初期における研究史
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横山又次郎による1904年(明治37年)の報告によると、豊浦地域の平たく圧縮されたアンモナイトは1887年に西中山付近の新しい道路法面(現在の豊浦層群西中山層)において木村教諭により見出されたのが山口県で最初のアンモナイトの発見であり、1895年に井上禧之助によって学術界で知られるようになったとある。 1896年(明治29年)の井上禧之助による報告において、ヨーロッパのHarpoceras bifronsやH. exaratumなどに比較される種やArietites、Lytocerasといった23種のアンモナイトが識別され、これらがライアス統(=下部ジュラ系)の上部に属することが明らかにされた。 1899年(明治32年)には、岡田英夫により石町のアンモナイトの産地が見出され、1904年に横山によりアンモナイトの新種として井上・岡田両氏にちなむ種名が与えられた。これらのアンモナイト含有層は当時、Rhaetic plant-bed(現在の三畳系美祢層群)を覆う硯石統に属するものとされ、井上により硯石統が下部のNon-Schalstein Part(非輝緑凝灰岩部)、すなわち現在の豊浦層群、とその上部のSchalstein-bearing Part(輝緑凝灰岩挟在部)、すなわち赤色頁岩(山口県の伝統工芸品の赤間硯の原石は輝緑凝灰岩とも呼ばれる)を挟在する現在の関門層群とに識別されたとされる。下部のclayslate(粘板岩)が風化した頁岩からの産出としてHarpocerasの2種を除く4属6種の新種のアンモナイトが記載され、これらが上部ライアス統と密接な関係があることが確かなものとなった。 後に、硯石層の存在しない下部の非輝緑凝灰岩部は、矢部長克によって豊浦統と称されることになる。 1904年に横山により記載されたアンモナイト(現在の学名を右に記す<西中山層の項目を参照>)は以下の通りである。 Hildoceras chrysanthemum Yokoyama(= Cleviceras chrysanthemum) Hildoceras densicostatum Yokoyama(= Cleviceras chrysanthemum) Hildoceras Inouyei Yokoyama(= Harpoceras inouyei) Grammoceras(?) Okadai Yokoyama(= Polyplectus okadai) Harpoceras sp.(= Cleviceras cf. exaratum) Harpoceras sp. Coeloceras subfibulatum Yokoyama(= Peronoceras subfibulatum) Dactylioceras helianthoides Yokoyama 1907年(明治40年)には、農商務省の鈴木敏により東長野(現在の東長野層)から六放サンゴの1種のCyclolites sp.(=Chomatoseris cyclitoides)が報告された。 1922年(大正11年)には、地質調査所の小倉勉により歌野川上流(現在の歌野層)からの産出としてInoceramus (?)が報告され、1926年に小林貞一によってイノセラムス科二枚貝類の新種のInoceramus utanoensis Kobayashi(=Retroceramus utanoensis)および報告者の名にちなむInoceramus Ogurai Kobayashi(=Retroceramus ogurai)が記載された。また、下関市の旧制長府中学校(現在の豊浦高等学校)のT. Nakano教諭から豊浦地域の植物化石(Onychiopsis elongata、Cladophlebis denticulataなど)が研究室に送られ、横山又次郎によって報告された手取植物群との大きな共通性が見出されたことで、ジュラ紀のトリゴニア層、上部ライアス統のアンモナイト層、イノセラムスの層準、および植物化石層の間の関係を明らかにするために豊浦地域が詳細に調査されることとなった。この調査により矢部による豊浦統は、下位より東長野層、西中山層、歌野層、七見層(原典では豊浦統はToyora Formation、各層はGroupとして記される)に区分され、現在の豊浦層群の原形が構築された。南部地域では、小林により西中山層の下部および中部(現在の豊浦層群阿内層の分布域)からの産出として以下の植物化石(右に木村・大花による改訂で参照される学名などを記す)が報告されている。 シダ Onychiopsis elongata Cladophlebis denticulata(Cladophlebis sp. B) Cladophlebis argatula(?:鳥山による報告もある) Ruffordia goepperti(Sphenopteris sp. C) イチョウ類 Baiera gracilis(?:鳥山による報告もある) ベネチテス類 Zamiophyllum buchianum(Zamites sp. B) Williamsonia cf. pecten(Ptilophyllum cf. cutchense) Otozamites spp.(?) ソテツ類 Nilssonia nipponensis(Nilssonia sp.) Nilssonia orientalis(Nilssonia cf. densinervis) Nilssonia mediana(?:鳥山による報告もある) Nilssonia compta(?:高橋による報告もある) 球果類 Podozamites lanceolatus(? :高橋による報告もある) これ以降の研究史は各層の項目(東長野層、西中山層、歌野層、阿内層)を参照。
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