ヘルパンギーナ-とは? わかりやすく解説

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ヘルパンギーナ

【英】:Herpangina

ヘルパンギーナは、発熱口腔粘膜あらわれ水疱性発疹特徴とし、夏期流行する小児急性ウイルス性咽頭炎であり、いわゆる夏かぜ代表的疾患である。その大多数エンテロウイルス属流行性のものは特にA群コクサッキーウイルス感染よるものである。

疫 学
疫学パターンエンテロウイルス属特徴沿う。すなわち熱帯では通年性みられるが、温
帯では夏と秋に流行みられる我が国では毎年5 月頃より増加し始め、6~7月にかけてピーク形成し8月減少9~10月にかけてほとんど見られなくなる。国内での流行例年西から東へ推移する。その流行規模はほぼ毎年同様の傾向があるが、19992001年3年間はそのピ ーク時において、定点当たり報告数が例年比べて高い状況であった患者年齢4歳以下 がほとんどであり、1歳がもっと多く、ついで2、3、4、0歳代の順となる。

病原体
エンテロウイルスとは、ピコルナウイルス科属す多数RNA ウイルス総称であり、ポリオウイルスA群コクサッキーウイルスCA)、B群コクサッキーウイルスCB)、エコーウイルス、エンテロウイルス6871 型)など多くを含む。
ヘルパンギーナに関してCA主な病因であり、2、34、5、6、10型などの血清型分離されるなかでもCA4がもっと多く、CA10、CA6 などが続く。またCB 、エコーウイルスなどが関係することもある。
エンテロウイルス属宿主ヒトだけであり、感染経路接触感染を含む糞口感染飛沫感染 であり、急性期にもっともウイルス排泄され感染力が強いが、エンテロウイルス感染としての性格上、回復後にも2 ~4週間長期にわたり便からウイルス検出される

臨床症状
2~4 日潜伏期経過し、突然の発熱続いて咽頭粘膜発赤顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位直径1~2mm 、場合より大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれ小水疱出現する小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍形成し疼痛を伴う。発熱については2 ~4 日間程度解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失する発熱時に熱性けいれ んを伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌拒食哺乳障害、それによる脱水症などを呈する ことがあるが、ほとんどは予後良好である。
エンテロウイルス感染多彩な病状を示す疾患であり、ヘルパンギーナの場合にもまれには無 菌性髄膜炎急性心筋炎などを合併することがある前者場合には発熱以外に頭痛嘔吐などに注意すべきであるが、項部硬直見られないことも多い。後者に関しては、心不全徴候出現に十分注意することが必要である。鑑別診断として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎口腔病変歯齦・舌に顕著)、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔前方水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎発熱伴わず口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられる

病原診断
確定診断には、患者口腔拭い液、特に水疱内容含んだ材料糞便髄膜炎合併した例では髄液などを検査材料としてウイルス分離を行うか、あるいはウイルス抗原検出する遺伝子診断PCR 法制限酵素切断法など)も可能である。確定診断にはウイルス分離することが原則である。
血清学診断は、急性期回復期ペア血清用い中和反応NT)、補体結合反応CF)な どで4倍以上の抗体有意な上昇確認することで行われるしかしながらエンテロウイルスでのCF交差反応が多いので、一般に行われないまた、実際に臨床症状による診断十分なことがほとんどである。

治療・予防
通常対症療法のみであり、発熱頭痛などに対してアセトアミノフェンなどを用いることもある。時には脱水に対する治療必要なこともある。無菌性髄膜炎心筋炎合併例では入院治療が必要であるが、後者場合には特に循環器専門医による治療望まれる
特異的な予防法はないが、感染者との密接な接触避けること、流行時にうがいや手指消毒励行することなどである。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
ヘルパンギーナは5類感染症定点把握疾患定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の2つ基準満たすもの
 1. 突然の高熱での発症
 2. 口蓋垂付近水疱しんや潰瘍発赤
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清診断によって当該疾患診断されたもの

学校保健法における取り扱い
ヘルパンギーナは学校において予防すべき伝染病中には明確に規定されてはなく、一律に学校長判断によって出席停止扱いをするもの」とはならない。したがって欠席者多くなり、授業などに支障をきたしそうな場合流行大きさ、あるいは合併症発生などから保護者の間で不安が多い場合など、「学校長学校医相談をして第3学校伝染病としての扱いをすることがあり得る病気」と解釈される
本症では、主症状から回復した後も、ウイルス長期わたって便から排泄されることがあるので、急性期のみの登校登園停止による学校幼稚園・保育園などでの厳密な流行阻止効果期待できない。本症の大部分軽症疾患であり、登校登園については手足口病と同様、流行阻止目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきである考えられる


文 献
1. Cherry JD.Herpangina. In Textbook of pediatric infectious diseases, 4th ed. WB Saunders,1998. pp156‐158.
2. Anonymous. ヘルパンギーナ 19951996病原微生物検出情報月報第17巻9号、1996.
3. Anonymous. エンテロウイルスサーベイランス19821999病原微生物検出情報月報第21巻10号、2000.

国立感染症研究所感染症情報センター 谷口清州





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