたらテーマや目標を定めて観測・観察をおこなうといいでしょう。
天体観測のポイントは継続することです。四季の星座を1つ1つ確認していったり、惑星の動きを確かめたりするうちに、見つけにくい星も見分けられるようになり、望遠鏡の扱いも上手になっていきます。いつも変わらないはずの星空も、観測のテクニックが上がるにつれて、さらに新しい魅力を見せてくれるでしょう。
シーイング
星の見えぐあいのよしあしを表すときに「シーイング」という言葉を使います。空の透明度や大気の状態が悪いと、望遠鏡を見たときに星の像が安定せず、そんなとき「シーイングがよくない」などと言います。意外にも、日本では冬よりも夏のほうがシーイングがいい日が多いとされています。
コメットハンター・小惑星ハンター
天体観測の大きな魅力のひとつに、新しい小惑星や彗星の発見があります。小惑星というのは、それまで暗すぎて見えなかった小さな惑星が、活動の変化などで明るさをまし、初めて地球から観測できるようになった星のことです。発見そのものも喜びですが、なんと言っても、第1発見者にはその星に自由に命名できる権利が与えられるため(自分の名前を付けてもいい)、何年もかけて夜空を追っている人がおおぜいいます。
新しい彗星や小惑星を自分で見つけて、自分の名前を付けるなんて、まるで夢みたいですが、実際には日本だけでも何10人もいます。最近では1995年の「百武彗星」が有名です。
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