制服用略綬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 01:02 UTC 版)
制服用略綬は、「勲章記章又ハ褒章ヲ有スル者制服著用ノ節略綬佩用ニ関スル件」(大正七年九月十七日内閣告示第四号)によって「勲章記章又ハ褒章ヲ有スル者ハ大礼服ヲ除クノ他制服又ハ国民服礼装著用ノ節各自左ノ制式ノ略綬ヲ製シ之ヲ左肋二佩用スルコトヲ得略綬二種以上ニ及フトキハ本章佩用ノ順序ニ従ヒ連結佩用スルモノトス」(昭和15年内閣告示第14号改正条文)と規定された。 この告示により、制服に個人で作成した長方形略綬を着用できるようになった。また、政令によって略綬が制定されている勲章及び褒章だけでなく、従軍記章及び記念章等の記章、他国の勲章・記章、或は日本赤十字社の有功章等についても長方形の略綬を作成し、着用できる。但し、金鵄勲章等戦後廃止されたものは、現在では公式には着用できない。 制式は 綬色: 本綬に同じ。 綬幅: 本綬に同じ。但し、無綬又は大綬の勲章の場合は功三級勲三等の綬幅に同じ。 綬長: 曲尺三分 とされていたが、昭和22年総理庁告示第2号改正により、「功三級」の部分が削除された。 複数個を着用する際の序列は「勲章等着用規程」(昭和39年4月28日総理府告示第16号)第11条の順序に従うとされており、以下の通りである。 自国の勲章(勲章が複数の場合は後から受章したものが上位) 他国の勲章 褒章(複数の場合は受章順) 記章(複数の場合は受章順) 外国の記章(褒章に相当するものを含む) 赤十字社有功章 制服用略綬(勲章) 菊花章 旭日桐花大綬章 金鵄勲章(廃止) 旭日章 宝冠章 瑞宝章(制度改正前) 瑞宝章(新制度) 制服用略綬(褒章) 紅綬褒章 緑綬褒章 黄綬褒章 紫綬褒章 藍綬褒章 紺綬褒章 制服用略綬(従軍記章・記念章) 明治七年従軍記章 大日本帝国憲法発布記念章 大婚二十五年祝典之章 明治二十七八年従軍記章 明治三十三年従軍記章 明治三十七八年従軍記章 皇太子渡韓記念章 韓国併合記念章 大礼記念章(大正) 大正三年乃至九年戦役従軍記章 戦捷記章 第一回国勢調査記念章 大礼記念章(昭和) 帝都復興記念章 朝鮮昭和五年国勢調査記念章 昭和六年乃至九年事変従軍記章 支那事変従軍記章(廃止) 紀元二千六百年祝典記念章 支那事変記念章(廃止) 大東亜戦争従軍記章(発行前に廃止) ^ a b 大日本帝国憲法発布記念章の略綬は旭日桐花章のものと同じ。 ^ 女性専用の勲章だが、戦前の場合従軍看護婦による着用が有り得る。逆に、新制度下では一般への叙勲がないので、今後着用されることはないと思われる。 ^ a b パターンは同じだが、寸法の単位が異なる。 ^ a b 綬は同じ。 保安隊や警察予備隊、及び発足当時の自衛隊には旧軍出身者が多数在籍しており、その中には戦前・戦中に受章した勲章・記章やその略綬を着用する者もいた。しかし、戦後の叙勲制度では現職自衛官が叙勲されることはなく、従軍記章や記念章も発行されることがなくなった。そのため、旧軍の経験のない者や旧軍時代に受章歴のない者はその軍歴を誇る勲章やその略綬を胸に飾ることができなかった。これは他国の軍人と交流する際に体裁が悪いと考えられた。そのため、昭和20〜30年代には、海外へ留学や出張する者が旧軍時代の勲章・記章及びその略綬をジャンク屋や古道具屋で購入して着用するという行為が横行しており、中には廃止されて佩用できない筈の金鵄勲章を購入して着用した者もいたと江村儀朗(元九州補給処長・陸将補)は証言している。また、吉池重朝一等陸佐(後に体育学校長・陸将補)はアメリカ出張に際してアメヤ横丁で略綬を購入したが、その中にアメリカ軍のものが混じっており、出発前に古参陸曹に注意されて事なきを得たという逸話もある。 制服用略綬については、「制服用の略綬に関する規程」(平成15年内閣府告示第10号)が新たに制定され、「勲章記章又ハ褒章ヲ有スル者制服著用ノ節略綬佩用ニ関スル件」は廃止された(同附則第2条)。新しい規程では、無綬又は大綬の勲章の綬幅は36ミリとされ、長さは単位が変更されて9ミリとなった。現在でも、現職自衛官への叙勲や職務に関する褒賞の授与はないが、排除する規定もないので、例えば、多額の寄付による紺綬褒章や勤務外での行動による紅綬褒章等の授与は有り得る。これら勲章等(勲章、褒賞及び記章(「勲章等着用規程」(昭和39年4月28日総理府告示第16号)第1条))及び同略綬の着用については、「勲章等着用規程」及び「制服用の略綬に関する規程」が直接適用される他、「勲章等及び略綬の着用について(通知)」(昭和57年10月29日海幕総第4460号)等の実施要領が定められている。また、PKOに参加して国連メダルを授与される自衛官は増加しており、外国から勲章や記章を授与される自衛官も少なくない。そのため、自衛官服装規則(防衛庁訓令第4号)第4条が平成19年以降に改正され、外国の勲章等を授与された自衛官はこれらを着用できる旨が明記された。そして、これを受けた実施要領も通達されている(「外国勲章等の着用について(通達)」(陸幕人計第592号)等)。これらの通知や通達においては、略綬の着用要領については「防衛記念章の制式等に関する訓令」(防衛庁訓令第43号)第6条を準用するとされている。
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