初期の8086・GDCのみ搭載モデル、FDD内蔵への歩み
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「PC-9801シリーズ」の記事における「初期の8086・GDCのみ搭載モデル、FDD内蔵への歩み」の解説
PC-9801 1982年10月 1982年10月13日に発表された初代機「PC-9801」(シリーズ名と区別するため「初代」「無印」とも呼ばれる)は、16ビットCPU Intel 8086互換のNEC μPD8086を5MHzで駆動し、128KBのRAM(最大640KBまで拡張可能)を搭載する。グラフィック画面解像度は640ドット×400ドット8色。当時の水準としては高精細かつ高速なグラフィック処理のために、自社製の汎用グラフィックコントローラGDC(Graphic Display Controller μPD7220)を2個、テキスト用とグラフィック用にそれぞれ使用している。また、テキスト用GDCに付随してテキスト表示の滑らかなスクロールを実現するカスタムチップ(μPD52611)を搭載している。このモデルはPC-8800シリーズの周辺装置を流用することを考慮して設計されており、新規ユーザーは高価な8インチフロッピーディスクドライブ (FDD) か小容量の5インチ2D (320KB) FDDを別途購入する必要があった。また、基本構成では数字と英文字、半角カナしか表示できなかったため、日本語ワープロソフトなどを使用するには漢字ROMボードを増設する必要があった。カセットテープ録音再生装置を補助記憶装置とするためのカセット・インターフェースボードとして、PC-9801-03 CMTインターフェースボードがあった。 初代機以降、CPUを8MHzに高速化してグラフィック画面を2画面に増強したPC-9801E、PC-9801Eと同様の変更に加えて5インチ2DD(両面倍密度倍トラック)FDDを本体に内蔵し、さらにJIS第1水準漢字ROMを標準搭載したPC-9801Fが発売された。 PC-9801F 1983年10月 μPD8086-2 8MHz、グラフィック画面2画面、5インチ2DDドライブ内蔵、5インチ2D FDD I/F搭載、漢字ROM(JIS第1水準)搭載 …(JIS第2水準漢字表示にはオプションROMのPC-9801-12/Kが必要。拡張漢字表示にはオプションROMのPC-9801-18が必要) PC-9801E 1983年11月 μPD8086-2 8MHz、グラフィック画面2画面、5インチ2D FDD I/F搭載、漢字ROM非搭載…(漢字表示にはオプションのPC-9801-10ボードが必要。JIS第2水準漢字表示にはオプションROMのPC-9801-12/Kが必要。拡張漢字表示にはオプションROMのPC-9801-18が必要) これらの機種の開発は1983年2月頃に始まった。その時点ではPC-9801が発売してからまだ間もなく、PC-9801に対する市場の反応が定まっていなかったため、世間の注目を集めるような新しいマシンを出すか、PC-9801の延長で機能を強化するか、2つの案が上がっていた。結局、パーソナルコンピュータ販売推進本部長の浜田俊三は「今後はソフトウェア資産の蓄積が活かせないコンピュータは生き残れない」という考えに至り、ソフトウェアとの互換性を重視しつつ既存の機種を強化する方向になった。 両者とも初代PC-9801の2倍のVRAMを搭載してグラフィック画面を2画面とすることで、画面をちらつかせることなくグラフィックを描画するダブルバッファリングを可能にしている。一方で、多数の汎用ロジックICで構成されていたアドレスデコードやVRAM用の回路は12個のカスタムチップ (ASIC) に統合され、信頼性の向上や消費電力・製造コストの削減に貢献した。PC-9801Eは初代PC-9801と同じく外付け8インチFDDとの使用が想定された一方、PC-9801Fはそれまで周辺装置のラインナップになかった新しい5インチ2DD (640KB) FDDを内蔵した。PC-9801FにはFDDを1台内蔵したF1と2台内蔵したF2の2つのモデルが存在したが、F1よりF2の需要が圧倒的に上回った。製品計画を担当した小澤昇はPC-9801Fで2DD (640KB) のFDDを採用した理由について、「9801クラスのパソコンでは業務に使うオフコンクラスのアプリケーションが中心になる上、日本語処理の都合もあるため、320KBでは少ない。640KBでギリギリ。本来は1MBが望ましい。ただ、1MBの8インチFDDは高価で、5インチFDDは信頼性が低くて特殊なフロッピーディスクが必要になる。その意味では640KBがベストチョイスだと思います。320KBのデータもそのまま読み取れますし。」と述べた。また、キーボードが本体に比べて大きいことについて、「指の大きさや膝に乗せて使う人など操作性を考慮して、キーの配列やキー同士の間隔を決めている」と説明した。 PC-9801F/Eに続き、富士通のFM-11BS対抗のため、2HD(両面高密度)フロッピーディスクドライブ(以下FDD)とマウスインタフェースボードを搭載したPC-9801Mも登場した。PC-9801Mは2DDフロッピーディスクを読み取れないため、既存のPC-98ユーザーには不評であったが、後年に2HDフロッピーディスクで供給されるソフトが普及すると、中古市場において2DDフロッピーディスクしか読み取れないPC-9801VFよりもPC-9801Mの方が高値で取引される状況になった。 PC-9801M 1984年11月 μPD8086-2 8MHz、グラフィック画面2画面、5インチ2HDドライブ内蔵、5インチ2D FDD I/F、マウス I/F搭載、漢字ROM(JIS第1水準)搭載、RAMは256KB搭載…(JIS第2水準漢字表示にはオプションROMのPC-9801-12/Kが必要。拡張漢字表示にはオプションROMのPC-9801-18が必要) 1984年10月には、PC-9801F1にハードディスクドライブ(SASI HDD、容量10MB)を搭載し、RAMを256KBに増量したPC-9801F3が、1985年5月にはPC-9801M2のFDDを1台に減らしてハードディスクドライブ(SASI HDD、容量20MB)を搭載したPC-9801M3が発売されている。
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