基礎研究・開発
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磁気浮上による車両浮上のアイデアは古くからあり、1914年に、イギリスのエミール・バチェレット (Emile Batchelet) が世界初の電磁誘導反発式の磁気浮上リニアモータのモデル実験を行っている。彼は1911年にアメリカ合衆国特許第1,020,942号、アメリカ合衆国特許第1,020,943号を出願した。また、ドイツではトランスラピッドの源流ともなる電磁吸引式浮上がヘルマン・ケンペル (Hermann Kemper) により1922年に開発がはじまり、1934年から1941年にケンペルは磁気浮上鉄道の基本特許をドイツで取得した初期の磁気浮上式鉄道はG. R. Greenflyによってアメリカ合衆国特許第3,158,765号, 輸送のための磁力システム(1959年8月25日)に記述されていた。ロバート・ゴダードもロケット研究の傍ら、磁気浮上式鉄道の研究も行っていたことが判明している。 最初に使用された"磁気浮上式鉄道"のアメリカ特許はCanadian Patents and Development Limitedによる"磁気浮上案内装置"である。1940年代末にインペリアル・カレッジ・ロンドン教授のエリック・レイスウェイト(Eric Laithwaite)が、初めて実物大の稼働するリニアモーターを開発した。レイスウェイトは1964年にインペリアル・カレッジの重電技術の教授になり、成功したリニアモータの開発を継続した。リニアモータは軌道と車両の間に物理的な接触を必要としなかったので、1960年代から1970年代に開発された多くの先進的な交通機関で採用された。レイスウェイト自身はそのような先進的な交通機関計画のひとつであったトラックト・ホバークラフトの計画に参加したが、この計画の予算は1973年に打ち切られた。 リニアモータは磁気浮上システムとも相性が良く、1970年代にLaithwaiteは磁気浮上システムを1台の磁石で構築する事を目的とした単体のリニアモータで、浮上と同様に前進方向の推進力を生み出す新しい磁石の配置を見出した。ダービーの英国鉄道研究部門(英語版)は複数のいくつかの土木会社のチームと共に実用化に向けて"traverse-flux"システムを開発した。 磁気浮上鉄道の研究が本格化したのは1960年代に入ってからで、各国で研究が始まった。特に旧西ドイツは国家的支援を受けて、メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム (MBB) 社が1966年から本格的に研究を始め、1971年、Prinzipfahrzeug(車上一次リニア誘導モータ)が90km/hの記録をつくる。これは世界で初めての有人の磁気浮上鉄道である。また、1975年にKomet (Komponentenmeßtrager) が14mmの電磁吸引浮上で水蒸気ロケット推進ながら401.3km/hの記録をマーク。また、日本のHSSTの一部の技術の導入元でもあったクラウス=マッファイ社の製造したトランスラピッド・プロジェクトのTR-02号機が1971年に164km/hをマーク。またシーメンス社が中心となり、超電導による電磁誘導式浮上のEET-01が1974年に280mの円形軌道で230km/hの走行実験を行った。ドイツでは磁気浮上式高速鉄道を実現するために、1970年代初頭にトランスラピッドに一本化する際に軌道を簡略化できる車上一次式リニア誘導モータを選択せず、より高速化に適するが費用のかかる地上一次式リニア同期モータを選択した。そのため、当時、先端の開発が進められていた車上一次式吸引式磁気浮上(クラウス=マッファイ・トランスアーバン)の技術は不要になり、日本や韓国に技術供与された。開発元のドイツでは地上一次式リニア同期モータを採用した事が建設費が高騰する一因となり低迷したが、車上一次式リニアモータの技術を供与された国々は、供与された技術を基に、それぞれの国で発展を遂げ実用化に至った。 日本では、1963年から鉄道総合技術研究所を中心に研究が始まり、1972年に国鉄が日本の鉄道100周年を記念して超電導磁気浮上式リニアモーターカーであるML100(車上一次リニア誘導モーターを使用)による試験走行を公開。これとは別に常電導磁石とリニア直流モーターを組み合わせた、都市近郊交通型の磁気浮上式鉄道の研究も行われた。また日本航空がクラウス=マッファイ社の技術を導入してHSSTの開発プロジェクトを立ち上げ、1975年から開発を開始した。また当時の運輸省は独自に通勤用の磁気浮上式鉄道イーエムエルプロジェクト(EMLプロジェクト)を立ち上げ、1976年に実験を行っている。その他、熊本工業大学(現崇城大学)でも、吸引式磁気浮上式鉄道の開発が進められている。 アメリカでは、1970年代にRohr社で吸引式磁気浮上であるROMAGの研究が行われていたが、その後低調となり、1978年に事業はボーイング・バートルに売却され、1980年代中頃までは行われていたようである。その後、1990年代からローレンスリバモア国立研究所でハルバッハ配列で並べた強力な永久磁石(ネオジム・鉄・ボロン系合金)を使用したインダクトラックの研究、開発が行われ、現在ではゼネラルアトミック社が研究を引き継いで実用化に向けた研究、開発が行われている。 安定化永久磁石 Stabilized Permanent Magnet (SPM)による磁気浮上式鉄道アメリカ合衆国特許第6,684,794号が、アプライドレヴィテーション(Applied Levitation)社で開発中である。
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